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#9 オタクと魔法少女 優柔不断とツンデレ

 補給を終えて、再び王国の上空に戻ってきて3日が経っていた。


 私は今、王国の上空を飛んでいる。


 モイラ少尉とマデリーンさんを乗せて、引き続き詳細な地図データを取得するための任務を遂行しているところだ。本日予定していた分の地図データを取り終えて帰還途中、マデリーンさんの希望で、あの「魔女の里」に向かっている。


 なんだかんだと言いながらも、あそこに残る2人の魔女のことが気になるようだ。前回と同じ草むらの辺りに、哨戒機を着陸させた。


 しばらく歩くと魔女の里に着く。だが、誰かがいる気配がしない。2人ともどこかに出かけているのか、それともまさか……


「あ、マデリーン!」


 後ろから呼ぶ声がする。小さな魔女、ロサさんが現れた。


「ロサ!サリアンナのやつはどうしてるの!?」


 マデリーンさんは、ロサさんに尋ねる。するとロサさん、泣きそうな顔をしながら、マデリーンさんの手を握り締める。


「さ、サリアンナが……サリアンナが……」

「なによ、サリアンナがどうしたの!?」

「き、昨日から額がすごく熱くて……」


 それを聞いたマデリーンさん、血相を変えてロサさんに迫る。


「ちょっと!それなにかの病気じゃないの!サリアンナは今、どこにいるの!?」

「こ、こっち……」


 サリアンナさんに何か起きているようだ。ロサさんの案内で、サリアンナさんのいる場所に向かう。


 小屋の中で、横になっているサリアンナさんがいた。マデリーンさんが駆け寄る。


「おい!サリアンナ!生きてるの!?」


 こちらをちらっと見るサリアンナさん。何か言いたそうだが、苦しくて声が出ないらしい。見るからにかなりやばそうだ。


 このままじゃまずい。一目見て重症と分かる。このまま放置すれば多分、命はない。そう察した我々は、サリアンナさんを駆逐艦に連れて行くことにする。私がサリアンナさんを背負い、哨戒機まで連れて行く。モイラ少尉はスマホで駆逐艦に連絡を入れる。


「モイラ少尉です!今、地上にて傷病者確保!高熱を出し、意識は混とんとしている模様!至急、駆逐艦6707号艦への受け入れ許可を要請します!」


 哨戒機に着くころに、駆逐艦6707号艦より受け入れ許可の連絡がきた。サリアンナさんを2つの座席を使い横に寝かせる。ロサさんが、サリアンナさんに付き添う。


「哨戒機1番機、直ちに発進する!」


 私は一声かけた後に、私は哨戒機のエンジンを始動する。ヒィーンという音と共に、ゆっくりと浮き始める哨戒機。


「な、なんです……これは……」


 皆を乗せたまま空に浮かぶこの哨戒機に驚くロサさん。自力以外で空を飛ぶこの乗り物に、おどおどと周りを見ている。


 だが、そんなロサさんにかまってはいられない。一刻を争う状況ゆえに、すぐに駆逐艦へ戻らねばならない。この哨戒機の最大速力、時速1000キロで飛行する。


「タコヤキよりクレープ!アプローチに入った!緊急着艦する!」

「クレープよりタコヤキ、了解、着艦を許可!」


 ハッチが開き、出てきたアームに向かって減速もせずに飛び込む。アームは無造作にこの哨戒機を掴む。あまりにラフな着艦をしたため、慣性制御が効くこの機内にも衝撃が伝わってくる。


 ハッチが閉まり、格納庫内の気圧が上昇し終えると同時に、奥の扉が開いた。出入り口から担架を持った人と医師が大急ぎで入ってくる。私は哨戒機のハッチを開く。


「医療班です!傷病人はどちらですか!?」

「こっちです!お願いします!」


 モイラ少尉がサリアンナさんを指す。サリアンナさんはすぐに担架に乗せられ、医務室へと運ばれた。


 サリアンナさんのことも心配だが、一体どこに連れてこられたのか分からないロサさんは、混乱状態だ。空高く飛んでいたはずなのに、気づけば建物の中にいる。この大いなる矛盾に、全く理解が追いついていない。


「ロサ!サリアンナのところに行くわよ!」


 そんなロサさんの手を引いて、マデリーンさんも医務室に向かう。私もついて行った。


「風邪ですな。薬を飲んで少し寝れば、よくなるでしょう。」


 さほど深刻でもない病名を、医者から告げられた。熱は高いが、ただの風邪だという。


「なんだ……全く、風邪くらいで何よ!だらしないわね!」


 憤慨するマデリーンさん。だが、医者は続けていう。


「風邪だからといって侮ってはダメですよ。失礼だが、彼女は栄養状態があまりよろしくない。このまま放置していれば、死に至る危険もあったのです。ここに連れてきたのは、正しい判断だと私は思うよ。」


 正直言って、あの魔女の里はあまりいい環境ではない。住人は2人しかおらず、食糧事情も推して知るべしだ。医者の言う通り、ここに来て幸いだろうと思う。


 ベッドの上で眠るサリアンナさんを見守るロサさん。彼女自身、ここがどういうところなのか全く分かっていないようだが、サリアンナさんのことを心配するあまり、周りのことに構っていられる心境ではなさそうだ。


「あの、ロサさん?大丈夫ですか?ちょっと休んだほうがいいですよ。私が代わりに見てますから。」


 私がそう言うと、ロサさんは軽くうなずき、医務室の外に出た。


 そこに、どういうわけかロレンソ先輩が現れた。なぜロレンソ先輩がこんなところに……私が尋ねる。


「あれ?先輩、どうしたんです、こんなところで。」

「どうしたも何もないだろ。お前が緊急着艦をやらかしたおかげで、哨戒機があちこち壊れてるんだよ。いくつも鋲が飛んでるし、後端翼は歪んでるし、おかげで修理してたら手を切ったんだよ。」

「ああ、それはご苦労様です……」


 私もあんな着艦を初めてやった。まさか、そこまで哨戒機にダメージを与えていたとは思わなかった。ロレンソ先輩にとんだ迷惑をかけていたようだ。


「そういえばお前、まだ帰還報告していないだろう。艦長が呼んでいたぞ。」

「あ、しまった。忘れてた。」

「ここは私が代わるから、お前はまず艦長のところへ行ってこい。」


 ロレンソ先輩にサリアンナさんの看病を交代してもらい、急いで艦長の元に行く。


「遅かったな。」


 艦長室にて、艦長が憮然とした表情で出迎えてくれた。このプレッシャーに耐えつつ、私は淡々と状況報告をする。


「……医師の診断によれば、ただの風邪だそうですが、栄養状態が良くないため、放置していれば風邪とはいえ致命傷になりかねないとのことです。」

「そんなに栄養状態は悪いのか?」

「はい、何せ人里離れたところで少人数による自給自足生活。周囲は食料が豊富とはとても言いがたい場所のため、栄養状態が悪くて当然だと思われます。」

「うーん、そうか。では、我が艦で保護する必要があるな。」

「そうですね。それが適切だと思います。」

「了解した。その2人の滞在を許可する。主計科へ行って、2人の部屋の鍵をもらってこい。」

「はっ!では、ダニエル中尉、下がります!」


 今日は忙しい。1日飛んだ上に、サリアンナさんを背負って歩いた上に看病、報告……さらには2人の居住場所の確保までしなくてはならない。


 主計科へ向かっていると、マデリーンさんに出会った。この魔女も主計科の窓口に来ていた。一体、何をしているのか?


「あれ、マデリーンさん。こんなところで何をしてるの?」

「ああ、サリアンナとロサの服をもらえないか聞いてたのよ。あの2人の服、お世辞にも清潔とはいえないから、また病気になっちゃうんじゃないかって思ってね。」

「そうなんだ。」

「でも、サリアンナに合う大きさの服はあるんだけど、ロサがねぇ……あの娘ちっちゃいから、ちょうどいいのがなさそうなの。」


 ああ、言われてみればロサさん、ちょっと大きめの子供ほどのサイズ。あの人にあう軍服があるとは思えない。


 元々女性士官の少ない艦だから、女性向けの服はあまり多くのサイズの服を置いていないようだ。この艦で一番背が低い女性はモイラ少尉。だが、そのモイラ少尉でもロサさんよりも背は高い。


 いずれ、服のことはなんとかしよう。私は艦長の許可を得たことを伝え、2人の部屋の鍵を受け取る。それを持って医務室へと戻ろうとしたら、前からサリアンナさんとロレンソ先輩が現れた。


「ちょっと!いい加減その食堂とやらに着かないの!結構歩いたわよ!」

「いや、もう目の前だって……ああ、着いた、ここですよ。」

「何よここ!食べ物なんてないじゃない!」

「いや、注文しないと出てこないんだってば。」

「じゃあ今すぐ注文してよ!こっちはお腹空いてんのよ!」


 すごい剣幕で叫ぶサリアンナさん。先ほど駐車した薬が効いてきたおかげか、どうやら元気になったようだが、途端にロレンソ先輩に食ってかかっている。


「どうしたんですか?ロレンソ先輩。」

「ああ、ダニエル中尉。いや、薬が効いて熱が下がって動けるようになったら、お腹が空いたというので食堂に連れて行くことになったんだ。医者からも栄養をつけたほうがいいって言われてね。」

「……いや、それは分かるんですけど、なんだって先輩が怒鳴られてるのかなあって……」

「さあ……私も聞きたいくらいだよ、ほんと。」

「何ごちゃごちゃ言ってるの!?食べ物は!」

「ああ、はいはい、ここで注文します。何がいいですか?」

「そんなこと急に言われたって、分かんないわよ!」

「ええーっ!?分からないって言われても……困ったな。」

「じゃあ、サリアンナ!私が選んであげるわ!あんたはこれでも食べなさい!」

「はあ!?マデリーン、何あんた勝手に仕切ってるのよ!」


 わめき散らすサリアンナさんをよそに、マデリーンさんはハンバーグを選ぶ。サリアンナさんはわめきながら、ロレンソ先輩に連れられて奥のカウンターに行く。


「そうだ、ロレンソ先輩。サリアンナさんの部屋の鍵をもらったんです。お任せしちゃっていいですか?」

「ああ、いいよ。彼女をこの部屋に連れていけばいいんだね。」

「はい、お願いします。」


 私はロレンソ先輩に、サリアンナさんの部屋の鍵を渡す。そして、私とマデリーンさんは食堂をあとにする。


 エレベーターへと向かう私とマデリーンさん。そこでマデリーンさんが、私に尋ねた。


「ところでさ、ダニエル。」

「なに。」

「ロサって、どこにいるの?」


 ……あれ?そういえばロサさん、マデリーンさんと一緒じゃないな。どこに行ったんだ?


 その時、私は次第に血の気が引くのを感じる。しまった、ロサさん、この艦内に不慣れなのに、私はそのままどこかに行かせてしまった。私がサリアンナさんの看病をロサさんと代わって、かれこれ1時間以上経っている。どこにいるんだ、ロサさんは。


 私とマデリーンさんは周囲の人に聞いて回る。背が低い人だから、非常に目立つ。すぐに見つかるだろうと思って聞き回ってみたが、まるで目撃情報が得られない。


 どこかおかしなところに迷い込んだか?機関室や備品庫など、死角になりそうなところも探してみたが、一向に見つからない。


 1時間ほど探したところで、ある有力な情報を得た。だがそれは、さらに私を不安へと駆り立てる情報だった。


 なんと、あのアルベルト少尉と一緒に、食堂にいたというのだ。そしてその後、2人でどこかへと歩いて行ったそうだ。


 まずい。よりによって、あのアルベルト少尉と一緒だという。嫌な予感がする。もしかして、大変なことになっているのではないか?


 以前、彼のマデリーンさんを見る目に底知れぬ恐怖を覚えたことがあったが、そんなやつがロサさんを連れ去ったというのだ。不安を覚えない方がおかしい。


 私とマデリーンさんは急いでアルベルト少尉の部屋に向かう。部屋に着いて、私はドアベルを鳴らす。


 すぐにドアが開いた。そこにいたのはアルベルト少尉と、ロサさんだった。


「あれ?ダニエル中尉。どうしたんですか?」

「いや、あの、ロサさんを探していたんだけど……なんでお前、ロサさんと一緒なの?」

「通路で迷ってたんですよ。それで声をかけたら、お腹を空かせているというので、食堂に連れて行ったんです。」


 それがどういう過程を経て、お前の部屋にロサさんがいることになるのか?


 いや、よく見るとロサさんの服が変わっている。ピンク色の、妙に派手な装飾の施された服。これはもしかして……「魔法少女」の服!?


 だが、ロサさんを見るとニコニコと笑顔を振りまいている。極度の人見知りで、一度会った私ともまだ会話を交わしたことのないロサさん。それが初対面のアルベルト少尉のそばにいながら、不快な思いをした形跡を感じられない。一体どういうことなのか?


 アルベルト少尉に話を聞いた。アルベルト少尉によると、2時間ほど前に通路でロサさんがあたふたしているところを見つけた。声をかけると、泣きそうな顔をしていた。あまり栄養状態がいいとは言い難い外観のロサさん。それで、どうやらお腹を空かしているんじゃないかと思い尋ねる。


 するとロサさんは首を縦に振ったので、そのまま食堂に連れて行った。ビーフシチューを食べたそうだが、これが相当気に入ったようで、あっという間に食べてしまったそうだ。


 そのまま部屋に戻ろうとすると、アルベルト少尉の服の裾を掴んで離さない。そこで部屋に連れて行ったそうだ。


 で、何をしたのかといえば、先日の戦艦の街に立ち寄った際に入手したばかりの魔法少女シリーズのアニメをテレビに映して観ていた。するとロサさん、今度はそのアニメに興味を抱く。


 で、ロサさんの格好を見ると、随分と汚い服を着ている。そこでアルベルト少尉は、なぜか持っていた魔法少女の服をロサさんに渡す。で、それを着てご満悦なところに、我々が現れたそうだ。


「マデリーン!この人すごいよ!美味しいご飯を出してくれたり、見たこともない動く絵を見せてくれたり。そしてこんな綺麗な服まで持ってるのよ!まるで、魔法のようだわ!」


 別に魔法でもなんでもない。ただ彼は食堂に行き、自身の趣味を全うしただけだ。それがたまたまロサさんの心をとらえてしまった。


 それにしても、あの無口なロサさんがよく喋る。マデリーンさんとさえたどたどしく話していたロサさんが、流ちょうに話している。まさかと思うが、この服の影響か?


 それにしても、魔法少女の格好をした魔女、ロサさん。ロサさんがどれほどの力を持った魔女かは知らないが、魔女には違いない。本物の魔女が、魔法少女の格好をしている。思えば思うほど、頭がくらくらとしてくる。


 それ以上に驚いたのは、アルベルト少尉が意外にも紳士な対応を取っていたことだ。てっきりやばいやつだと思っていたが、この通りロサさんをちゃんと保護していた。偏見をもって彼を見ていたことは、誠に申し訳ないと感じる。


「あ、そうだ!サリアンナはどうなったの!?」


 ロサさんが私に尋ねる。


「ああ、ロレンソ先輩をけしかけて、食堂でご飯食べてます。熱も下がって、すっかり元気になってますよ。」


 それを聞いてロサさんはほっと胸をなで下ろす。そして、アルベルト少尉に話しかけて、魔法少女の続きが見たいと言い出した。それに応えるアルベルト少尉。


 まあ、これなら安心だろう。ロサさんもアルベルト少尉のことが気に入ったようだし、そのままロサさんをアルベルト少尉に任せることにした。部屋のキーをアルベルト少尉に渡す。そして、私とマデリーンさんはアルベルト少尉の部屋を出た。


 人は見かけによらない。しかし、あのアルベルト少尉を頼りにする魔女があらわれるなんて、想像すらしなかった。


 ところが翌朝、さらに驚愕の事実を、私とマデリーンさんは目の当たりにする。


 それは朝食に向かうため、2人で部屋を出た時のことだ。


 ロレンソ先輩の部屋から、誰かが出てくるのが見えた。


 軍服を着ていたが、それはロレンソ先輩ではない。どう見てもサリアンナさんだ。昨日、汚れた服の代わりにマデリーンさんが主計科でもらってきた、あの服だった。


「サリアンナ!なにしてるの!」


 空中に浮かぶことができる魔女だが、空気を読むという力がこれっぱかしも存在しないマデリーンさんは、こっそり部屋を出ようとするサリアンナさんに向かって叫ぶ。マデリーンさんの声を聞いて、びくっと驚き振り向くサリアンナさん。


「なななななんなのよ!あんたは!」

「何なのとは何なの!私が聞きたいくらいよ!あんたここで、何してるの!」

「ああ、いや、その……そうよ!部屋を間違えたのよ!」

「……あんた今、部屋を出るところだったじゃない。」


 相当苦しい言い訳をするサリアンナさん。そこに、表の騒ぎを聞きつけたロレンソ先輩も出てきた。


「あれ?サリアンナさん、どうしたんですか?」

「ああああっ!あんたは出てきちゃダメ!」

「えっ!?えっ!?」


 これを見たマデリーンさん。かつてないほどのにやけた顔で、サリアンナさんをからかい始める。


「へぇ~!あんたもやるじゃない!ねえねえ、もう夫婦の誓いはしたの?」

「はあ!?こいつとは関係ないわよ!!第一、魔女と付き合う男がいるわけないじゃないの!」

「何言ってんのよ。いるわよ、ここに。ほら、こちらは私の旦那、ダニエルよ。」


 唐突にマデリーンさんは、我々が夫婦であることを明かす。


「へっ?旦那!?……って、マデリーン、あんたいつの間に結婚してたの?」

「4日ほど前よ。こいつがどうしても私と一緒になりたいって言ってたし、それにね、私もなんだかこいつといっしょなら、いいかなぁなんて思ってね……えへへ。」


 急にデレデレと話し始めるマデリーンさんを、サリアンナさんは呆れ顔というより、かなりショックを受けた様子でマデリーンさんの話を聞いていた。あの口ぶり、この表情だと、この星では普通、魔女は結婚対象にならないものらしい。そういえば、魔女はあまりいい待遇ではないことをマデリーンさんも話していた。サリアンナさんやロサさんも人間不信に陥って、人里離れた場所に住んでいたくらいだ。


「ちょ……ちょっと!なんであんた、マデリーンなんかと結婚したのよ!」


 急にサリアンナさんの矛先が、私に向かう。


「いや、可愛い魔女だなぁて思ってですね、それに、なんというか波長が合うというか、一緒にいると安心するというか、それでつい一緒にならないかって声をかけたんですよ。」

「はあ!?あんた、こいつ魔女なのよ!気味が悪いとか、そう思わないの!?」

「何を言ってるんですか。この星ならいざ知らず、我々の星では魔女はむしろ大歓迎ですよ。」


 こういうのをカルチャーショックというのだろう。魔女が大歓迎だなんて、未だかつて聞いたことのない言葉に衝撃を受けたようで、サリアンナさんはふらふらと怪しげな足取りで通路を歩いて部屋に帰っていく。


「あらら……行っちゃった。」

「ところでロレンソ先輩、一体なんだってサリアンナさんと一緒にいたんですか?」

「いやね、飯を食べた後に部屋に案内して、着替えを持って行ったんだけどさ、ロサさんがいないって騒ぎ始めてね。で、どういうわけか、私の部屋に来ると言って聞かないんだよ。仕方がないから連れてきたら、さっきまでのあのツンツンの態度だったのに、急にすり寄ってきてね。それから一晩中、一緒にいることになっちゃってさ。」


 なんとまあ、あのサリアンナさん、それほどまでにロレンソ先輩に事が気に入ったのか?あれだけ怒鳴られても、献身的に対応していたからな、ロレンソ先輩は。そこが気に入ったのかもしれない。いずれにせよ、ロレンソ先輩のところにも魔女がやってきてしまったようだ。


 こうして、人里離れた場所で暮らしていた2人の魔女は、ひょんなことで訪れたこの駆逐艦6707号艦にて、それぞれパートナーと出会ってしまった。

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