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訓練

「もう一回やらせてくれ」


「私もお願い」


肩で息をしながら、武器を構えるハンスとアリンすでに始まってから、2時間は経っただろう。それなのに未だに一度も休憩はしていない。その2人に付き合っているレオはまだまだ余裕がありそうだった。


何故フォール家の庭にハンスとアリンがいるのかを語るには、少し前に戻る必要がある。




「今日みたいに、ゆっくり過ごす休みも悪くないな」


「シオンの言う通りね」


「主も、ルリもゆっくりとか言う割には、しっかり朝の鍛錬はやりますよね」


時間はお昼前、すでにキャロとシャロがリアンを連れてお出かけにをして、父さんと母さんは依頼を受けに行き、家には俺とルリとレオしかいなかった。


レオの入れてくれたお茶を飲みながら、3人で談笑する。最近は毎日のように外にいたから、こんな時間もなんもない時間すら楽しく感じてしょうがない。


ピンポーン


そんな中、家のチャイムがなる。こんな時間に尋ねてくるのが誰なのかわからないが、とりあえず俺が出た。

扉を開け、玄関に立っていたのは、私服姿のハンスとアリンの2人だった。


「珍しいな、2人が尋ねてくるなんて。アレスからの伝言か?」


「違うんだ、今日はシオン君にお願いがあってきたんだ」


「私と、ハンスを鍛えて欲しいの」


2人が玄関で頭を下げてくる。とりあえず近所さんの目が痛いので中に入ってもらった。

いきなり来たクラスメイトにルリは少し驚いき、レオは素早く飲み物を出す。


「それで、鍛えて欲しいって言ったけど。2人は十分強いよな?」


「確かに、城の中や軍の中なら上位に入るかもしれないけど。シオン君たちから見ればまだまだだろ」


「私とハンスは、少しでも強くなるようになるにどうすれば良いか考えた。結果シオン君に頼むのが一番だと思った」


2人からは強くなりたいという意思が伝わってくる。まぁ頼られたからにはとりあえず訓練に付き合うが、俺は1つ気になることがあった。


「そういえば、同じ護衛のハナはどうしたんだ?」


「あ~、ハナは...」


「ハナは、アレス様と正式に婚姻を結ぶ事になったの。流石に未来の王妃様に護衛なんかやらせられないわ」


アレスとハナの急展開に驚きを隠せない。あの2人を焚きつけた張本人だが、まさかそこまで進展が早いと思わなかった。俺とルリですらまだ恋人で止まっているのに。


「そういう事で、これからはアレス様、そしてハナも護衛対象になり。護衛の人数も減ったから今より強くなりたいんだ」


「シオン君お願い、私達を鍛えて」


改めて、頭を下げるハンストアリン。ここまでされたら俺も無視できず。とりあえず2人を強くするための訓練が始まった。


とは、言ったが。流石に俺やルリでは、実力に差がありすぎて訓練にならないので。2人の相手はレオが務める事になった。正直レオでも差がかなりあるのだが、俺やルリよりは、ましと言う事になった。


訓練は実戦形式。ハンスとアリンがレオから1本取れた時点で終了とする事になった。途中途中で、俺とルリがアドバイスをして、レオに勝ちやすくする。

初めは訓練用の武器を構えていたが、レオが「普段使いの武器で来なさい」と言って。今は普通の武器を使っている。

そして今に戻る。




「そろそろ、休憩したらどうだ?」


「そうだよ、ハンス君もアリンちゃんもそろそろ限界でしょ?」


流石にもう限界だと見ていて思った。明らかに動きが鈍くなっている。レオに仕掛けた回数は当に3桁を越えている。むしろここまでやれるが凄いと思った。


「でもまだ」


「私達は終わってない」


そう言って、また武器を構える。だが体力は当に限界。武器の構えすらまともではないのだ。やれてもこれで一回、これ以上は流石にやらせられない。

その意志を伝えるためレオを見ると、レオもわかっているのか。1度頷きけれど、2人の熱意に当てられこの最後だけは模擬戦に付き合うようだった。


レオが構えるのを見ると、アレスがレオに突っ込む。先ほどまでならスキルやフェイントを織り交ぜつつの攻撃だったが、もうその体力すら残っていないようで、ただ突っ込むだけだ。

当然、単純な攻撃がレオに当たるはずなく、全て最小限にかわしている。


だが先ほどまでと違い、アリンが魔法攻撃をおこなっていない。むしろ何かを待っているようにジッとレオの動きを観察している。


何度も攻撃を仕掛けてレオが本能で理解できたのか、1度だけハンスの攻撃が当たりそうになる。だが流石はレオ、少し体勢は崩したが、しっかりと攻撃は避ける。

その時だった、ここまで観察に徹していた。アリンが仕掛ける。


「〈重力(グラビティ)〉」


「ここだぁ!!」


ここにきて、完璧な連携だった。アリンの使った〈重力(グラビティ)〉は対象に何倍もの重力をかける魔法。体勢の崩れたレオは次の攻撃に備えることができない。この作戦を何度も使っていればレオも対処が出来ただろう。だがこの土壇場で使う事によって、不意打ちに近い形でレオに魔法をかけることができた。

そしてその魔法を使うと信じていたのだろう。ハンスは体勢が整う前のレオにしっかりと追い討ちをかけた。


ハンスの持っている武器がレオに当たるその瞬間、レオはとんでもない動きを見せる。無理な体勢から腕を伸ばしたと思ったら。武器を持っているハンスの腕を掴み、関節技に持ち込みんだ。まさか反撃が来るとは思っていなかったハンスはなすすべなく、体の自由を奪われた。

そこで、試合は終わったように思えた。だが後方いたアリンが〈瞬間移動(クイックテレポート)〉でレオの背後を取り、持っていたナイフを後ろから首に突き立てた。


「勝負ありだな」


「そうだね、間違いなくハンス君と、アリンちゃんの勝利だね」


俺とルリが勝敗を告げると、二人はその場に倒れこんだ。この一戦に全てをかけていたのがわかる。

程なくして、2人は立ち上がり疲れは残っていると思うが良い表情なっていた。


「シオン君、そしてレオさんありがとう」


「私達もこれで少しは自信が持てるわ」




そのあと、2人は家で少しくつろいでから、お城に戻って行った。

そんな2人の背中が見えなくなると、俺はレオの方を向く。


「レオ、お前神の力を使っただろ」


「えぇ、最後の最後で少しだけ、でもそれでも負けましたけどね」


これが殺し合いなら、また話しは別だろう。それでも一瞬レオから全力を引き出していたのだ。今この王都を探して、レオに使わせる者がどれだけいるか。

そう思うと、あの2人のこれからの成長が楽しみになった。

ハンス「流石にきつかったな」


アリン「でも、普段よりも充実していたわ」

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