「お前その顔で・・・」
遂に新章。ちなみにまだ2年生で、夏休みには入っていません。
今回は長めにする予定ですが、予定上週2更新が出来なくなるかもしれません。
毎週月曜日だけはしっかり更新します。
「何のようですか?」
女性の声が響く、専用の隔離された部屋の中に彼女は閉じ込められていた。
辺りは薄暗く、周りから音が入らないように何重にも魔法が掛けられている。
「教えておいてやろうと思ってな」
女性の言葉に返答するように、男性が声を出す。この空間には、この2人しかいない。
「新たな、姫が見付かった。どうやらリアンも傍にいるらしい。あれを捕まえられれば、貴様も最後の時は1人じゃなくなるな」
「ッ!ライオネル!!また貴方は、あの子を殺すのですか!?」
女性はライオネルと呼ばれる男性を睨みつつ叫ぶ。対するライオネルは返事をせずにその部屋から出て行ってしまった。
残された女性は、隔離された部屋の中、己の無力さを改めて痛感するのだった。
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「お兄ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとうね」
「気にするな、俺も予定はなかったしな」
手を繋ぎながら横を歩くナツメは、いつにも増して上機嫌だった。
学園の休日、ナツメから誘われ2人だけで買い物に、一応ルリ達にも声をかけたらしいが、2人で行ってきな。と言われたらしく今に至る。
「それにしても、ここって本当にいろんな種族の人達がいるよね」
ナツメがキョロキョロ周りを見て、それに釣られる様に俺も周りを見れば確かにいろんな種族がいる。サウスでは基本的にはどんな種族でも住む事ができ、また種族の違いで、差別をする者には罪が科せられる。
「その中でも、獣人が多すぎる気はするけどな」
不自然なほどの獣人の多さ、普段出かけたりしてもここまで偏って、見える事はあまりない。数も不自然だがそれ以上に不自然な事もあった。
「何で獣人達は、あんなに装備をしっかり整えているんだろうね」
まるで大掛かりな、魔物の討伐をするのかと思わせるぐらい、しっかりとした装備。軍隊かと思うぐらい統率された動きに、俺達以外の、他の一般の人達も獣人達に目が行ってしまう。
だが、ずっと見ているわけにもいかないので、早々にナツメと帰ろうとした時、目の前に大柄のゴリラベースの獣人が俺達の行くてを塞ぐ。
そのゴリラは素早く指示を出し、部下らしきサルベースの獣人を使い、俺とナツメを完全に包囲した。
「エイプ様、間違いありませんこの人間です」
エイプと呼ばれたゴリラは、部下らしき獣人の報告を聞き俺とナツメを凝視する。普通の人であれば大柄のゴリラに睨まれれば、涙目になったり、恐怖で腰を抜かすかもしれない。
だが俺とナツメは違う、笑いを堪えるのに精一杯で、恐怖を覚える事は微塵もなかった。
大柄のゴリラは一歩前に出て、俺との距離をつめるとさらに迫力ある顔で睨みつける。
「俺は、獣人国ローガリア。10番隊の隊長エイプだ。お前が我が国の姫に関係ある事は調べが付いている。おとなしく姫を渡すなら、何もしない。だが渡す気がないと言うなら・・・なんだその顔は?」
エイプは用件を言ってる最中に俺とナツメの顔を見て、違和感に気が付いた。そう俺達は笑いを堪えるのが限界で若干変な顔になりつつ。少し震えている。
我慢できなくなった俺は遂にエイプ名乗ったゴリラにつげる。
「お前、フフ。その顔でエイプなのかよ。ゴリラみたいな顔なのに、名前サルって」
俺が口にした瞬間ナツメは盛大に吹いた。女の子が出しちゃいけないような声で笑っている。逆にエイプの手下のサルたちは戦慄してるかのように顔を見渡した。
「マジかあいつ...」
「エイプ様に向かって」
「あいつ終ったな」
エイプ。英語でape意味はサル。どう見てもゴリラなのにサルと名乗るのを見て笑わずに入られなかった。だがどうやら、エイプに向かってサルは禁句らしく。エイプは顔をどんどん赤く染めていく。その光景にまた俺とナツメは笑ってしまった。
「見た目ゴリラで、名前はエイプ。しかも怒って顔を赤く染めている。もしかして尻も赤くなってんじゃないのか?」
「もう、やめて、お兄ちゃん。私、笑い死ぬから」
俺の腕をペチペチ叩きながら、ナツメは若干過呼吸になっている。そんな中とうとう顔を真っ赤に染め上げたエイプが、動き出した。
ゴリラだけあって、腕は凄く太く、その腕でナツメの顔を殴ろうとした。
「な!、邪魔するな貴様」
ナツメを狙ったその拳をギリギリで俺が受け止める。受け止められると思ってなかったのか。エイプは驚愕したが、すぐに大声で俺を怒鳴る。
だが俺からしてみれば、意味も分からず囲まれ、挙句の果てには妹を殴ろうとした事が許せる事ではなかった。
「よく分からんが、とりあえず眠っとけ」
そう言い放つと同時に、エイプの顔面に思いっきりパンチを繰り出す。エイプは反応する事すらできず直撃して、一発ノックアウトした。
エイプの部下達はあまりの展開についてこれず呆然と立ち尽くしている。
だが、先ほどエイプに報告をしていた。サルがエイプを守るように俺との間に割り込み、キリッ俺を睨みながら武器を構える。
「よくもエイプ様を!貴様なんぞ姫を見つけた他の隊長達が集まれば一瞬で終るんだ」
そのサルの言葉は妙に俺の中で引っかかった。
いつもより多い獣人の数。整えられた装備。軍隊のような統率のされた者たち。俺に接触したこのエイプの目的は、姫、と呼ばれる獣人を俺から奪うため。その姫を探している他の獣人の隊長と呼ばれる物たち。
そこまで考えた時には俺はその場を後にしていた。ナツメが付いてきているのかも確認せず、自宅に向かう。
「...え?」
家に付いた俺はあまりにも衝撃的な光景に立ち尽くすことしか出来なかった。
部下サルA「エイプ様にサルって言うのは禁句なんじゃ」
部下サルB「エイプ様は意外と神経質」
部下サルC「エイプ様のほかに隊長は10人...いや9人か?」