Intercept_03
Intercept_03
夜の平原。星の明るいその下にて。
「……、……」
……わーわーぎゃーぎゃー書き損じた! というクダリは一通り省いて、
「――できっ、できたぁ!!」
ようやく、エイルのスクロールが完成したらしい。
「うおっしゃリベット! お終いだ! 切り上げるぞ!」
「(呪呪呪呪)」
「(こわ)」
ちなみに、防衛線の間も彼女の呪詛が途切れることはなかった。何ならむしろ気持ち「呪」が一個増えたまであるが、それは蛇足として……。
「じゃあっ、俺がこいつら引っ張るから、お前らはその間に何とか離脱しろ!」
「よっしゃ戦略的撤退ですね! 肩が凝ったよう!」
デスクワーク(?)から解放されたエイルは妙に開放的な様子だ。
……ひとまずはこの混戦状態に、少しでも円滑な離脱の助けになるなら願ってもないコンディションだが、
「(いあ、いあ、くとぅるふ――)」
「もうこの際はっきり言うけどさっきからお前こえぇよ! ほら離脱しろ!」
問題はリベットである。怨嗟こじらせて俺の世界の異世界の神を呼び出すとか世界経由し過ぎてちょっとついていけないんだけど、
……と、思ったのだが。
「ハルくん? ねえ、ハルくん」
「な、なんですか……?」
「私知ってるのよ? アイツら、戦意を喪失した人間には攻撃をしないの」
「……え? マジ? なんで?」
「――……任せて」
などとリベットが、……俺を抑えてエイルに接近していった。
「(ってうわあこれ俺が一人で連中捌かなきゃいけないの!?)」
「エイル、ねえ、エイル」
「え? な、なんでしょうか……?(なんで急にこんな怒ってるの?)」
「覚えてるわよね? さっきあなたが死ぬのを救済だと思った時に、アイツらが攻撃をやめたこと」
「(怖いし違う! 戦意喪失と救済は全然違うと思う俺!)」
「え、やっ、やです! そうして狙いから外れて戦線離脱とか公国騎士の名が廃っちゃう!」
「(テメエはテメエでまだそれ言ってんのかッ!)」
「いいえ、いいえ違うの。聞いてエイル?」
「な、なんですか? 何を言われても私は……っ」
「これはそう、――戦略的寝たフリなのよ?(暗黒微笑)」
「なるほど合点! ばたんきゅぅ!」
ということで、躊躇もなくその場に卒倒するエイル。
すると確かに、……狂信者の群れは彼女が見えていないかのように振舞いだした。
「おお、本当だった」
「――ああ、やった。……やった! やったあ! 私は勝った! 公国騎士の誇りとかいうわっけ分かんねえ概念をようやくぶち殺してやった! ははは、はははは、きゃははははははははははははははッ!(狂)」
「おー……」
更に、リベットがそんな悲鳴を上げた途端、狂信者の目にはリベットも映らなくなったようである。……アレは、戦意がなさげと見なされたのか連中の身内とみなされたのかどっちだろうか。
と言うのは、今はいい。
俺は、
「――――。」
……さらに熾烈化する狂信者の攻撃を、それでもギリギリのところで避け続け、同時に向こう二人との距離を取る。
傷こそ受けることはないが、連中に捕まってそのまま重なられたりでもしたら、緊急回避のため無駄に自爆スクロールを消費する羽目になる。ゆえに、捌くのに手を抜くことはできなかった。
「――。」
ようやく、
――緊張感が出てきたのではなかろうか。
俺は、二人が無事に黒幕探しへと、……つまりは露骨に狂信者を吐き出し続ける森の方へと走り出したのを見てから、敵群を引き付けつつ逆方向への「戦略的撤退」を開始する。
「……、さあ、頑張ろ」
いやなにせ、爆竜という名前もいい加減食傷である。
それこそ、そう。――今しがた遂に、夜の匂いが途切れる兆しを見せ始めたほどに、
これは、長い戦いであったらしい。




