開戦前夜2
開戦前夜は3まで続きます。
次回は短い予定です。
王都を出ればいくつかの森が存在する。そして現在その森の一つに帝国兵が100人ほど潜伏していると。レオから情報があった。
「いいかナツメ。お前は今日重症を負ったばかり、いくら傷が完治してるとは言え無茶はするなよ」
「わかってる。心配してくれてありがとうねお兄ちゃん。」
本来、俺一人で部隊を殲滅するつもりだったが、ナツメがどうしてもという事で連れていくことにした。何かあってもナツメには〈消滅〉がある。逃げることに関しては心配の必要もないだろう。
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森に入ればすぐの所に偵察兵と思われる者たちがいた。俺とナツメはお互い魔法で気配を消しているのでまだ気づかれていない。
(ナツメ、俺が合図をだしたらあの見張り2人をやるぞ、なるべく音は立てるなよ)
(わかった。私は右にいるあの気怠そうなのをやるね)
俺とナツメは息を殺しタイミングを待った。数秒後、見張り2人が顔を下に向けた瞬間俺がゴーの合図を出し一気に接近する。俺は正面から口を押え心臓を一突き、ナツメは背後に回り首を切り落とした。
この森に潜伏している部隊は数を利用し森全体に二人から三人組であちこちに配置されている。一度見つかればすぐに情報が共有される可能性もある。だが逆に言えば数は多いものの誰にもばれずに全員を殺すこともできる。
その後も順調に俺とナツメは、闇に紛れつつ帝国兵を暗殺することに成功した。そして残るは森の奥にテントを張り全体の指揮を執っている、隊長クラス1人になった。
「ナツメ、最後は俺がやる。仮にしくじったら援護を頼んだ」
「了解」
足音を立てずテントに近づき、一気に中に入ろうとした、その時だった。嫌な予感がした、直感がこのテントを開けるより早くこの場から離れた方がいいと訴えた。俺がすぐ後ろに飛ぶと先ほどまで俺の頭があった場所を、何か早いものが通り抜けた。地面に落ちたそれを見ると、日本に居たころ、アニメやゲームで何度か見たことのある銃弾の様な物が落ちていた。
「へぇ~流石は半神。音も気配もない銃弾を避けちゃうんだ」
「お前がこの部隊の隊長か?」
木の陰から現れたそいつは、この世界では存在しないと思っていたハンドガンタイプの銃を持っており、片手で俺に銃口を合わせている。
「お前、今日ルリ達を誘拐した邪神の使いだろ」
「そうだよ、案外楽に魔王の娘も捕まえられたよ。それに帝国に戻って拷問したら良い声で鳴くんだ。だからついつい犯してしまったよ。ごめんね半神の彼氏君」
何が面白いのか、目の前の男は盛大に高笑いをし始める。この男は俺がルリの状態を知らないと思っている。だから精神攻撃をして俺を絶望させ殺そうとしている。つまり最低のクズ野郎で間違いなかった。
だが一つ、俺も面白いことを考えた。この茶番に付き合ってやろうと思った。
「クソ、そんな事が、俺の大切なルリがお前みたいなやつに穢されるなんて」
膝から崩れ落ち、顔を押えて必死になく演技をしてみせる。すると俺を掌の上で躍らせていると勘違いした男はさらに高笑いを続けた。
そのまま俺との距離を詰め、目の前で止まり俺の頭に銃口を付けた。
「やっぱり僕が主人公だ!ティファ様見てますか。この男を生贄にして貴女を今すぐにでも目覚めさせてあげます!」
「うるさいですよ〈破壊〉」
「へ?」
男が引き金を引こうとした時、ナツメが後ろから現れる。間髪入れずナツメが魔法を使い禍々しい何かが男を覆った。
「何が起きたかと思えば、僕が捕らえ損ねた女の子じゃないか。その魔法は僕には通用しないよ。あれ視点が、なんで僕は上を見上げているんだ?」
何かに覆われた男は確かに生きていた。声色に変化もなく苦しんでいる様子などもなかった。だが、この男は自分の違和感に気が付いていた。
「ぼ、僕の腕と足がない、何が起きているんだ!?痛みは感じないのに!」
「〈破壊〉であなたの中から概念事消したつもりだっけど。やっぱり魔法の完成度は低いな」
目の前の男は仰向けになっており、両腕、両足のない達磨の様な姿に変わっていた。
俺はこいつの事を許すつもりはなかった。だがそれ以上にナツメの方が怒っていた。俺の手で仕留めるつもりだったが、この場はもうナツメに任せるとこにした。
「嫌だ!死にたくない。助けて」
「自分が危なくなったら命乞いって、無様だね。〈破壊〉」
最後までナツメに縋ろうとした男は、ナツメの魔法で完全に消滅した。この場にはあの男が所持していた銃だけが残っている。研究材料としてこの銃は俺が拾わせてもらった。
(神の力吸収により、肉体構築が可能です。実行しますか?)
「な、なんだ。急に声が」
「お兄ちゃんどうしたの?」
機械音の様な物が頭の中に響き渡る。ナツメには聞こえていないようで、俺を不思議そうに見ている。よくわからないが、とりあえず実行してみることにした。
すると、俺の持っている鬼神刀が光だした。
光はどんどん強くなり、とうとう俺とナツメは目が開けられないほどの強い光になった。
「初めまして、ますたぁ~」
「え?誰だ」
「お兄ちゃん、この人誰?」
光が無くなり、その場所には、新たに一人銀髪でのほほんとしたお姉さんのような人が、全裸で立っているのだった。
シオン「だれ、このナイスバディお姉さん!?」
ナツメ(あれ、この雰囲気誰かに似ている)