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楽園の王に告ぐ.  作者: sajho
第四章『夏の夜の(ry』
101/430

A-6



 まず初めに確認するが、()()()()()()()()()()()()()


 そもそも彼女ら「北の魔王」の目的は「この犯行を『サクラダカイ』なる組織に擦り付け、それでもってバスコ共和国の三点拮抗を能動的に崩す」ことにある。

 そして彼らがそのような事件を起こすに至った理由としてあるのが、「北の魔王が魔族であること」と、そして翻っては、「魔族は人類の敵」であり、これを理由に「バスコ共和国のヒト種族二つが手を組むこと」を阻止するためである。

 それはつまり、逆に言えば、

 ――「この犯行が『北の魔王』の犯行であると発覚すれば、最も恐れていたヒト種二勢力の結託が起こる」と、そう言った帰結を辿るわけである。

 なにせこの案件で「北の魔王」が用意したのは、「サクラダカイが人類と決別しうる」だけのヘイトだ。これをそのまま「北の魔王」が肩代わりしたとすれば、その時はつまりそのまま、「北の魔王が人類と決別」するわけだ。

 さてと、ここまでを踏まえて考えよう。

『北の魔王』はこの場合、どうあっても生存者を残すわけにはいかない。

 なにせ飛空艇に乗っている乗客スタッフ全員が、この案件の黒幕が『北の魔王』であることを知っている。一人でも打ち漏らせば、その時点で『北の魔王』は人類に対し天涯孤独となる。ゆえに、「彼女」はここでどうあっても飛空艇を撃ち落とす必要がある。

 そして他方、「彼女」は()()()()()()()()()()()()()()()。俺がいれば飛空艇は撃ち落とせず、また俺自身が「この犯行の黒幕」を暴露する展開だって確実だ。

 と、ここまでが大前提である。

 ではここで、――「俺の勝利が既に確定している」理由についても確認すべきだろう。


「……。」


 先に触れたように、彼女は、彼女の持つ背景で以って俺を決して逃がすことが出来ず、ゆえにこの場であちらが逃げの一手を打つことはない。

 彼女は確実に()()()()()()()()()、そして、

「……、……」

 ――()()()()()()()()()()()()()

 これが、「俺の勝利の確定」についての根拠である。

 さて、




「……、」

「……、」




 状況は拮抗。

 しかしながらそれは、ただすらに彼女の焦燥を呷るだけの時間に違いない。今こうしている間にもドテッ腹(メインホール)に風穴を開けた飛空艇がいつ不時着の軌道を取るか分からず、仮に彼女が飛空艇を見失った場合、その時点で『北の魔王』は詰みである。

 彼女としては、ここで、無理にでも俺の一手を誘って、それで奪い取った「後の先」を起点に俺を圧倒する。そういう手はずだろう。

 ゆえに、

「……、……」

 彼女が、俺の目的を「飛空艇が不時着するまでの時間稼ぎ」だと見た場合、

 彼女は確実に、不用意な一手を打つ。

 ――()()()()()()()()()


「……くそっ!」


 拮抗と言う名の停滞に煮えを切らした「彼女」が、まずの一手で矢を放つ。しかしそれは、視覚演算に特化した俺にとってあまりにも遅い。同時に放たれた三つの矢を、俺はただすら体軸を逸らすだけで一手に避ける。

「ッ!!?」

 その表情が苦渋に滲むのさえ「遅い」。

 彼我の距離は、俺の全力の歩幅十五個分だ。それを詰めるのに、しかし俺の身体性能はあまりにも速度に失していて、……ゆえに、

「(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 一歩を踏み、


「――――ッ!!」


 ――二歩目の加速が地を穿つ。

 十五歩分の距離を三歩で踏み越えて、そして「彼女」の懐に至る。

「!?」

「……、……」

 俺はただ単に前へ突貫しただけだ。しかし「彼女」ははっきりと俺を見失った。俺は今「彼女」の視線が彷徨うのを直接確認する。そして、

()()()()()()()()()()()

「貴様ッ!!」

 俺の一手で「彼女」の身体が直上へと打ちあがる。それを確認した俺は、更にそのままその場で「手持ちのスクロール幾つか」を周囲へとばら撒く。


「――――ッ!」


「彼女」は、上昇から落下までをただすら重力に捕らえられたままだ。

 打ちあがり、上昇推力が消失し、そして落ちる。

 その内に何やら上空で、「彼女」はこちらに弓を向けるが、そんなものはただ避ければいい。俺は、直上から振る六つの流星を三歩で避けて、そして「彼女」の墜落を待つ。

 他方の「彼女」は、……何やら俺が六矢の全てを避けたことに驚愕をしているようだった。そのまま表情をゆがませて空中で反転、着地に向けて体制を整えたのが「見える」。

 ただし、問題のようなものは何もない。

 俺は、「彼女」の、……体勢を立て直し、そして「着地の一歩」を弾き出さんと力を弛める脚が地上に接するその直前に「撒き散らしたスクロール」を起動して、――そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「!? !!!??」


 それは、ちょうどフライボールをキャッチするような感覚であった。当然のように俺は「彼女」の身体を捕まえて、他方の「彼女」は未だ「自分が掴まれたことさえも理解せずに」()()()()()()()()

「……、……」

『起動』を唱える。

 そうすると、「彼女」の着地地点から周囲の円状に、刹那、()()()()()()()()()()()()()。――そしてその直後、その外円で赤炎が爆ぜる。それが、浮き上がる「黒曜石」を滅茶苦茶に弾き撃つ!




「……、……」

「ぐッ……おぉオオ!!???」




 周囲の「致命的な状況」に今更気づき、

 そして「彼女」は、ただ、身体を固めて衝撃を待つことにしたようだ。弾け飛ぶ黒曜が、覚悟した通りに彼女の身体を、そして俺自身を打ち据える。

「    」

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。それさえも俺にはスローモーションに見える。

 ゆえに彼女の痛痒気な表情が、俺にはどうも退屈だ。()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……、……」

 弾け飛ぶ黒曜の内には、実のところ一定量の起爆石を紛れ込ませてあった。元来の意図としては撒き散らされた起爆石これを草むらに紛れ込ませ地雷として運用するつもりであったのだが、

 ……まあいい、と俺は断じて、

 そして虚空を舞う起爆石も、今ここで起動させる。



「……。」

「――――ッ!??」



 俺に掴み上げられ身動きもとれぬ「彼女」の、

 その表情は果たしてどのようであったか。

 それは結局、判然とはしないままであった。――しないままであってそのまま、視界の全てが更なる爆炎に蹂躙される。

 俺と彼女はともに「飛来する黒曜の欠片」に撃たれ、そして爆炎に灼かれて、赤く照り上がるその「地獄の帳」へと――、




「……短いな、簡単すぎる。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「くっそぉ!!」




 そうとも。

 これを見るがいい。「彼女」は「俺」に絞め挙げられていて、そして「俺」は、「彼女」の首を絞め挙げている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ――今、

 巫山戯た密度の極光が、俺たちを覆い潰した!





※本日午後六時、短いですがもう一話投稿いたします。

 よろしくお願いいたします。

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