それぞれの力
今回、短めの話です。
「俺と姉貴。この2人と契約する奴を探せばいいんだよ」
フーラのその言葉に、俺達は誰も反応できなかった。しばらく沈黙が続き父さんがようやく言葉を発する。
「あの、フーラさん。お2人と契約すると人物を探せばいいと、おっしゃいましたがそんな簡単に見つかるものなのですか?」
父さんの言葉を聞き今度はフーラがキョトンとする。そして悩んだようなそぶりをした後、何かを思いついたようで、今度はキャロ達を見ながら話した。
「そうか言葉足らずだった、そこの双子の嬢ちゃん達なら、俺と姉貴と契約できる適性がる」
「私と、フーラこの2人と契約するには、どんなものにも負けない信頼関係必要なの。もし他の神と出会ってなければ、シオンとルリ。シオンとナツメでも私達と契約できたかも」
なるほど、フーラとライライの言ってる事は一理ある。今のキャロとシャロが神の力を手に入れれば間違いなく戦力としては大幅な強化になるだろう。
「キャロ、シャロお前たちはいいのか?無理して神と契約する事はないぞ」
俺がそう聞くと、2人はニッコリとほほ笑んだ。どうやらすでに決心はついているようだった。俺が心配しるまでもなく。
「それじゃ、準備は良いか?」
「緊張しないで、契約は一瞬で済むから」
フーラの前にキャロ、ライライの前にシャロ。お互いが正面で向き合い手を重ね合っている。
そして目に見える程の強力な光が、四人を包み込んだ。
しばらくして、光がなくなる。その中から出てきたキャロは風を、シャロは雷を纏っているように見えた。
風や雷は魔法でもあり魔力を使う事で、鎧のように纏う事はできるが、今のキャロとシャロは魔力ではなく神の力の能力としてそれを纏っていた。
「さてルリよ、次はお前の番だ」
「オーディンさん...私の番ってどうゆ事ですか?」
キャロとシャロの契約が終わり、今度はオーディンさんがルリに歩み寄る。ルリは自分に来ると思ってなかったのか少し驚いていた。
「ルリ、君は今グングニルの中にある神の力を借りている状態だが、それを自身の物にできれば神の力を自由に使えるようになる」
「それは、どうすれば私の力になるんですか?」
「それは簡単だ、グングニルを使ってひたすら戦えばいい」
確かにオーディンさんの言ってる、方法自体は簡単なものだった。だがグングニルを持ったルリは普通の冒険者とかと戦えば、勝負にすらならない。力を使うことなく決着がついてしまう。
誰が相手をするのか悩んでいると
「なら、ルリの相手は妾が務めよう」
今まで話を黙って聞いていた。メイシスが名乗りを上げた。
「妾なら、ルリといい勝負ができるはずだし、魔王と言う名を持つ者同士、お互い遠慮なく戦えるはず」
「そうですね、メイシスさんからは学べる事も多い気がしますし、私が全力でぶつかっても問題ない相手だ思うので、よろしくお願いします」
こうして、ゼウス達神を倒すための戦力は少しずつそして確実に増えていっている。俺もまだまだ伸ばせる力があるし、ナツメも破壊の力を使いこなせれば本格的に最強クラスの戦力になるのは間違いと思った。
「ねぇ、フィン」
「なんだい、ミリア」
「子供たちはいつの間にか成長して、大きな目標のために自分の道を歩き始めている。私達はちょっと前冒険者を引退して静かに暮らそうなんて話をしたけどさ。負けてられないわね」
「フフッ、そうだねこんな姿見せられたら、親としてもっと強くなって、子供たちのサポートをしてあげないと、今の主役は子供たちでその道の導になるのが親の役目だから」
「父さん、母さん。2人で何の話をしてるの?」
俺達を見ながら二人で話す父さんたちに声をかけた俺だったが、父さんたちは笑いながら「なんでもない」と誤魔化した。何を話してたか分からなかったが、不思議と悪い話ではなかったのだけは分かる。
父さんたちから少し離れたら、今度はレオとシキが俺の元にやって来た。
「主、私はいつまでも主の使い魔です。その事は忘れないでくださいね」
「マスター、私もレオちゃんと同じでマスターから生まれた所有物。だから私達の事もいつでも頼ってくださいね」
「2人とも...」
2人の言葉を聞いて俺はすごく暖かい気持ちになった。この世界に来てから自由に生きてきたつもりだったが、こんなにも信頼してくれて、期待している2人がいて嬉しくならないはずはない。
もしゼウスを倒し世界が救えてそのことが多くの人に評価されないかもしえない、でも周りで励ましてくれてる人がいる以上、俺達が負けてはいけないのだと改めて心に刻んだ。
こうしてこの日から、新たにフォール家に人が増え来るべき時まで各々が訓練に励むのであった。
シオン「俺が必ずゼウスを討つ」
ルリ「私も強くならなくちゃ、私自身のためシオンのため、みんなの為に」