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初めてのおつかい

「いってきます」


「リアン、気をつけて行くんだよ」


子供用の肩掛けバックを身に付け、準備万端のリアン。それを見送るフォール家の面々の方が若干ソワソワしている。

家族の皆に見送られながら、リアンは1人家を出て行った。


事の始まりは、ミリアの発言だった。


「シオン、ちょっと夕飯の買い物を頼んでもいい?」


「いいよ、母さん」


やる事も無く家で過ごしていたシオンにおつかいを頼んだミリア。この日は珍しく朝から一家全員揃っていたのだが、女性陣は家事に忙しく。フィンはリビングのソファーでぐっすりだった。

手が空いているシオンはでかける準備をしようとした時、シオンの前に大きな瞳で見つめるリアンがやって来た。


「リアンも一緒に行くか?」


そう尋ねてみたが、どうやら違うらしく首をブンブンと横に振る。だが何か伝えたいようでジッとシオンの事は見つめている。


「どうした?」


「りあんが、ひとりでおかいものいきます!」


その言葉にフィンは飛び起き、家事をしている皆は動きが止まる。シオンは固まってしまった。

確かに年齢的にはもう5歳、当時のシオンはすでに【混沌の龍(カオスドラゴン)】をほぼ仕留めるような事もしていた。それに比べて1人で買い物なんて可愛いものだ。だがシオンはリアンの肩をしっかり掴みそれを頑なに拒否する。


「いいか、リアン王都には悪い人もいるんだ。1人で行くのは絶対ダメだ」


「シオン、過保護なんじゃないの?」


話を聞いていたルリが、シオンを止める。この場にいる者はシオン以外買い物に行かせる事に賛成のようだ。


「ルリ、過去にはお前ほどの実力者でも攫われたことがあっただろ?」


「そこつかれると痛いな~」


シオンは覚えている。まだ覚醒してなかったとは言えルリですら、簡単に捉えることが出来るやつらがいた事を。

最近シオンが鍛えているからリアンは同年代の子供より強いはずだが、それでも冒険者や傭兵と比べればまだまだ子供なのだ。誰かに狙われる事は早々無いが、もしかするとまた、邪神の使いに狙われるかもしれない。

そう思うとシオンは、気が気ではなかった。


「ぱぱ、おねがい」


「うっ。そんな顔されても」


「おねがい!」


「...はぁ~わかったよ」


ウルウルした目で見つめられて。シオンパパは許しを出してしまった。リアンはすぐに部屋に戻ると着替えて準備をした。

過保護すぎるシオンパパは夕飯で使うお金と。金貨を10枚持たせた。




「シオン準備して」


「父さん、何の準備?」


「決まっているよ。リアンちゃんの後をつけるのさ」


リアンが家をでた後。すでに準備を整えているフィンも玄関でシオンを待つ。フィンからしてみてもリアンは可愛い子供なのだ。そんな子供を1人にするのは流石に許容できないらいしい。

フィンの言葉を聞き、大急ぎでシオンも着替えをした。その光景をミリア達女性陣は呆れながら、見ているのだった。




「おかいもの、おかいもの」


楽しそうに、王都を歩き。何度かメモを見ながらその度にニコニコするリアンがいる。周りの大人も「何であんな小さな子が1人で」と思っているが。その行動を見ていると初めてのお使いなんだと察し。少し離れた場所から見守っている。


リアンの目的地はフォール家からそこまで離れていないお店で。普通の大人なら5分、リアンのような子供でも10分でつく距離だった。


お店に着いたリアンはせっせと渡されたメモを見ながら食材を集めていく。この歳で常識的な知識をすでに身に付けているので、会計までスムーズにこなす事ができる。


「あら、1人でお買い物?偉いねぇ」


「ありがとうございます」


会計をしてくれたおばさんに褒められ。礼儀よくペコリと頭を下げながらお礼を言う。

ちなみにシオンとフィンはすでにお店の中に潜入しており、自然な客を装い、いつでも手助けできる位置取りをしていた。

シオンもフィンも何も言葉は交わさない。声が聞こえればリアンは混乱するかもしれないから。アイコンタクトだけのやり取り、だがそれで全てが通じ合う。本当に似たもの親子だ。


袋の中に材料を入れ、リアンがお家に帰る最中。目の前にリアンよりも少し大きいくらいの子供達が現れ道を塞いだ。


「ここは、僕達の道だ!通りたければお金を払え!!」


「そうだぞ、僕達の道だ」


「お金、お金!」


いきなり現れた子供達にキョトンとするリアン。それを遠巻きで見ていたシオンとフィンは今すぐ飛び出そうとした。

だが、リアンを助けたのは2人ではない。


「こらこら君たち。ここは皆の道だよ。それと女の子に意地悪するなんてダメだよ」


「おばさん誰だよ!はぁ~まぁいいや皆行こうぜ」


「そうだね」


「お金もらえない」


どこからか行き成り現れたお姉さんが悪がき達を注意をして。リアンを助けた。そのお姉さんはリアンの方を見るとニッコリ微笑みながら、目線を同じ位置まで合わせようとその場でしゃがむ。


「おねえさん、ありがとう」


「どういたしまして。それより1人は危ないよ。お家まで送ってあげようか?」


「うん!おねえさんは、いいひとっぽい!りあんはりあんっていいます」


「リアンちゃんね。私はリーゼ。とりあえず行こうか」


リーゼの手を握りながら。リアンは嬉しそうに家に帰る。この時にはすでにシオン達はいなくなっていた。


「ここがおうち」


「そうなんだ。あれ、ここって?」


リアンを家まで送ると、見覚えのある家に疑問を覚えるリーゼ。リアンが玄関を開けるとすぐ目の前でシオンが待っていた。


「お帰りリアン。ちゃんとおつかい出来て偉いね!!」


「ぱぱ~」


荷物を玄関に置くとリアンはシオンに抱きついた。流れで玄関に入ったリーゼはシオンの姿を見て口をあけていた。


「リーゼ、久しぶりだね」


「フィンさん!やっぱりフィンさんの家ですよね?どうして獣人の子が」


「それは、長くなるからとりあえず中に入って」


こうして、意外な再開はあったが。リアンの初めてのおつかいは、無事に成功して。その日の夜はリーゼを交えて遅くまでパーティーが開催されるのであった。

リーゼ「シオン君、大きくなりましたね」


フィン「そうだね。もう立派だよ」


ミリア「でも、大事な私達の子供よ」

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