開戦前夜3
今回は短めです。
「お前、まさか鬼神刀なのか!?」
「そうですよ、ますた~」
「うそでしょお兄ちゃん!」
名前を聞いてないから知らないが、邪神の使いとの戦いを終えようやく一段落付いたと思ったら、俺の剣が光だし人の姿をとった。何を言ってるか分からないと思うが、俺も何が起きたのか分かっていない。
「ますた~、思い出してください」
鬼神刀が、俺に何かを思い出させようとする。何を思い出させたいのか、なぜ喋れるのに自ら説明しないのか理解不能なことは多いがとりあえず、鬼神刀の情報を思い出してみることにした。
武器名 鬼神刀
レア度 神級武器
武器説明 名前に刀と入っているが刀ではない。持ち主を選び使い手に合わせてその能力や形が変化する。全てのステータスが物凄く上昇する。どんな者でも切ることができ、用途に合わせて殺傷能力を失うことも出来る。滅多に折れることはないが、仮に壊されても自動修復機能がある。武器に意志があり持ち主との会話が可能。変身も出来る。
「あ!意志を持ち変身可能って鑑定の時に出てた!」
「この場合変身とは少し違いますが、大体あってますよ、そこら辺は今から順を追って説明しますね」
それから鬼神刀の説明が始まった。
鬼神刀が人の体を手に入れられたのは、俺が3人邪神の使いを倒した事によって、その者から流出した神気、所謂神の力の源を剣が吸収した結果。鬼神刀がスキル〔肉体構築〕を取得したかららしい。
〔肉体構築〕というスキルは、ゼロから形が作られるのではなく、あくまで形の元があり、それを少し変えながら、オリジナルを作り出すスキル。言われてみれば何処となくルリと雰囲気が似ている。
鬼神刀いわく
「ますた~の記憶の中で、一番好いている者の雰囲気を元にして、好みの体を作り出しました」
その結果がルリの様な奇麗な銀髪、ドリアーナさんの様なダイナマイトボディなのだろう。これで俺のロリコン疑惑は晴れるが、同時にナツメからは白い目で見られてしまった。
話は続き〔肉体構築〕はあくまで別の姿を手に入れるだけであり鬼神刀自体が人間の種族になるわけではない。人の姿の時は鑑定で仮ステータスは出るらしいが、あくまでも剣なのだと言っている。
レオのように、元々が魔物で、俺と契約することにより獣人になった例外はあるが、今回の鬼神刀はそれが当てはまらない。というかレオが異常なだけらしい。
「ますた~、お話ししたいことはたくさんありますが。そろそろドラグーン王国に向かった方がいいのです」
「それもそうか、謎と検証したい事はまだ残ってるけど」
「お兄ちゃん。確かにいい時間だね。もうお父さんもお母さんもレオちゃんも着いてる頃だろうし、話はあっちで」
「あ、ますた~。最後に一つ私に名前をください」
行く寸前の所で、俺に命名を求めてくる鬼神刀。確かに人の姿の時に鬼神刀って呼ぶのもおかしいしな。
顎に手を当て少しだけ考える。俺は決してセンスが言い訳ではないから、なるべくシンプルにしようと思う。
「きしんとう、ここから外れすぎず、それに女性の名前。...シキとかどう?」
「お兄ちゃんにしては、普通の名前だね。私的にはもっと痛々しい名前にすると思ったのに」
「シキ...なんだかいい響きですね。ありがとうございます。ますた~」
俺のセンスに文句を言わず、むしろ喜んでくれるシキを、新たな仲間に加えて開戦前日の戦いは終了した。この後他の国の王たちにシキの事を説明するのに時間がかかったがこれはまた別のお話。
「この国にいた7人の邪神の使いのうちすでに4人が倒されてしまったか」
「そのようですな、他の者も決して弱くはなかったのですが、自分の力に自惚れたのでしょう」
真夜中、光の届かない暗い部屋。2人の人間が話し合いを行っていた。1人は片手にワイングラスを持ち。もう一人は自らの武器の手入れをしている。
「王よ、例の者を至急蘇らせるべきだと提案します」
「確かに、敵の数は明らかにこの帝国の兵士を上回った。それに対抗するにはあれを蘇らせるしかないだろう」
「生贄は、この国で戦わない者、そして犯罪者達を使いましょう。そうすれば復活する」
そこまで言うと1人はクックック、不気味な笑いをし始めた。
そしてこの男が、ワイングラス片手にゆっくり立ち上がる。
「すべては、俺の為、そしてこの帝国の為。必ず世界を掌握して見せる」
「王よ、どこまでも付いていきます。次の日が昇れば戦いは始まる。すべての種族に見せつけてやりましょう」
この者たちはまだ知らない。自分たちが最大の禁忌に触れてしまう事を。戦争などもはやどうでもよくなってしまう事を...
シオン「シキその服どこから持ってきたんだ?」
シキ「私の服がなかったので、自分で作りました」
ナツメ「シキさんって器用ですね」
シキ「まぁ神級武器ですから、ナツメ様」