伝説の武器
新要素、武器のレア度が追加されます。これに関してはどこかのタイミングでまとめ回を書こうと思っています
(くそ、化け物が)
俺は内心悪態を付きながら、傷ついた体を一瞬で回復する。目の前に立つオーディンを名乗る者は余裕の表情でこちらを伺っていた。
俺とルリが戦闘を始めてから数十分、未だに攻撃は掠りもしない、決して俺とルリのコンビネーションが悪い訳ではない、ただ圧倒的にオーディンが強いだけ。俺もルリも自分達の異常な強さを理解はしていたが、そんな物を遥かに越えて強かった。
「どうした、選ばれた者よ。これで終りじゃないだろうな」
もはやオーディンは、武器すら構えていない。俺達がどんな事をしても対処できると思っているのだろう。
考えればこの戦いには幾つか不明点があった。
まずこの場所、ダンジョンから転移したはずなのに、シュテルクストでは感じた事のない気配を感じている。
そして、〔完全鑑定〕を使っても一切オーディンの情報がわからない事。
さらには、オーディンは俺達にトドメを刺さないこと。
トドメを刺す機会はいくらでもあった。情けない事だがそれだけ俺とルリには隙が出来ていた。だが一切追撃はせず、むしろ傷を回復する時間すらくれる。
「ルリ、時間をタイミングを合わせてくれ、あれを使う」
「...わかった」
俺達は、もう一度構えて目の前の化け物に攻撃を仕掛けようとした。
一息ついた瞬間、俺の横にいたルリは一瞬でオーディンの前に移動する。高速で繰り出される槍技をオーディンは余裕で回避し、時には弾いた。
ルリが放つ連撃の最後、それに合わせてオーディンも槍で対応する。だがルリの力にオーディンは僅かに体制を崩した。
「シオン!!」
「わかってる。〈神の審判〉」
俺が使える最強の攻撃魔法。殺せないにしても、腕一本ぐらいは持っていける。
そう思っていた。だが目の前に広がるのはまさしく絶望の光景だった。
光がなくなり、オーディンを見ると、どこから取り出したかもわからない、盾を左手に持っており、それを体を守るように前に突き出していた。
「ふむ、流石は神級魔法というべきか、さすがにヒヤッとしたぞ」
言葉ではああ言っているが、未だに余裕の表情は崩さない。こうなってしまうと、俺達ができる事はもうない。だが、目の前に敵がいる以上諦めるなんて選択肢は、一切なかった。
「ルリ下がれ、〔げんかい」
「そこまでじゃ」
俺が、スキルを使おうとした時、どこからともなく声が聞こえた。それは俺の知っている声。
「ドゥエサス!」
「ドゥエサス様」
「うむ、シオンにオーディンよ久しぶりじゃな」
これ以上の戦闘を止めるように、ドゥエサスは俺とオーディンの間に割ってはいる。ルリは1人、この状況についてこれてない。
「シオン、あの人は?」
「あれが、最高神ドゥエサス。前に話したことがあると思うけど、俺を転生させた神様だよ」
「いかにも、わしがドゥエサスじゃ」
得意げな顔でルリに自己紹介するドゥエサス。ルリはどうしていいのか分からず、とりあえず膝を突いた。
「ドゥエサス様、試練はもうよろしいのですか?」
「もうよいじゃろう。おぬしにアイギスまで出させたんじゃ。素質がないわけではあるまい。それにお主これ以上やったら本気になるじゃろ?」
「確かに、なっていたかもしれません。わかりました、試練はこれで終了という事で」
「なぁ、ドゥエサス話が見えてこないんだけど」
「とりあえず、付いて来るのじゃ」
今だ状況を飲み込めないまま、奥の扉に歩き出したドゥエサスに付いて行く。扉を開けると長い一本道になっていた。そして歩きながら、ドゥエサスは話し始める。
「ここは、狭間と呼ばれるシュテルクストと、神の世界の間の世界じゃ。ここには1本の武器が封印されておってな、シオンにわかりやすく言うなら、聖剣と言う奴じゃ、あれじゃよ、よく勇者や英雄が引き抜く武器じゃ。もちろんシュテルクストにも聖剣はある。当然抜ける者は将来英雄と呼ばれる存在じゃ。じゃが、ここにあるのは、それとは少し異なる、まぁ神剣とでも言っておこうかのぅ。じゃがそれを抜くには試練を受けなければいけない。そしてシオンにわしが手引きした事を悟られてもいけない。そんな時お主一緒に居た、魔王の穣ちゃんに来るように仕向けたんじゃ」
「あの時、私を誘導したのはドゥエサスさんだったんですね!」
「だから、ルリが宝箱の下の移動装置に気が付いたのか」
これで1つ、納得した。町デートじゃなくて洞窟に着た理由が。きっとドゥエサスが精神操作でもしたのだろう。
「話を続けるのじゃ、試練の相手はここに居るオーディン。ゼウス様が最高神だった時代からいる神じゃ。試練の内容はオーディンと戦う事。勝ち負けは関係ないのじゃ。結果シオン達は、こやつから神の盾と呼ばれるアイギスを引き出した。これだけで試練は合格じゃ。そして着いたのじゃ。ここが伝説の武器が封印されてる場所なのじゃ」
道を抜け、奥には少し広めの空間と台座に1本の剣が刺さっていた。まるでアーサー王伝説のようだ。
俺は引き寄せられるようにその剣に一歩一歩近づいて、気づいた時にはその柄を握り締めていた。
「えい」
軽く声を出しながら、それを上に引っ張ると剣が折れた。そう折れたのだ。真ん中ぐらいが綺麗にポッキと。それを見ながら、俺は冷や汗を掻いた。後ろで俺の様子を見ている三人も唖然としている。
どうしようか悩んでいる時、頭の中で声が聞こえた。
(剣を再構築します。お望みの形を頭の中で描いてください)
咄嗟の事で、とりあえずいつもの片手剣を思い描く。するとその折れた剣が光りだした。
(確認完了。同時にマスター登録完了)
頭の中で声が聞こえると同時に、その剣は完全に治りきっていた。見事に折れてた剣はまるでそんな事無かったかのように、光り輝いている。とりあえず〔完全鑑定〕
武器名 鬼神刀
レア度 神級武器
武器説明 名前に刀と入っているが刀ではない。持ち主を選び使い手に合わせてその能力や形が変化する。全てのステータスが物凄く上昇する。どんな者でも切ることができ、用途に合わせて殺傷能力を失うことも出来る。滅多に折れることはないが、仮に壊されても自動修復機能がある。武器に意志があり持ち主との会話が可能。変身も出来る。
いろんな事がわかるが、同時にいろんな事がわからない。そもそも変身できるってなんだ。だがこの剣を握っていて、今まで以上に俺が強くなったと錯覚してしまう。それだけこの剣は以上なのだろう。
「無事に、シオンは抜くことができたのじゃな」
「ありがとうドゥエサス。っとそろそろいい時間かな。帰らないと」
「まて、選ばれた者よ。半神の少年ではなく、魔王の少女お前だ」
「え!?私ですか」
まさか呼ばれるとは思っていなかったのだろう。ルリはオーディンの方に向き直る。するとオーディンは先ほどの戦闘で使っていた、槍をルリに渡した。
「それは、神槍グングニル。試練を乗り切った者に渡す報美みたいなものだ、受け取っておけ」
「あ、ありがとうございます」
確かに、一緒に乗り切ったのにルリだけ貰わないのはおかしい事だな、と納得する。思わぬ収穫はあったが、俺とルリは無事ダンジョンに戻り、ノイの宿屋に戻ろうとしていた。
日も暮れていて丁度いい時間、町の中に入り父さん達と合流しようとしていたら。目の前から1人の獣人が俺に飛びついてきた。
それは、泣いていて、綺麗な顔が台無しになっている。リアンだった。
「どうしたリアン?」
「パパ、ヒック、レオおねえちゃんが!」
その言葉を聞いたとき、リアンを抱えながらレオの気配がする場所まで走った。人ごみなど無視し、一直線に駆ける。裏路地の人目が着かない場所にリアンは血だらけの状態倒れているのだった。
レオ「リアン、逃げて。こいつはヤバイ」
???「へぇ~よく耐えるね。素直に感心するよ」