決勝戦
今回で100話になります。読んでくれてる方、本当にありがとうございます。これからも細々と活動していきますのでよろしくお願いします。
「いよいよ、決勝戦です。各学園から選ばれた代表を倒して、残ったのはこの2人。ステラ学園のルリ選手とキャロ選手です」
最後の選手の名前を呼ぶと、会場が沸く。決勝の舞台に整ったこの会場。見なくてもわかる、この最高の対決に、この場にいる全ての人が盛り上がる。
ちなみに3位決定戦の、シャロ対アンリはシャロの圧勝に終って、実況と解説する事がなかった。この時点で1位から3位は、ステラ学園の生徒が独占している。
「シオン君、改めてこの2人の解説をお願いできるかな」
この大会でおそらく、最後になる選手解説を任されて少しばかり緊張する。幸いなのは、2人とも俺の知ってる人物だって事。
「わかりました。まず、キャロ選手についてですが、圧倒的速さと、槍を使う戦闘を得意としてる選手ですね。この大会でも、その速さに付いて行けず、何も出来ず負けた選手もいるぐらいですからね」
「なるほど、キャロ選手はその速さと、ベスト4で見せた、野性の本能にも近い勘が脅威になりそうですね。次のルリ選手はどうかな?」
「ルリ選手は、接近戦、そして魔法の戦闘どちらでもいける。オールラウンダータイプの選手ですね。速さで言えばキャロ選手に劣るかもしれませんが、それは通常の時の話です。〔魔王:覚醒状態〕のルリ選手はステータスでは、キャロ選手を圧倒的してますからね」
「解説ありがとう。さて、選手の準備も整ったようです。新人戦、最後の戦い。どちらかの一方的な戦いになるのか、拮抗した試合になるのか、戦いが始まるまで誰もわかりません!」
キャロとルリも握手をして、お互い距離を取る。さっきまでとは、変わって会場は静かになっていく。これは、嵐の前の静けさって奴だろう。
「では、始め!」
そして今、審判が開始の合図をする。それと同時に両者が一直線に駆ける。両者互いに槍の間合いに入った時、先に攻撃したのはキャロだった。
ルリの胴体を狙った突きは、正確でさらに速い、並みの者では捌く事すらできないだろう。だがその突きを、ルリは身を反らし難なくかわす。そしてキャロの体勢が整う前に横薙ぎを繰り出す。これに対してキャロは咄嗟に槍を地面に刺し。槍を棒跳びの様に駆使してルリの背後を取った。
そして、背後を取ったキャロは、また鋭い突きを繰り出し、ルリの〈防壁〉を破壊しようとする。だがルリは、すぐさま振り向き槍の持つ部分でその突きを受け止めた。
試合が始まってほんの一瞬の攻防だが、両者が一歩も引かず、その激しい攻防に観客全員が見入ってしまう。それぐらい激しい攻防だった。
「流石ルーちゃんだわ、初手で決めるつもりだったのに全て防がれましたわ」
「まだスキルを何も使ってないのに、何言ってるのキャロちゃん」
2人は、短く言葉を交わしてるが、一切攻撃の手を緩めたりはしない。躱し、捌き、攻撃する。戦術などなしの、互いの技のぶつかり合い。だがこうなってしまうと、ある差が勝敗に影響してしまう。
それは、ステータスの差。先程解説したが〔魔王:覚醒状態〕のルリは、キャロのステータスのほぼ全てを圧倒している。だからこそキャロは初手で決めようとしてたわけだけども、それが失敗した今、キャロは少しずつ、ルリの攻撃を捌けなくなっている。
「〈瞬間移動〉」
ルリの攻撃の一瞬の隙をつき、キャロはルリの背後に飛ぶ。そして距離を取り、即座に槍を構え直す。ルリは攻撃してこないのを察していたのか、ゆっくりと振り返る。
「やっぱり、ルーちゃん相手に長期戦は無理だわ」
「じゃあ、降参してくれる?」
「わかってて、聞いてるわよね?私が降参しないって」
「うん、キャロちゃんはそんな事しないって、思ってるよ」
「ルーちゃん相手に長期戦は無理だから、次の一撃で決めるね」
静まり返った会場で、キャロの言葉は観客全員に聞こえている。強がりにも聞こえるが、その目を見れば強がりじゃない事はわかる。キャロは、槍を右腕一本で持ち、左腕をルリに向かって突き出した。そして瞬時に魔力がキャロに集まっていくのがわかる。ここに来て魔法を使うとは思ってもいなかった。
だがその魔法は、普通の魔法じゃない。俺がよく使っていた魔法。その魔法に気付いたルリは、発動を阻止しようと動く、だが
「遅いよルーちゃん〈光の審判〉!」
「しまっ!!」
会場が光に包まれる。だが〈防壁〉の壊れる音は、していない。なら一体何を消滅させたのか。あるいは不発に終ったのか。いろんな事に思考を巡らせている間に、光が消えていく。その一瞬で俺が見たのはルリの背後を取り、突きを繰り出しているキャロの姿だった。そして
パリン...
今日何回も聞いた、〈防壁〉の壊れる音。この戦いの勝者はキャロだった。
〈防壁〉が壊された事に気が付き、膝を突くルリ。
右腕を上げ、自分が勝者である事を証明しようとするキャロ。だがキャロの顔色は少し悪く、息も途切れ途切れ、慢心創意なのがわかる。
この光景を、見ている全ての観客は、歓声と拍手を惜しまなかった。それぐらい最高な試合だったのは、間違いない。
「あぁ、負けちゃったな。まさか最後に〈光の審判〉を使ってくるなんて」
「このときの為に、準備してきたのよ。ありがとうルーちゃん」
ルリは、立ち上がりながらキャロの握手を求める。キャロは満面の笑みを浮かべながら、握手に応じた。
「決まりました、決勝戦。勝ったのはステラ学園、キャロ選手だぁ!!」
『凄かったぞ!!』
『2人とも最高の戦いだった!』
こうして、名誉ある戦い新人戦はキャロの優勝で幕を閉じるのだった。
シオン「まさか、俺の元十八番の魔法を使うなんてな」
ルリ「あの魔法で、私のスキルが消されたんだけど」
キャロ「あの魔法を連発できるシオンにぃは、おかしい」
シャロ「スキルを一時的に消すなんて、魔法は本当に興味深いね~」