危険な魔物
サブタイトルが思いつかなくて、一応これにしました。
もしかしたら変更するかも
「お兄ちゃんどう?」
「大丈夫だ、もう血はついてないぞ」
ナツメはその場でクルリと回り来ている服に血が着いてない事を確認する。
魔物との戦闘で血は避けられないものだが、それを落とさず放置すれば、匂いで釣られてくる魔物もいる。
この血を落とす作業は冒険者をしていく上で重要な事だったりする。
「ナツメ、そろそろ本陣の方に行こうか」
「そうだねお兄ちゃん。戦闘音も小さくなってるし、もう決着がつくんじゃないかな?」
森の中で戦闘音が聞こえるのは1箇所のみ、どうやら他の遊撃部隊の人も見事に勝利したんだろう。
俺とナツメは戦闘音のする場所に向かい始めた。
その時だった!金属同士がぶつかる様な音が聞こえたと思ったら、俺達が向かうはずの本陣の方から何かが飛んでくる気配を感じた。
だが、俺とナツメがそれに反応する頃には、それは俺たちの間を抜け、ものすごい速さで木に衝突する。
「ミハネルさん!!」
勢いよく木と衝突し「ガハッ」と嗚咽にも似た声を出すミハネルさん。見れば全身血だらけで装備はボロボロ。
ここまで勘違いをしていたが、本陣は優勢なんかでは無い、むしろ劣勢の可能性の方が高いのだ。
戦闘音が小さくなった事を考えると、ミハネル以外は気絶もしくは、死亡した可能性がある。
「ナツメ、その人を頼む!絶対に死なせるな」
「お兄ちゃんは?!」
「俺は魔物を見てくる」
そう言って、〈身体強化〉を発動させ。本陣と魔物が戦ったであろう場所に急いだ。
「なんだよこれ…」
俺は自分の見た光景を疑った。目の前には、確かに戦闘の跡があり。大量の血が流れている。そして少し開けたこの場所には、【ジャイアントオーク】【ゴブリンキング】【ダークソーサラー】の3匹の魔物がいる。幸い、まだ俺には気がついていないようで、3匹は勝利の祝杯とでも言わんばかりに、飲み物を仰いでいた。
先程まで戦闘があったのは間違いないだろう。だが気絶してる人や死体はどこにもない。もう本陣で参加した冒険者はいなくなっていたのだ。念の為〈索敵〉で冒険者の気配を探してみたが、案の定既に森を抜けている。ミハネルさん1人を残して。
(どうする、俺は気付かれてないし1度撤退するか)
おそらく、俺が単騎で戦っても負ける事はないだろう。だがSランクを含めた冒険者20人をたった3匹の魔物が撤退に追い込んだ、その事実が俺の思考を鈍らせた。
「おーい、誰かいないか〜」
俺が茂みに隠れ魔物の様子を伺ってると、別の場所から遊撃部隊で参加してた冒険者のパーティーが現れてしまった。
その声につられてか他の遊撃部隊のパーティーも集まってくる。
そして全員が先頭で流れたであろう血と、3匹の魔物を見て思考停止させてしまう。
そして冒険者に気づいた魔物はゆっくりと立ち上がり、冒険者に狙いを定めた。
「は?どうなってやが」
1人の冒険者が言葉を発してる最中だった。【ジャイアントオーク】その見た目からは想像つかない速さで、喋ってる冒険者に襲いかかる。
右手に持ってる、人の何倍もある大剣を振りかざすのを見て俺は咄嗟に〔縮地〕を発動させていた。
(想像以上に重い!)
【ジャイアントオーク】の剣を真正面から受け、足が地面に少しめり込む。巨大なのに速い、そして巨大だから重いこの2つが合わさるだけで目の前の魔物は、通常の数倍もの強さがあった。
「離れてください!」
俺は未だに唖然としてる冒険者に声をかけ、【ジャイアントオーク】の2度目の攻撃に備える。型や技のない、ただ思いっきり振られた剣を避け、足を切断する。体勢を崩した【ジャイアントオーク】は地面に片手をつけ、倒れないように必死だった。
「〈魔法障壁〉!」
誰が発動させたのだろうか、【ジャイアントオーク】にトドメを刺そうとした俺に【ダークソーサラー】は〈風の刃〉を放ってきた、いきなりの事で対応できなかった俺を守るため、遊撃部隊の誰かが、魔法を使ってくれた。
「助かりました、でも皆さんはここから逃げてください」
「無茶だ相手はAランク3匹、本陣が撤退したって事はそれ以上の力がある。子供を1人で置いていくなんてできない」
俺は1度【ジャイアントオーク】の傍から離れ先程まで唖然としてた男性の冒険者に指示を出す。
だが彼は良心的な大人なのか、俺を1人にする事を拒んだ。
「大丈夫です。逃げ足には自信があります。その隙にサブメラのギルドに報告して、救援を呼んでください。」
「…わかった、君を信じるよ!ここにいる遊撃部隊の皆聞いてくれ!俺達では足でまといになる、何としてでもギルドに帰りこの事を一刻も早く報告に行くぞ!」
誰が見てもこの状況で子供1人が残るのは自殺行為だった、だが、俺は1度【ジャイアントオーク】の攻撃を受け切り反撃もしている、それを見ていた他の冒険者も俺が倒せなくても逃げる事は可能だと判断し、迅速にこの場から離れた。
「お兄ちゃんお待たせ」
「ナツメ、ミハネルさんは?」
「無事だよ、1度森の外に出したら時間かかっちゃった」
とりあえず、ミハネルさんの無事に、胸を撫で下ろす。俺とナツメ、そして魔物達は互いに牽制しあい、動ける状況ではなかった。
「神の力を感じると思ったら、どうやら餌に食いついてくれたみたいですね」
「?!何者?」
そいつは突如森の奥から現れた。軍服のような物に身を包み、薄気味悪い笑顔で魔物たちの後ろから歩いてくる。
恐ろしい事に、対面してジェシカ並の気配を感じるのに、この気配に今まで気づけなかった、それだけで相当の実力者である事は分かる。
「名乗る必要はありません。私は目的のあなた達を殺すのみなので」
そう言うと、何も持っていないはずの右手を俺に向ける。それだけで嫌な予感がした、咄嗟に右に飛んだ。何かが俺の左頬を掠り、そこから出血していた。
「まじかよ、銃を持ってやがる!」
「おや、もう気づきましたか。さすが半神ですね」
男は両手に何も持ってなかった、だが俺が避けてもう一度男を見ればその手には確かに、ゲームなどでよく見る銃が握られていた。
「精々私を楽しませてから、死んでくださいね」
そう言うと何発もの銃声とともに俺に銃弾を打ち込んできた。
フィン「何か嫌な気配がするね」
ミリア「そうね、当たらなければいいのだけれど」