動き出した闇
1週間投稿できなくてすいません。
しばらく毎週投稿ができるかわからないので長い目で見てください。
「皆、今日はありがとうね」
ナツメは一緒に付いてきた、ルリ、キャロ、シャロにお礼を言いながら目的地を目指す。
「大丈夫よ、それにシオンの実の妹だもの。お姉ちゃんになるのだから手伝うのは当たり前じゃない」
「はぁ~でたわ、ルーちゃんの姉マウント。まだルーちゃんは結婚すらしてないのに」
「そうだよね~。ルリちゃんが気を抜いたら。私かキャロちゃんが兄さんを貰うんだから~」
ルリ達は、誰もお願いされた事など気に留めず、ただ楽しい気持ちでナツメについていくだけだった。
この日は学園が再開した初日で、授業がなく午前でほぼすべての生徒が自宅に帰る日。ルリ達も例にもれず、一度は帰宅し、前々からの約束だった。ナツメの手伝いをする事が決まっていた。
夏休みの期間、ナツメはシオンに冒険者活動の手伝いをお願いしていて、実際に手伝いをしに行った。その事がキャロに伝わり、「私もやりたいわ」との事で、それならとルリとキャロも参加する事になった。
今回の依頼は比較的簡単な依頼で王都サブメラ近くの森に住む、大量発生したとの報告があった【オーク】の討伐だった。
比較的簡単とは言ったものの、これはあくまでナツメが受けるからであって。冒険者になりたての者や、胡坐をかいた中級者は受けることすら許可の出ない依頼だった。
【オーク】とは、豚のような見た目をした二足歩行の魔物、その大きさは、小さい【オーク】でも150センチほどあるといわれている。判断能力は低く動きは遅いため脅威と思わない者もいるらしいが、実際は異常なまでの耐久力と、力が脅威とされている。
並の攻撃では【オーク】を倒すことはできず、油断して掴まれてしまえば脱出するのが困難と言われている。
さらに【オーク】は集団で行動してる場合、変異腫や進化種といった通常の【オーク】とは異なる個体がいる場合がある。変異種は【オーク】であるが俊敏さを兼ね備えている固体や、異常なほどに大きい個体で、進化種は、魔法を使える【オークウィザード】、知性と悪意を持ち純粋な強化がされているのが【ハイオーク】、【オーク】を統率し、いるだけで辺りのオークを強化する【キングオーク】など様々な種類が存在する。
これ程強力な、【オーク】の討伐がなぜナツメなら簡単な依頼になるのか。それはいたってシンプルな答え。ナツメの実力が【オーク】を遥かに凌駕しているからだ。
この事実を知っているのは冒険者ギルドの中でも数は少ない。だがギルド内では権力者であるギルドマスターそして、ギルドマスターと立場がほぼ同等なリーゼ、今のギルドでトップクラスの実力者フォルテとグラハム。この者たちが認知してるだけでナツメの評価はかなり高い。
実際ソロの冒険者であるにもかかわらず、冒険者ランクはすでにAランク。だからこそナツメにとって、この依頼は簡単なものだった。
「着いた。ここがトリープの森だよ」
先頭のナツメが森の入り口で一度止まる。今まではピクニック気分であったが、ここに来てみんなの目つきが変わった。森に入る前にキャロとシャロは〈索敵〉を発動させ、中の状況を確認する。
「浅い所に10匹の【オーク】がいるわ」
「変異種と進化種はいないよ~」
「それじゃ、行こうか。事前の打合せ通り。ここからは前にキャロちゃん。真ん中に私とルリちゃん。最後にシャロちゃんで行くよ」
現状で一番いいフォーメーションを取り、森の中を進んでいく。このメンバーは基本的に攻撃力が高く。【オーク】であれば誰でも倒す事ができる。キャロが前線に立ち敵と激しく攻防をして、ルリがそれをカバー、シャロは後ろから魔法で援護をし、ナツメが奇襲と援護を担当する。
「見つけたわ。お昼寝なんかしてずいぶん呑気ね」
森に入ってから数分で目的の魔物を認識する。【オーク】たちは円を作るようにそれぞれ木にもたれながら、寝息を立てていた。
「キャロちゃん、私が奇襲しようか?」
「お願いするわ。ナツメちゃんが1匹やったら、私があの中に飛び込んで注意を引き付けるからその間に倒してほしいわ」
「「「了解」」」
ナツメはすぐに〈消滅〉を使用し気配を消した。ほかの3人は一度その場で待機し、ナツメの行動を待つ。数秒後、寝ていた【オーク】の1匹が悲鳴を上げる。それを合図としてキャロがオークの群れの中に突っ込んでいった。
それからは、もはや虐殺だった。3匹の【オーク】が一斉にキャロに飛び掛かるが、キャロはそれを躱し、槍で1匹づつ【オーク】の首を落とす。いきなりの事で戸惑っている2匹の【オーク】は、背後からナツメが忍び寄り〔急所突き〕で確実に殺していった。4匹の【オーク】は一目散に逃げようとしたが、ルリが追跡し槍で首を落とし、シャロが追尾系の魔法で倒してしまった。
「一瞬で終わったわ」
「本当、異世界生まれの人達は驚くほど凄まじい」
「そういうナツメちゃんだって。【オーク】を倒すときの目は狩人のような目をしてたよ」
「これで帰れるね~」
先ほどまでの殺伐とした光景は嘘だったかのように、一瞬でその場が空気が緩くなる。あたりは【オーク】の死骸とその血で酷いことになっているが。
だがこの一瞬の緩みが彼女達にとって命とりだった。
「!?ナツメちゃん危ない!」
咄嗟に動いたルリはナツメの体を突き飛ばす。何が起こったかわからず、ナツメは押し倒され尻餅をついた。みんなの視線が一斉にルリに集まる。そこには腹部にナイフが刺さり気を失って倒れているルリがいた。
「とりあえず、一人。目標の魔王の娘を眠らせることに成功した。これで作戦が楽に進みそうだ」
今まで誰もいなかった場所から1人。フードを被り見るからに怪しさ満点の男がキャロ達の前に立っていた。
「〈身体強化〉〔縮地〕〔閃光突き〕」
「〈破壊〉」
不意打ちとはいえ、ルリを一撃で沈める何かを持っているこの男はキャロ達にとって脅威だった。なので初めから全力で攻撃を行ったのだが。
「危ないな。美少女たちに迫られるのは嬉しいけど。殺気剥き出しなのは嬉しくないね」
そう言いながら男は何一つ傷を負う事なく、堂々とその場に立っている。
一方の攻撃を仕掛けたはずのキャロは、その男の前で倒れ気を失い。ナツメは全身に斬られた傷が付いていた。
「ナツメちゃん!大丈夫!?」
攻撃に参加しなかったシャロはいきなり傷を負ったナツメに駆け寄りその身を案じる。ナツメは「大丈夫」とだけ言い、男から目を離さなかった。
「さて、残るは二人。抵抗されると傷つけてしまうから。おとなしく降伏してくれないかな?」
ジリジリと詰め寄ってくる男。ナツメとシャロは絶体絶命のピンチだった。
(ナツメちゃん)
(これは、お兄ちゃんの〈テレパシー〉どうしてシャロちゃんから?)
(説明はまた今度するね、今の状況ルリちゃんとシャロちゃんが倒された今、私達だけじゃあの男に対抗できない。それはわかるよね)
(そう...だね)
(ナツメちゃんはこの場から逃げて兄さんにこの事を伝えてほしい。ナツメちゃんならおそらく逃げられるから)
ナツメなら逃げられる。この言葉に確証はなかった。だがナツメには〈消滅〉がある。この魔法1つで逃げもれる確率はシャロよりナツメの方が何倍も高い。シャロはそう思っていた。
ナツメもその事は頭では理解している。
(でも...)
(でもじゃないよナツメちゃん。私が魔法を使ったらナツメちゃんは逃げてね)
「〈土人形〉」
「〈消滅〉」
(ごめん、シャロちゃん)
心の中でシャロに謝罪をして、ナツメは傷だらけでその場から離れていった。
「ふぅ~、流石に人形といっても数が多いと面倒ですね」
ナツメが離れてから。少し経ち、森は静寂に包まれていた。男は1人立ち尽くし、周りには3人の少女が倒れていた。
「これで目標は完了した。この3人で...あれ何か忘れているような」
男は1人、顎に手を当てて考えていた。だが何かを忘れているのか分からず。結局3人を連れ元居た場所に戻っていくのだった。
シオン「新たな敵の予感」
レオ「主、今度の戦いは激しくなりますよ」