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アレスとハナを見守り隊!

夕日は沈み、街灯と、集まる人たちが増え騒がしくなる王都サブメラ。

そんなサブメラの中央に建築された一際目立つ建物、名前はなく誰もが王城と呼んでいる。

その王城の一室、すでに寝る準備を済ませ寝巻に着替え終わった、サブメラの王子アレス・サブメラとその婚約者で元アレスの護衛ハナは、翌日の話し合いを行っていた。


「アレス様、明日は楽しみですね」


「そう...だな」


アレスとハナは明日サブメラ内を2人きりで見て回る。視察という名目のもとで行われる完全なデートだった。普段であれば必ずついてくる護衛も今回は、ついては来ない。そんな明日を楽しみにしているハナと、何か考え事をしているアレス。

そんなアレスを気にかけてか、ハナはアレスの背後に回り後ろから抱きしめた。


「大丈夫ですよ、何か起きても元護衛の私が居ます」


「ハナは心強いな、それじゃあ、明日の備えてもう寝るか」


アレスとハナはキングサイズの同じベットに入り、その夜を過ごした。




「今日も王都は平和だな」


「そうだね、ちょっと前に戦争があったなんて嘘みたい」



太陽の明るさが王都をそして世界を照らしている。雲一つ見えない晴天。パーティーを組んで歩いている冒険者や、王都内で商売をしている商売人たち、そして観光に訪れた人々。

異種族同盟と帝国の戦争や、五大学園祭が終わり、祭りごとは終わっても、サブメラの賑やかさは失われない。


もっとも、戦争については多くの一般人には知られていない。サウス国内に侵入した帝国兵はいたがシオン達に秘密裏に処理され、戦争の地も帝国領土だったことで、無駄な心配をかけたくないという国王の考えもあり。箝口令が敷かれたのだ。


そんな平和で騒がしい王都サブメラ内は、シオンとルリの2人はお出かけデートをしていた。



「もう少しすれば、ルリも成人を迎えるし。しっかりと結婚を考えたいな」


「あはは、お母さん許してくれるかな」


「魔王の娘を貰う為に、魔王と対決する熱い展開だな」


俺にはアイラさんから逃げてルリと駆け落ちするなど、そんな考えは一切なかった。むしろ過去一度負けているから、倒すつもりですらいる。

あの時は圧倒的な力の差があったが、今の俺は神の力すを持っている。全力を試すには不測のない相手であると思った。


将来の事や、これからの2人の事そんな話をルリとしながら、王都を当てもなく歩いていると、不審な二人を見つけた。物陰に隠れるようにして誰かを尾行していている。それに〈隠密行動〉(インビジブル)まで使ている。

ここまで怪しければ警備の人に突き出せばいいのだが、その二人には見覚えがある。というか学園の友人でアレスの護衛のハンスとアリンだった。


「よぉ、そんなこそこそして何してるんだ?」


「!?」


「きゃあ!」


俺達がこっそり背後から近づき、声をかけるとハンスは驚き素早く振り返り、アリンは腰を抜かして少し涙目になっている。隠れているつもりだったのに、声をかけられるとは思っていなかったのだろう。だが俺の顔を見た瞬間に、2人して「なんだシオンか」みたいな顔をされて、俺はちょっと複雑な気持ちになった。


「ハンス君、アリンちゃん。2人でこそこそ何しているの?」


「なんだ、ルリさんもいたのか。実はな」


「ちょっと、ハンス教えてもいいの?」


「この2人なら問題ないだろう」


そう言いながら、ハンスはとある2人を指さした。それはこの国の王子にして次期国王アレスと、その嫁ハナだった。腕を組みながら歩いていることから2人はデート中なのがわかる。そしてハンスとアリンはその護衛兼監視なのだろう。


「シオン君達もデート中?」


アリンが俺達に質問する。確かにデート中でこの後も王都を回る予定だったが。こんな面白そうな場面に出くわしたら話は別だ。俺の考えを察したのか、ルリはアリンの質問に答えず、俺に任せると耳打ちする。


「確かにデートの最中だったけど、俺達もついて行っていいか?」


「うーん、ハンスどうする?」


「いいんじゃないか。シオン君達が居れば何かあっても対応できるだろうし」


「じゃ、決まりだな」


こうして、俺、ルリ、ハンス、アリンの4人はアレスとハナを陰ながら護衛することになった。

護衛と言っても、特に問題が起こるわけではない。2人がお店に入れば、出てくるまで付近で待機して、2人が広場で休憩すれば、俺達も一般人に紛れて休憩し、アレス達を見ている。


そうして太陽が傾き始めた頃、アレス達は王城を目指し歩き始めた。護衛はこのまま何も起こらず4人は思っていた、だがそうは問屋がおろさなかった。


「シオン、あれ」


そう言いながらルリが指をさした。俺達の視線がルリの指さした方向を見る。そこにはアレスとハナの前方から、いかにも怪しさ満点と言った、黒のフード付きマントを被った集団4人がいた。周囲の人達は当然その4人を避けながら道の端を歩き、アレスも警戒しながら、ハナの前に立ち端に行こうとする。

だが次の瞬間、4人のうち1人が素早く動いた。マントの内側に隠していたであろう短剣を抜き、アレスに襲い掛かる。だけどあまりにも愚直に正面から行ったそいつは、アレスに避けられ反撃を食らいその場に蹲る。


普段から戦闘訓練をしているアレスやハナがあの程度の連中に後れを取ることはない。だからこそ、陰で見ている俺達は他に潜伏していない奴かいないか、周囲を探った。

そう、アレスやハナだけを狙ているなら俺達が行く必要はない、その考えが甘かった。


「動くな!」


その声で俺達は再びアレス達の方に視線を戻す。そこには先ほどアレスに攻撃した奴とは別の奴が、道にいた一般人の少女を捕まえ、人質にしている。

こうなれば、俺達もそしてアレスも簡単に動くことはできない。

アレスにとって、負ける可能性が全くない敵だが、アレスが残り3人を倒す前に人質を命が危ないかもしれない。

俺やルリが〈瞬間移動(クイックテレポート)〉で接近し、人質をとってる奴を一撃で倒す事はできるがそれほど強力な一撃を当てれば、人質になっている少女に危害が行くかもしれない。


どうするべきか、最善を考えている間に、少女にナイフを突き立てている奴はいきなり倒れた。

そしてその少女は、残り2人を殴りで気絶させる。その様子にただ呆然とすることしかできなかった。


「アレスよ、妾が人質で助かったな」


そう言いながら、少女の姿が変わる。そこにいたのは〔変身(メタモルフォーゼ)〕というスキルを使って、人間の少女の姿をしていたメイシスだった。

普通気配やオーラで気づけるものだが、そこは原初の魔王。隠蔽の上手さが普通とはかけ離れていた。


しばらくして、警備の人が集まり怪しい4人の身元を調べ始めた。アレスとハナは身元を明かし、調査に協力的だが、メイシスは気配を消し面倒ごとになる前にその場を去っていった。


ある程度の調査も終わり、その場が解散するのを待っている俺達4人だったが、俺だけが違和感に気が付いた。その違和感をルリ達に話す前にまた危険が迫る。

俺たちと同じように隠れて、タイミングを窺ってたであろう奴2人が一斉にハナを襲う。とっさにアレスが動き、ハナの肩を思いっきり後ろに引いて、位置を変える。だが体制の悪いアレスでは、撃退することはできない。その時すでにハンスも、アリンも隠れるのをやめアレスの元まで駆け寄っていた。だが間に合わない。


そこで俺は過去の話を思い出した。ハナから聞いた夢の話。思わず「予知夢ってすごいな」って言葉が出ていた。

俺は〈瞬間移動(クイックテレポート)〉でアレスと、怪しい奴等の間に入り、そいつ等を殴りで吹き飛ばす。状況が呑み込めてないハナと、なんとなく察したアレス。そんなハナに


「言っただろ、守るって」


そう言い残して俺はこの場から去った。




あの後、アレスから事の真相を聞いた。実はああなる事はすべて予想済みだったらしいと聞いた時は俺でも驚いたぐらいだった。どうやらアレス達を狙ったのは、アレスの地位とハナの存在が気に食わない貴族だったらしく。あの日に炙り出すのが作戦だったらしい。まぁアレスもメイシスがいたのは完全に予想外だったらしいが。


俺は改めて、流石は一国の王子だとアレスを見直すことにするのだった。

ハンス「見守りはしていたが、何もできていない」


アリン「私たちが護衛する意味って?」

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