Wデート
これにより、この章は終わりになります。
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「ルリ遅いな」
王都の中心である王城、その付近でルリの事を待っていた。周りを見渡せば、冒険者や商人、観光者の姿も目に入る。場所が場所なので人は尋常じゃないほどいるが、どんな人がいるかを観察するだけで、意外と面白かったりする。
名誉ある戦いが終り数ヶ月が経ち、たまに雪が降るぐらいには、世界は冬になりつつあった。先日いきなり、「この日に、王城付近に来て欲しい」と言われ、何も考えずに了承してしまった。
当日になって、一緒に行けばいいのでは?と思いルリの部屋に行ったら彼女はいなかった。そして仕方なく1人王城付近で、彼女の事を待っている。
「あれ?シオン君?」
「ん?あっ!リティスさんじゃないですか!!」
突然声をかけられて、誰かと思ったら。周りの人ですら魅了する程の美貌の持ち主、リティス・シスネさんだった。
リティス・シスネ。彼女はステラ学園が行う合宿で行く、ズイーゲルの森、奥地。フェータと呼ばれる町に住む精霊族の1人。そしてその町の長の一人娘。誰が見ても美しいと言うであろうモデル体系の持ち主。
将太に一目惚れし、今は王都の将太の家に住んでいるらしい。
「リティスさんが1人で行動してるなんて、珍しいですね」
「そうかな?でも今日は将太様に、ここに来て欲しいって言われて、来てるだけだから、そのうち将太様と合流する予定よ」
そう言いながら、手鏡で身だしなみを整えるリティスさん。将太が愛されているのがよく分かる。
それにしても、俺とリティスさんの状況がよく似ている気がする。お互い待ってる人が来るまで、暇だった事もあり、世間話などをして時間をつぶしていた。
それから少しして、ようやく俺達の待ち人がやって来た。だが何故か、将太とルリは、一緒に王城付近まで来ていて。まるで先に合流していたかのように、楽しげに話しながら、やって来た。
「2人とも、お待たせしたっす」
「ごめんね、シオン。ちょっと遅くなっちゃって」
やって来た、ルリは上目遣いで謝りながら、素早い移動で俺と腕組をした。同じように将太もリティスさんの手を取り恋人繋ぎをしていた。
「それより、何で将太とルリが一緒に居たんだ?」
「将太様、私も知りたい」
俺とリティスさんは、疑問に思った事をお互いの恋人に質問する。俺もリティスさんも、ルリと将太が実は裏で、できている。何て考えは一切持っていないが、どうして、同じ場所に、この4人が集まったのかは知りたい。
「実は、ルリさんから提案があったんすよ」
「今日は、wデートって言われるものをやってみたいな、と思って」
wデート、たしか一般的には、2組のカップルが一緒にデートをするといった、ちょっと特殊なデート方法だったはず。俺は初めての彼女がルリだから、wデートなんてした事はなかったが、まぁルリの考えた事を否定するつもりもないので、俺は全然良いのだが、リティスさんが了承するかどうか、気になった。
だがリティスさんの方も否定するつもりはなく、むしろやった事ないものに興味があるらしく。結局この4人でデートをする事になった。
「それにしても、なんか新鮮だね、この4人で集まって、出かけたりするなんて」
「シオン、本当は嫌だったりした?」
「全然。どんな形であれ、ルリが誘ってくれて嬉しいよ」
素直な感想を言うと、ルリは「えへへ」と、はにかみながら、笑って見せた。その姿に、心拍数が上がらずにはいられなかった。
「なんと言うか、あれっすよね」
「そうですね、シオン君とルリちゃんって、ザ、恋人って感じがします」
俺とルリだけの世界に入りかけてた所、将太とリティスさんの視線で現実に引き戻されて。俺もルリもちょっと恥ずかしくなり顔を赤くしたが、腕組だけは離さない。その後は、他愛のない話をしながら、王都を観光していた。
お昼時、俺とルリ行きつけのちょっとオシャレなカフェで食事をしてる時に、wデートならではの話題があがった。
「そういえば、シオン君とルリちゃんって、どこまで関係が進んでるの?」
「あ、それは僕も気になってたっす」
その質問が来た瞬間、俺もルリも飲み物を噴出してしまった。幸い噴いたといっても少量だったため、誰にも掛からず、少しテーブルを汚してしまったぐらいにおさまった。
「リティスさんもエグイ質問しますね」
「そう?だって2人は付き合ってもう半年以上経つんでしょ?それなら体を交える事だって一回ぐらいあるんじゃないかなと思って」
何食わぬ顔で平然と言っているが、これが精霊族の考えなのかと、俺は驚愕している。まぁたしかに、こういう話ができるのがwデートの醍醐味なのかも知れないが、場所は考えて欲しいと、心の中で思ってしまった
「私達は、キスぐらいはしましたよ、ねぇシオン」
「まぁ、そうだな。そういう将太と、リティスさんはどうなんだ?」
「私達もキスは、するけど...」
「僕達は、一緒に姉さんも住んでるっすからね。なかなかそういった行為ができる環境じゃないっすよ。まぁ、姉さんは「私の事は、気にしないでいいよ~」と言ってるっすけど、流石に気になるっすからね」
俺はちょっとだけ安心した、実は将太たちは、すでに大人の関係まで行ってしまったのかも知れない、と思っていたから。同じような状況なのを聞いて、よかったと思う。
でも、俺はルリと、今の所肉体関係を持つつもりがない。決してもそういう関係になりたくないのではなく、アイラさんに釘を刺されているのも1つの理由だったりする。それの俺達はまだ13歳。まだそういう関係に成るのは、早い気がした。
一方の将太たちは、この世界での成人年齢は一応、到達している。だからそういう関係をもっていても不思議ではなかった。まぁでも将太は、元日本人。そういった所で恥じらいを感じて、なかなか一歩が踏み出せないのだろう。
食事も終え4人で、のんびりしていると、気が付けば日が沈みかけて、夕方になりかけていた。
「今日は、楽しかったすね」
「そうだな、またいつかやりたいな」
「まぁ、私はシオンと一緒なら何でもするよ」
みんなで今日の感想を言い合ってる時に、リティスさんは1人何かを気にしているように、黙っていた。何があったか聞こうとした時、俺達もそれに気が付いた。
「おい、隠れてる奴出て来いよ」
そう言うと、物陰に潜んでいた複数の男達が俺達の前と後ろに現れ、武器を構えていた。人道理が少ないとは思っていたが、どうやらうまく誘導されてしまった事に気が付き、油断しきっていた事を反省する。
「金目の物と女だけ置いてけ、そしたら男は、助けてやる」
「アニキ、久々に上物がつれましたね。イッヒッヒ」
「1人は、子供だけど、もう1人はそこそこ大人びていて、売ったら高値で売れますね。まぁその前においしく頂きましょうか」
いやらしい目つきで、ルリとリティスさんを品定めするように見てくる完全武装の変態ども。俺達も戦闘態勢を取る。
「チッ、これだからガキは、野郎どもやっちまえ」
「将太、リティスさん。後ろは任せる」
「了解っす」
そう言いながら、俺達は背中を合わせる。人数だけで言えば不利だがそんな事は関係ない。目の前から突っ込んでくる奴を捌き、他の人のカバーもできる様にする。だが強さは、圧倒的に俺達の方が強く、直ぐに勝敗は決した。
「くそ、覚えてやがれ」
「ア、アニキ待ってください」
まるで、アニメのセリフのような捨て台詞を吐いて、逃げていった、変態たち。俺達もその場を速めに去って行った。
その後は何事もなく、俺達は家に帰り。事件はあったが最高な一日を過ごす事ができた。
キャロ「シオンにぃ達、幸せそうだわ」
シャロ「羨ましいよね~」