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楽園の王に告ぐ.  作者: sajho
第三章『英雄誕生前夜』
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本日より、本作第三章『英雄誕生前夜』を更新いたします。

次回第二話は明日の午前1時ごろに。それ以降はこれまで通り3の倍数日の投稿です。よろしくお願いいたします。



Intercept_01


 春の夜を、星々が暴く。

 透明度の高い夜空は、黒と言うよりも藍色に近い。

 虫鳴りと風が唯一の音だ。それは、

 ――とある静謐の夜の、死んだ「国」での光景である。


『空を、見てください!』


 エイリィン・トーラスライトが、俺にまずそう告げる。

 受話器から聞こえる声は、不思議なノイズを介在させていた。

 俺の視線の先、空には、

 ――「大陸」がいた。


 爆竜パシヴェト。

 この世界の生態系における頂点、竜種の一角。ソレは飛行など在り得ない超重量で以って、しかし空気を圧殺する耳鳴りのような音を立てながら夜を飛ぶ。


『ハル! どうか、どうかソレを、倒してください!』


 エイリィン・トーラスライトは、

 焦燥を隠すこともせず、そう言った。


 </break..>



 私ことエイリィン・トーラスライトは、受話器スクロールに向かってそう叫ぶ。

 場所は、先ほどリベットに連れられて辿り着いた崖の上である。ここからは未だ、夜と、国の遺灰もえのこりと、そしてあの爆竜の威容が見える。

 しかし私は、()()()()()()()()()()()()()()

『どうして焦ってるんだ。俺はここにいるぞ、合流しないのか?』

「出来ません。残念ですが」

 そう、彼に返した。

「エイル、――()()()()()()()()()()()()()()()

「……、……」

 同行していた冒険者、リベット・アルソンが言う。しかし、彼女の持つような冒険者レンジャーとしての素養などなくとも、濃密な人の視線は手に取るようにわかる。

 べたり、べたりと、

 視線それが私の身体を這う。

「ハル、西()()()()()()。あなたはあなたで、最短距離で爆竜を追跡してください」

『何があった?』

「敵襲です。あなたまで足止めをさせるわけにはいかない」

『……。』

「エイルッ!」

 森が揺れる。

 その胎内から吐き出されたのは()()()()()だ。空気の壁を裂く甲高い音が響き、私たちに殺到する。私はそれにあたり、

 まずは受話器スクロールを握りつぶした。

武器生成ウォール・シフト!」

 スキル、武器生成。外魔力オドを成形し武器を成すスキルである。空気中の水分が結露しダイヤモンドダストとなるように、私たちの前に「武器の壁」が生成され、それらが放たれた矢を弾く。

 静止。

 ただ一瞬だけ、空気が明確に静止する。森の奥の粘つく視線と、断崖絶壁に立つ私たち、彼我の距離感を明確に断絶する「武器の壁」が、私たちに冷静さを取り戻させる。

「……エイル、どうする?」

 リベットが聞き、

「決まってる、――全て無力化です」

 私は、そう答えた。

「彼らの素性は、英雄の国の壊滅か、爆竜の襲撃か、どちらかには縁があると考えるのが自然でしょう?」

 ……第二射は来ない。

 敵が引いたというわけではあるまい。視線はいまだ、私の身体を這いずり回っている。

 私には、この手の視線に心当たりがあった。

()()()()()()()。私だって公国騎士ですからね、この手合いの処理は何度だってしてきた」

「なにっ? 敵の正体が分かるの?」

「ええ、恐らくは」

 言って私は、目前の武器の壁から一つを手に取る。

 選んだのは反りのない細身の長大剣。教会の十字架を逆さにしたような見た目のそれを、私は横倒しに構えて、


「――爆竜の信仰者ども、『熾天の杜』。竜種という圧倒的強者に酩酊した、質の悪いテロリストですよ」


 そして、投げる。

 弧を描いて森へ吸い込まれたそれが、まるで鎌が草を刈るように森を蹂躙する!



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