妹が心配の兄
本来は一本に纏める話だったのですが、長くなったので2本にします。
ドラグーン国での一件は終わり、その全容をサウスの王子であるアレスに話した。だが現状サウスは帝国と戦争する事はない、どれだけシオンが打倒帝国を掲げても。個人の意見で国は動かない。第一、シオンは国の戦争事に関わる事を許されてないのだ。
程なくして、シオンはいつもの日常に戻っていった。何事もなく平和な日常。そんな一日の夜の事だった。
「なぁルリ。最近シャロの様子がおかしくないか?」
「シャロちゃん?特におかしくないと思うけど」
ベットに座る俺、そして俺の膝に座っているルリ。俺達は体を密着させ夜のイチャイチャを楽しんでいる。ふと疑問に思った事をルリに問いかけてみるが、ルリは特にシャロに違和感を感じていないようだった。
「すまん、俺の言葉足らずだ。なんて言うか最近のシャロは、妙に女の子っぽくなったと言うか、オシャレに目覚めたと言うか。良い意味で変わった気がしてな」
「そうね。この夏休みになってから朝から出かけているみたいだし」
「それに、お弁当らしき物を持っているのを見かけるしな」
「シオン、気にし過ぎじゃない?シャロちゃんだって何か事情があるのよ」
気にし過ぎと言われて考えてしまう。確かに俺達はもう14歳になる年で来年には成人だ。シャロが何か秘密を持っていたとしても俺が聞き出す権利はない。
それでもどうしても心配になってしまう。だって血が繋がっていなくても兄妹なのだから。
「そう言えば、私も同じような事を言われた事があるわ」
「そんな事があったのか?いつぐらいだ?」
「シオンと出会って少し経ったぐらいかしら。それよりもう寝ましょう。夜も遅いし、うるさくすれば誰か起きてしまう」
いったん俺の膝から退き、一瞬だが俺の唇に軽くルリの唇が重なる。そのままルリはベットに転がり毛布を被さった。それにつられて俺もルリの横に転がり、一緒のベットで夜を過ごした。
その翌日
朝の鍛錬を終え、家に戻ると慌しく何かの準備をしているシャロと遭遇した。
シャロは決して高い服ではないが、シンプルで清楚っぽい白のワンピースを着ていて、麦藁帽子を被っていた。なんだか浜辺て撮影会をする少女っぽい。
「おはようシャロ。どうしたそんな慌しくして」
「あ、おはよう兄さん~。今から出かけるからその準備をしてるんだ~」
俺と会話しながらも準備する手を休める事のないシャロ。ちょっと大きいリュックに何か箱の様な物を入れてチャックを閉じた。
「それじゃ、行って来るね~」
「おう、気をつけてな」
俺とすれ違うよいうに家を出るシャロ。どことなく笑顔で楽しそうな表情が目に焼きついた。
だがその事をいったん忘れ、俺は風呂場に足を運ぶ。鍛錬で掻いた汗を流すのだ。シャワーを浴びながらふと昨日のルリとの会話を思い出した。
(ルリが変わったと思われ始めたのは俺とであって少し経ってから、俺と付き合い始めてからぐらいかな...まさか!?)
俺は急いでシャワーを止め風呂から出る。ルリは俺と付き合い始めてから変わったと言われて、今のシャロがそれに近いものだと考えるなら。シャロにも彼氏が出来たのかもしれない。そう思ったら急いで着替えて俺も家を出た。
「〈索敵〉」
急いで家を出たとは言えシャロの姿はこの周囲にない。かといってこの広いサブメラを闇雲に探していたらシャロが見付かるはずもない。そこでシャロの気配を探し出す事にした。意外な事にシャロの気配は家から、そう遠くはなく俺も知っている場所に居た。
「学園か、なぜこんな場所に」
間違いなくシャロの気配は学園からする。だがあの服装でなぜ学園に来るのは些か疑問だった。
調べた結果シャロは第7訓練場にいる。俺も急ぎ、その付近の繋がる移動装置を使用した。第7訓練場に行けばシャロと知らない男子生徒が一緒にいる。だがそれ以上に気になるのは、物陰に隠れて2人を観察している何者かがいる事だった。
(まさか邪神の使い!?)
そう思ったら即行動。物陰に隠れている誰かの背後を取り、一瞬で出したナイフをそいつの首に押し当てる。いきなりの事で驚いているのかそいつは「ひぇ」と情けない声を上げた。その正体を確かめようとよく見たら。
「カスミ先輩!」
「え!シオン君!?」
物陰から俺の妹と知らない男子生徒を見ていたのはステラ学園3年生。情報部のカスミ先輩だった。俺達の声に気付いたのか、シャロは俺達のいる方を凝視する。するとカスミ先輩は「隠れて」と急いでいる様子だった。
なぜ隠れなければならないのか分らないが、どうやら訳ありのようで俺も一緒に隠れる。
「師匠どうしたのですか?」
「ううん。なんでもないよ~」
どうやら、やり過ごしたようだ。だが気になる事がある。少し顔を出せばシャロとシャロの事を師匠と呼ぶ男子生徒は、魔法の特訓をし始めた。
「で、どう言う事か説明してもらいましょうか」
「待って、息を整えているから。いきなりナイフを首に当てられた時は流石に肝が冷えたよ」
「いやだって、明らかに不審者っぽかったですし」
「失礼な!誰が不審者だ!」
少々怒り気味だったカスミ先輩は息を整えている。まぁ本気で驚いていたっぽい。
そんなカスミ先輩を横目に俺はシャロ達の方を見直した。
師匠と呼んでいたから何となく想像ついたが、シャロはあの男子に魔法を教えているらしい。それもかなり体を密着させて。
「シオン君。説明しても?」
「あ、お願いします」
「私は最近、調べ物をしに学園に来ていたんだよ。だけどその度に大きな音が聞こえて気になっていたんだ。それを調べるための調査が始まった。その音の正体はあの2人。1人はシオン君は分るよね?シャロさんだ。そしてもう1人はこの学園の1年生、Fクラスのユーテス君。魔法が使えない事から、無能。と呼ばれる少年だ」
「魔法が使えない?」
Fクラスと言えば確かに何かしら足りてない生徒がいるクラスと言われている。学力かあるいは実力か。だが目の前の無能と呼ばれる少年は、バンバン魔法を使っている。
それに遠いこの距離からでも分るほど魔力量。Fクラスの生徒とは到底思えなかった。
「でもカスミ先輩。あの男子。魔力量は異常ですよ。魔法も使ってないし」
「そうなんだよ!だから私が調べているって訳。あの男子の正体と2人の関係をね」
話が少し白熱して、俺は特訓中の2人から目を逸らしていた。もう一度ユーテス君を見た時、そこにシャロの姿がなかった。それに気が付いたカスミ先輩もキョロキョロシャロの姿を探す。
だが前にはいない。俺とカスミ先輩が探していた人の声が後ろから聞こえた。
「兄さん、それとカスミ先輩でしたっけ?何してるんですか~」
どこか怒っている様な、呆れてるようなシャロの声にゆっくりと振り向く。俺とカスミ先輩であった。
ルリ「シオン...どこぉ?」
レオ「主なら、もうお出かけになられましたよ」
リアン「ルリおねえちゃんあそぼ!」