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少年は前を向く。

作者: 設楽 夕

涙を浮かべながら絶望している顔をし、拳銃を頭に突きつける少年は言った。


「なんでこうなってしまったのだろう。」


 周りを見てみると、其処には所々から血が流れている知人や家族、恋人がそこに倒れていた。

理解が追い付かないまま、気づいたらその中心にいた少年は、涙を流しながら小さな声で言う。

「僕は、なんてことをしてしまったのだろうか」

足の力が抜けその場にへたり込んでしまう。そして襲ってくるのは、吐き気と憎悪。

意識がなかったとはいえ、ハッとした時には既に、この現状が出来上がっていた。片手に拳銃を持ちながら……。

弾を確認してみると、残弾は2発。では、この2発で一体何をしろというのだろう。暫く悩んでいると、声が聞こえた。

「何をしているんだい⁇。僕は見ていたよ。君が笑いながらこの惨状を作っているのを……。」

顔を上げると、其処には自分に似ている少年が微笑みながら立っていた。

「なら教えてくれ、僕は何故こんな酷い事をしてしまったのだろうか⁇。皆愛していたはずなのに。」

そう目の前にいる少年に問うと、相手は酷い顔をしながらこう言った。


「愛していた⁇。馬鹿なことを言うな。君はその人達を愛していた筈がないだろう⁇。」

「愛しされている自分を愛していただけだ。君がその人達を逆に憎んでいただろう⁇」


そう言われると、納得がいくような気がした。

確かに、周りから「好き」と言われるだけで自分が満たされているような気がした。

そうでもしていないと、自分の存在価値が魅入だせなかったと胸のうちには感じていた。だからこそ、それに答えられる努力をしていた。


 期待の眼差しを向けられると、自分はまだそこに居てもいいのだと思うことができた。

でもそれに答えられないと、失望した目を向ける。この理不尽な人たちが憎かったのだろう。

なら自分は、どうしたらいいのだと考えたこともあった。だがしかし、その考えに答えが導き出せなかった。

では何故答えが得られなかったのか、それは自ら自分の首を絞め続けた結果他人に合わせるという手段を取ったからである。


 自分が気づいたら分からなくなっていた。何処の誰なのかも……。

探しても探しても見つからないわけだ。だって自分の意志なんてとっくに見つからないでいた。

どれが自分の意志なのかも分からないまま、ずっと生活をしてきてしまったから感覚が鈍ってしまっていた。

そして空似の少年は、言った。


「君は周りの人を言い訳に自分を捨てたんだ。君は生きていて楽しいかい⁇」

「君は、一体誰なんだい⁇」


そう言われた時にふと、思った。全部が全部自分であり、他人なのでは⁇と

そしてその他人の自分が、自分である証明になるのではないだろうかと。

だから少年は立ち上がった。手に持っていた拳銃を捨てて……。そして、こういった。


「僕は僕だ。だから僕は自分拾いの旅に出てくるよ。」


そう口から出たら、周りに倒れていた人たちが消え、自らの周りを囲むようにその人達が立っている。


「おめでとう。これからが本番だよ」


そう言われ、拍手と共にまた僕は静かに眠りについた。

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