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「ソレ」は、ふと「思う」。
昨日は、何人殺したか。
その前はどうか。更に、その前の日は?
『……、……』
「ソレ」の高機能な「思考」が、死亡確認を行った人数を正確に計上する。
遡り、遡って、
――或る日だけは、ゼロと言う答えが返る。
その日は、「ソレ」が初めて命令を失った日であった。「ソレ」は、春日向の最中にて。
どこにも誰もいないから、当然のように、「風を追いかけることにした」。
『……、……』
それが何故かは不明である。
あの一瞬の瑞々しい「自由」は、今はもう遥か彼方の出来事のようでさえある。
なにせ、
『……、……』
今また、「人」が目前に現れた。
ならば殺さなければならない。
命令はなく、意味はない。意図も興味も義務感さえも。
それでもこの行為は、「ソレ」における唯一の生態であった。