小春の過去
久しぶりの投稿になってしまいましたが、これからはなるべく週一で投稿していきます。
「さて、妾の話も終わったし。コハルの話も聞かせて貰おうか」
ひとしきり涙を流し終えた俺達を見て、メイシスがコハルさんに話を振る。振られたコハルは驚き「なんであたしが」と言いたげな表情をしていた。
「まぁ、確かに気になるな。メイシスがいた時代からこの時代まで生きてきた転移者、コハルさん」
「そうっすね。不老不死のスキルでもあれば説明がつくんすけど」
俺と翔太がコハルさんに話題を振ればナツメやルリも興味津々の様子。コハルさんも諦めたような表情をしていた。
「わかったわ、でもそんな面白い話でもないわよ。それとさん付けと敬語はやめて。なんだか違和感を覚える」
「わかった、それじゃあコハル聞かせてくれ」
そこから、コハルの話が始まった。
相沢小春はどこにでもいる、女子高校生だった。
そんな小春が異世界に転移させられたのは、高校2年生の夏休みに入る前日。ホームルームが終わり担任が教室から出て行って。夏休みにクラスみんなで集まる予定を決めようとしてる時、突如クラスが謎の光に包まれた。
強烈な光に目を瞑り、瞼を開けたら見たことのない空間に小春とそのクラスの全員がいた。
クラス全員が様々な反応をしている中、何もないはずの空間に突如それは訪れた。
「私は世界を繋ぐ神、転移神。いきなり言われて理解するのは無理だと思いますが、あのままではあなた方は死んでしまいました。なので命の有効活用のため異世界に行ってもらいます」
転生神と名乗る存在は、圧倒的な存在感でクラスの誰一人から有無を言わせなかった。それだけではなく謎の魅力に支配されるように、その現状に誰も疑問は抱かなかった。
ステータスの説明や転移の時に貰える特別な力。あとは簡単な世界の話を聞き、小春を含む高校生たちはファンタジーの異世界に転移することになった。
転移した先は派手な飾り付けがそこら中にあるものすごく広い空間。王城の玉座の間だった。兵士達や、小春たちがいる場所よりも 高い場所に置かれているひと際目立つ椅子。そこに座っている王様とその付近に立っている重鎮達。転移していきなり「魔王を倒してほしいと」頼み込まれた。
小春は危険なことは拒否をしようとした。だがクラスのリーダー格の男の子やその付き添い達は誰一人疑問も抱かずそのお願いを聞くことにした。結果その場にいた小春も流され、しぶしぶ魔王討伐をすることになった。
2年間、魔族について、この世界について、魔物について、人間の敵について、他には戦い方や魔法関係などの座学と、魔族や魔物を殺すための肉体訓練を、ほぼ休みなくおこなった。
クラスのリーダー格の男の子は勇者となり、他にも殆どの生徒が強力な職業を手に入れていた。小春自身も2年間で賢者となり、クラスの中では小春が最強の魔法使いでもあった。
完璧な仕上がりで本来の目的である魔王討伐のために、転移者達は特別部隊として作戦に加えられた。作戦は順調に進み、魔族と人間の戦争史上、初めて人間が魔王城に到達した最初で最後の作戦だった。
だが結果は、原初の魔王に完敗し、挙句には魔族たちの慈悲によって人間国まで戻されてしまった。
ボロボロにされた人間国は転移者達に突如自由を与えた。もう人間の国では転移者達を縛ることが出来ず、もし強制し続ければ内から滅ぼされると思ったからだ。
勇者やその取り巻きは国に残り続けたが、小春はこれを期に、新たな異世界生活を求め旅に出た。
「ここまでが、私が人間の国に仕えていた話ね」
ここで一度コハルは話を止め、飲み物を口に含む。
それにしても、昔はこの国、だいぶ腐っていたという事実がわかる。もしかしたら、この事実を知っているコハルの事を消そうと思う人物がいてもおかしくないが、まぁメイシスとやりあえる人物なら簡単に撃退してしまうだろう。
「飲み物ありがとう。じゃあ私がこの時代まで生きてこれた秘密を話すわね」
コハルは一度、王都であるサブメラを離れ身分を隠し各地を転々と回った。魔物に困っている村を助けたり、冒険者となって盗賊などを捕まえたり。人助けになるようなことを行っていた。だがある時、コハルは気が付いた戦争をしているはずなのに、人間の国には魔族の攻撃による被害を受けた場所が一つもなかった事に。詳しく調査すれば魔族は人間の国を襲わない、魔族はあくまで防衛しかしていない、という事実にたどりつき、以降コハルが魔族と敵対することはなかった。
それからしばらくして、コハルはドラグーン国付近にある、渓谷に自分の住む用の場所を作った。誰にも見つからず、邪魔されない、自分だけの魔法研究施設を作り気たのだった。
日々を研究に費やし、時には素材集めに外に出る。
そんなある日、ドラグーン国付近にある森で素材を集めていたら、偶然エルフと出会い、困っているエルフの里を助けたら、神草をもらった。
神草といくつかの最上級素材を使い、一度きりの不老の薬をいくつか生み出した。
その内の一つを自分に使い。今の時代まで生き残った。
「こんな感じね、私の過去は」
「いや、最後さらっと話したけど、大事な話が簡潔にまとめ過ぎられてる!」
「でも本当にこれだけよ、あの時以降エルフとはかかわってないし、不死の薬もあの時しか作れてない。簡潔に聞こえるけど、それがすべてよ」
だいぶ適当な過去話だったが、別に隠し事をしてる様子もなかったので、この話はここで終わりにした。気が付けば日が傾き始め、コハルは家に泊まることになった。
そしてその日、俺、ナツメ、コハルは地球を夜が明けるまで、語り合うことになった。
シオン「俺の知り合いにどんどん地球を知ってる人が増えていくな」
コハル「わたし、人と話すのがかれこれ数10年ぶりだったのだけど」