フォール家VS隊長達1
本当は2つの戦いを書きたかったんですが、文字数的に1つにしました。
ムーテの王城から隊長達を4人巻き込み、フィンとミリアは2人がよく知る森に〈転移〉した。
そう、古代森林だ。エンド村近くにある森で冒険者である者なら1度は耳にする場所。
「ここは何所だっチュ?」
「うーん、わからん」
だが当然、場所も把握してないローガリアの隊長達にとっては道の場所だった。
始めに言葉を発したのは、ネズミの獣人、チュータ他の隊長達に比べると小柄ではあるが、彼は4番隊の隊長と実力は申し分ない。そしてそれに答えたのは象の獣人、パオームだ。チュータとは対象的に体が大きく、誰が見ても鉄壁の防御を誇っているように見える。5番隊の隊長で頼れる兄貴分といった感じだ。
当然これに巻き込まれ、その場にはカバの獣人ヒッポムと、キツネの獣人フォックもいる。2人はあたりを警戒し、何事にも対応できるように備えている。
「シオンに、ああ言った手前、僕達は負けられないね」
「そうね、フィン。私の足引っ張ったら許さないから」
少し離れた場所に転移していた、フィンとミリアは武器も構えず、4人の隊長達の前に現れた。
それを見た隊長達はあまりのやる気のなさに、何かの罠じゃないのかとよりいっそう警戒する。
「始める前に、自己紹介でもしようか。僕はフィン。フィン・フォールだよ」
「私はミリア。ミリア・フォール。あなた達に恨みはないけど。ここで倒させてもらうわ」
これを見た、隊長達は1度武器を納め。適度な距離を取りつつも、フィンとミリアに自己紹介をする。
「僕は、4番隊の隊長チュータだっチュ」
「俺は、5番隊の隊長パオーム」
「この前も名乗ったが、7番隊の隊長ヒッポムだ」
「僕も自己紹介したけど、改めて。8番隊の隊長フォックだよ」
お互い、名乗った後、無言で武器を構える。冷め切った空気は、誰も立ち入れない空気をかもし出している。
きっかけが何かはわからない。風の音、木の擦れる音。魔物のうねり声。
だが気がつい時には、フィンはその場におらず、ヒッポムが小さいうめき声を上げながら、倒れた。
「何が起きたッチュ?!」
「よそ見はよくないわ。〈風の刃〉」
「チュータさん危な、グハッ」
ミリアが放ったのはただの初級魔法に過ぎない。本来であれば、鍛え上げられた隊長達はダメージを食らうこともない。だがそれは、使い手がミリアなら話しは別だ。殺傷能力を失わせる代わりに、威力と速度は何倍にも上がる。
こんな芸当は普通の魔法使いには出来ない。魔術をとことん極めなければいけない。
チュータに放たれたミリアの〈風の刃〉を、間一髪でフォックが受ける。だがその一撃でフォックも気絶してしまった。
一瞬にして数の有利は消え。あまりの実力差にどうする事も出来ないと思われたが。鍛え上げられた隊長達。戦意を失う事はない。むしろすれば、この状況を切り抜けられるか、頭をフル回転させている。
「〈風の刃〉」
「〈魔法障壁〉っチュ」
再び放たれた。魔法を今度はしっかり防ぐ。1度見た攻撃はチュータには通用しなかった。
一瞬の間に激しい戦闘していたのはチュータとミリアだけではない。フィンとパオームも凄まじかった。
フィンは一瞬にして後ろに回りこみ、ヒッポムの意識を持っている木剣で奪い。そのままパオームに攻撃を仕掛けた。だが振り向き攻撃を防ぐ。そして武器のハンマーで攻撃をした。大きな体に大きなハンマー、だがその動きは以外にも俊敏なものだった。予想外の速度に体勢を崩しそうになり、フィンはミリアの元まで退く。
「フィン、あなた実力が衰えたんじゃないの?」
「そうかも、まさか防がれるとは思わなかったよ」
2人は見るからに余裕そうな態度で、少し話す。だがチュータと、パオームの表情は焦りの色が見えていた。
「パオーム」
「チュータ」
2人は、互いの名前を呼び合い。顔を見合わせ頷く。そしてパオームがフィンとミリアの元に突撃をした。それを前に出てフィンが捌く。常人であれば全く見えない攻撃を、吹き飛ばされる事なく、フィンは捌き続けた。
「〈大嵐〉っチュ!!」
チュータの放った魔法は超級の風魔法。〈大嵐〉範囲攻撃で、威力も高く巻き込まれた者は魔法が終るまで風の刃をその体に受け続ける。当然それをミリアとフィンに放ったので、フィンと接近戦をしていた、パオームも巻き込まれる。それを分かっていて。チュータも使ったのだ。
パオームとチュータは、始めの攻防で理解した。圧倒的な実力差に。それを越えダメージを与えるのは、こういった行動に出るほかなかった。
倒す事はもう目指していない、少しでも削って他の者に託そうと思っていた。
だがそれを、真っ向から叩き潰すのがフィンとミリアだ。
「〈魔法解除〉」
ミリアが魔法を使っただけで、〈大嵐〉は消える。想像していなかった事がおき、一瞬だけ動きが止まる。その隙をフィンは見逃さなかった。
「アガッ」
「ウッ」
呻き声を上げ、2人はその場に倒れこむ。
「ごめんね、僕達も負けれないプライドがあるから」
「私達は、親だからね。まぁ最後の魔法はよかったわ」
聞こえないと知っていながら。ミリアは相手を褒める。
こうして、古代森林での戦いはフィンとミリアの圧勝で終わった。
フィン「他の子たちはどうなったか」
ミリア「信じましょう、きっと勝ってるわ」