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#11 反乱公爵と魔女とパイロット

「地上に兵士多数視認!目標ポイントに到達!これより、停戦作戦を開始する!」


 観艦式から、1か月が経った。


 私は今、王国より西に1200キロ行ったところにあるヴェリムバッハ王国という国に来ている。


 この国では今、公爵と王族との間で争い事が起きていた。平原の真っ只中で両軍が対峙。公爵側は小高い丘の上にある城に籠城し、ヴェリムバッハ王国軍側はこれを責めるべくぐるりと城を包囲している。


 どうやら、公爵側は当初クーデターを計ったようだが、事前に察知されて失敗。私軍を率いてこの国の首都近くにある城に逃げ込み、それをこの王国の軍が追い詰めたところだ。


 公爵軍は約1千、一方のヴェリムバッハ軍は5千を超える。いくら籠城戦とは言えど、5倍の兵力差。このままでは、公爵側が負けるのは必須だ。


 そこで、我々がここにいる。連合軍規 第53条に従い、この地上での争い事を終結させるためだ。無益な戦いを終わらせ、人命の損耗を極力減らすのが目的である。


 連合軍規 第53条とは、我々の間では「防衛規範」と呼ばれている。要するにあらゆる手段を用いて、地上での争い事を極力犠牲を出さずに納めろという、わりとお節介な法律。争い事を収めて人の命を守るのが目的だから、「防衛規範」という。


 さて、地球(アース)401はまだヴェリムバッハ王国とは接触していない。ゆえに彼らは、まだ我々の存在を知らない。それをいいことに、銃や駆逐艦、哨戒機などを繰り出し、半ば脅しで戦闘の意思を挫こうというのがこの作戦の概要だ。


 そこでまず、陸戦隊が降りる。哨戒機40機に400名の兵員を乗せ、ヴェリムバッハ王国軍と城の間に展開させる。


 続いて、駆逐艦10隻がこの城の周りをぐるりと囲み、2つの軍勢を牽制する。両軍が戦意を失ったところでそれぞれの軍勢に交渉団を派遣、和解に持ち込む。


 その停戦行動の第一弾である陸戦隊降下作戦のために、私は今、城の前を低空飛行をしている。時速20キロ、これより降下作戦が始まる。


「陸上部隊、降下用意!」


 無線から、陸戦隊降下準備の指示がきた。6人乗りのこの哨戒機の後席を全て外し、乗せられた10名の陸戦部隊の兵は、銃を構えて立ち上がる。


「降下開始!降下、降下!」


 無線から降下開始の合図だ。ハッチが開き、次々と陸戦隊員が飛び出していく。


 すし詰め状態だった機内から、順次飛び出していく隊員達。地上すれすれをゆっくり飛ぶ哨戒機の狭い出入り口から次々に飛び降りていく。


 草原の真っ只中に、迷彩服を着た兵士達が一斉に展開する。他の哨戒機からも次々に兵士達が降りている。総勢40機。これだけの数でも、なかなか壮観な眺めだ。


 陸戦隊員が全員降りたのを確認して、助手席にいたロレンソ先輩がハッチを閉じる。私は哨戒機を上昇させ右に旋回、他の哨戒機と共にヴェリムバッハ軍の上を通過する。


 突如現れた40もの白い物体、そこから降りた緑色の奇妙な服に身を包んだ謎の兵士。初めて見る奇妙な軍隊を、地上にいる兵士達は皆、口を開けて見上げている。


 だが、この哨戒機隊は前座に過ぎない。


 城の向こう側から、真打ち登場である。


 灰色の真四角な岩のようなものが現れる。全部で10、駆逐艦だ。


 ヴェルムバッハ軍がまさに攻めようとしている城よりも大きな岩の塊が、雲のように空に浮かび、迫ってくる。哨戒機どころではない。彼らからすれば、まさに「悪魔の城」だろう。


 5千の兵達は、恐れをなして散り散りに後退を始める。指揮官らしき者が大声で叫んで止めようとしているが、戦意を失った集団を止めることはできない。


 ここからは見えないが、城の方でも混乱が起きていると思われる。ただし、あちらは逃げたくても逃げられない。せいぜい、城の中に入り込むしかない。


 そんな城の様子を眺めていた。私の哨戒機とその城の間には、ちょうど駆逐艦6707号艦がいた。


 しばらくすると、その駆逐艦6707号艦から、何か小さなものが飛び出すのが見えた。


 上部甲板、艦橋のすぐ前あたり、そこから人の姿が見えたかと思うと、ふわっと浮き始める。


 ホウキにまたがり、長い髪の毛をなびかせて飛ぶその姿、間違いなくあれは魔女だ。


 遠く離れていたが、私にはその魔女がマデリーンさんだと直感で分かる。あの艦内でこんなところから飛び出そうなんて思う魔女は、マデリーンさんだけだ。私は直ちに駆逐艦6707号艦に、無線で確認をする。


「タコヤキよりクレープ!上部甲板より、魔女が飛び出してるぞ!」

「えっ!?魔女!?いや、クレープよりタコヤキ、確認する、待機せよ!」


 艦橋では全く気付かなかったのか?ちょうど目の前だぞ、何をしているんだ。直ぐに駆逐艦6707号艦より返信がきた。


「クレープよりタコヤキ、先程飛び出した魔女はマデリーン殿で、城にいる公爵宛てのメッセージタブレットを届けるために発進したとのことだ。」


 なんだと……あの1千もの兵がいる城へ、マデリーンさんをたった一人で送り込んだだと?


「なんだって!?生身の人間だぞ!なんだってそんな危険な任務にマデリーンさんを使うんだ!?」

「いや、哨戒機は全機出払っているし、それに今回の任務にマデリーン殿自らが志願したのだ。だから艦長が許可を……」


 なんてこった、話にならない。いくら本人がそう言ったって、危険な戦場に民間人を単身で送り込んで良いわけがない。軍人としての本分を忘れたか!?


「こちらダニエル中尉!直ちにマデリーンさん救援に向かう!」


 無線機に向かいそう言い放って、私は哨戒機でマデリーンさんを追う。マデリーンさんは現在、速力20、高度100を飛行中。城にたどり着かんとしていた。私は哨戒機をマデリーンさんの下に潜り込ませる。


 すると、城から無数の矢が放たれた。放たれた矢は、哨戒機の下面に当たる。カツンカツンと機体に矢があたる音が機内に響く。


「ちょ…ちょっと!ダニエル中尉!」


 横にいるロレンソ先輩が動揺するが、仕方がない。こんな事態は想定外、付き合わせてしまって申し訳ないと思うが、今はマデリーンさんを守らねばならない。


 だが、マデリーンさんは哨戒機を避けてそのまま降下を続ける。私も追いかける。あれだけの矢を放たれながら、よくまあ降下を続けようと思うものだな。なかなか豪胆な魔女だ。


 城の中の広場に降りる魔女。私の哨戒機もその横に降りる。拳銃を手に取り、ハッチを開けて急いで外に出た。


「ま、マデリーンさん!」

「やっぱり、あんただったのね。」

「1人じゃ危ないって!なんだってこんなところに……」

「私は戦場を駆ける配達人よ。これくらいのことは慣れっこなの。」

「いや、いくらなんでも今回は危ないって!あれだけの矢だよ!?」

「あれは、あんたのその哨戒機を狙って撃ってきただけよ。私相手にあれほどたくさんの矢を撃つわけないでしょう!」

「でも……」

「せっかく私が役に立つ機会なのよ!!ずっとただあの船の中でハンバーグ食べてるだけの存在って、私は嫌なのよ!」


 地上に降りて、急に夫婦喧嘩を始めてしまう。が、そこでマデリーンさんの本音が噴き出した。いつも艦内の食堂で図々しくハンバーグ食べてるイメージのマデリーンさん。しかし内心は、自身が活躍する場を得たいと思っていたようだ。


 自信過剰な魔女だからな、道案内や伯爵様の仲介役程度では、役に立っていると思えなかったのだろう。このマデリーンさんの一言を聞いて、マデリーンさんの意思を察した私は、彼女にこう応えた。


「分かった。じゃあ、私はマデリーンさんの護衛に回るよ。で、マデリーンさんは自身の役目を果たす。それでいいでしょう?」


 なんて言いながら、私はマデリーンさんを抱き寄せる。


「だ、ダニエル!こんなところで何すんのよ……」

「マデリーンさんの気持ちも分かるけど、もうちょっと夫である私を頼って欲しいなぁ。もうマデリーンさんは、マデリーンさん1人のものじゃないんだから。」

「わわわ分かってるわよ!そんなことくらい!もう、しょうがないわね!じゃあ、あんたに護衛を任せるから!ちょっと離れてちょうだい!」


 そうは言いながらも、抱きしめられてまんざらでもない顔をしている可愛い魔女。


 だが、私はふと周囲に目を向ける。周囲にはずらりと、槍を構えた兵士が数十人、我々に槍先を向けたまま、ぐるりと囲んでいる。


「……マデリーンさん。続きは、こっちを片付けてからにしようか。」

「だからさっき言ったでしょう、こんなところで何するのって……」


 ようやく我に返った馬鹿夫婦は、ここで冷静になる。マデリーンさんが叫んだ。


「ちょっと!私はここに書簡を届けにきたの!だれかこの城の主人に届けてくれない!?」


 だが、兵士は微動だにしない。槍を向けたままだ。誰か反応してくれないのだろうか?


 すると、奥から兵士達の間を割って出てきた人がいる。鎧ではなく、豪華な刺繍の施された服を着る人物だった。


「な……なりませぬ!親方様!こやつらは……」

「よい、こやつらと話してみたいことがある。皆、槍を収めよ。」


 この人物の一言で、兵達は一斉に槍を収める。


「わしはオイデンヴルグ公爵。今、ヴェリムバッハ王国に反旗を翻している最中の者だ。お主らに伺うが、お主らはヴェリムバッハ王国に味方するものか?」


 マデリーンさんが答える。


「いいえ!どっちの味方でもないわ!ただ、この争いをやめさせるために遣わされた者よ!」

「どちらの味方でもない……ではお主ら、どこの国の者であるか!?」

「王国よ!もっとも、今日は王国の使いではないわ!上に浮かんでる、星の世界からやってきた人達の使いとしてきたの!」

「王国……?ということはお主、王国にいる伝説の魔女か!?」

「そうよ!私の名はマデリーン!王国最速の魔女よ!」

「では、後ろの男は何者だ!?」


 さすがは魔女の有名人マデリーンさん、こんな辺境の国にまで名が知れ渡っていたとは驚きだ。私は公爵殿に向かって敬礼し、答えた。


「私は地球(アース)401 遠征艦隊の駆逐艦6707号艦所属の哨戒機パイロット、ダニエル中尉と申します。」

「アース401?パイロット?はて、聞いたことのない国だな。お主は、あの空に浮かぶ砦からきたのか!?」

「はい、そうです。我々はこの星より、光の速さで200年かかる距離を隔てた星からやってきた者なのです。」

「うーん、星の国から来たと申すか。今ひとつ分からぬが、何の目的でここに来たのか?」

「我々の目的は、この星にあるすべての国との同盟締結、そして、その前提となるのがこの地上での人々の安穏です。このため、今我々がここにいる目的は、あなたを含むここにいる全ての人達の生存権確保であります。」


 これを聞いた公爵殿、しばらく考え込んで口を開く。


「ここにいる者達のことを、お主は知っているのか!?」


 公爵殿は、右腕を横に振り、語り出す。


「彼らはここより南の山の麓にいた民族だ。彼らの郷は豊かで温暖なところ、争いもなく、皆静かに幸せに暮らしておった。だが、数十年前に大きな噴火が起き、彼らは郷を追われ、この国に流れ着いた。」


 急に語り出す公爵殿。今回のこの軍事行動と関わりのあることだろうか?


「それからの彼らの生活は、苦難に満ちたものだった。痩せた土地での暮らし、食べるものもなく引き起こされる争いごと、ヴェリムバッハ王国の民からの差別……わしが立たねば、誰が彼らを救ってやれるというのか!?そう思った私は、一世一代の賭けに出たんだよ。彼らを救うため、私が国を率いると。」


 周りの兵士達は皆、静かに公爵殿の話を聞く。その兵士達の中には、むせび泣く者もいた。


「あの……」

「なんだ!」

「公爵殿も、その南から来た民なのですか?」

「違う。私はこの国の民族だ。だが、私は彼らの生活を知ってしまった。彼らの生活を見るまで、私は人々の間にそんな理不尽な仕打ちが行われているなど、知る由もなかった。ただ優雅に、贅と安穏を貪り、彼らの上に生きていたことを、この歳になって知ったのだ。」


 この公爵殿、要するに私利私欲による戦いではないと言っている。もちろん、これが本当かどうかは分からない。しかしこの公爵殿についてくる兵士がこれだけいるところを見ると、あながち嘘ではない気もした。


「それに、差別を受けている人々は彼らだけではない。言われなき偏見で貧民に甘んじる者、機会を与えられぬ者、そういう者達が納得できる国を作りたかったが、私は道半ばで敗れてしまった。」


 手段を間違えている気もするが、目的自体は間違っていない気がする。この公爵殿は、相当な理想主義者なのだろう。理想を求めすぎて、やりすぎてしまったのだろう。


 そう感じた私は、公爵殿に言った。


「公爵殿、我々との接触により、その差別というものはなくならないまでも、今より減少します。」

「なんだと!?」

「我々の星では、原則的に人は平等であるとの考えです。いずれこの星にもその思想が広まり、彼らのような理不尽な仕打ちを受ける人々はほとんどいなくなるはずです。」

「だが、彼らは今を生きている。遠い先の未来のことを言われても、今を生き延びねば意味がないのだぞ!」

「我々との同盟で、交易が始まり、多くのモノと人の交流が始まります。生活レベルは向上します。だから、まずは矛を収めていただき、我々に任せて……」

「お主の話は希望に満ちている、魅力的でもある。だが!」


 公爵殿は突然、剣を抜いた。


「あまりにも都合が良すぎる。程の良い事を言って、我等を陥れるつもりではないのか!」


 公爵殿は、私に剣を突きつけてきた。確かにこの状況では、私が今述べたことを証明する手段がない。良かれと思って我々のもたらす未来の話をしてしまったが、話の飛躍が大きすぎて、かえって不信を招いてしまった。もはや、決裂か?私はマデリーンさんを引き寄せ、腰のバリアスイッチに手をかける。


 とその時、公爵殿は剣を引っ込める。


「……と言いたいところだが、お主は少なくとも、他の者とは違うようだ。お主がここに来た時に、その魔女を愛おしく抱き寄せておった。今も、その魔女をかばっておる。普通ならば、魔女のような者を相手に、そのようなことはしない。」


 この公爵殿、どうやらマデリーンさんを庇う私を、同志と思ってくれたようだ。


「本当にお主らに任せれば、彼らはいまの暮らしより解放されるのだな?」

「すぐにとは行きませんが、必ず変わります。」

「わしの命など惜しくはない。彼らの命が助かるならば、わしは喜んで断頭台に立つつもりである。」

「いや、我々の目的は、あなたの命も助けることです。そのようなことはさせません。」

「そうよ!地球(アース)401の偉い人から、公爵様宛に書簡を預かってるの!どうでも良いお方だと思うなら、わざわざ書簡なんてよこすわけないでしょう!?」


 そう言って、マデリーンさんは黒いタブレット端末を渡す。コンラッド伯爵様の時と同様、これも映像による「書簡」だ。


「なんであるか?これは。」

「ここを押すのよ。するとね、絵と音が流れてくるわ。」


 マデリーンさんに言われるまま、公爵殿はボタンを押す。


「おおっ!なんだこれは!?」


 政府高官が話しかける映像が流れ、公爵殿は驚く。その書簡の内容は政府からの停戦に向けた提案と、同盟後にもたらされる未来の話であった。公爵殿は、この初めて見る奇妙な仕掛けの書簡に、じっと見入っていた。


 その映像を見た公爵殿は、しばらく我々と話す。公爵殿からは、我々の星での人々の暮らしについて聞かれる。


「ところで、何ゆえお主らは一緒に行動しておるのじゃ?」

「ああ、ええと……我々は夫婦なんです。駆逐艦から飛び出した彼女を見て、真っ先に駆けつけたんです。」

「なに!?魔女と結婚したと申すか!?なるほど、その地球(アース)401という星の者は変わっておるな。ならばお主らがもたらすその未来とやらも、悪くはなさそうだな……」


 その後、公爵殿には再びここへ来ることを約束して、我々は帰路につく。


「あれ?マデリーンさん。乗らないの?」

「ホウキできちゃったし、このまま自力で帰るわ。」

「一緒に帰ろうよ。横がガラ空きだと、さみしいしさ。」


 マデリーンさん、しばらく考えて応える。


「……しょうがないわね、じゃあ、乗ってあげるわよ。」


 私がそっと手を差し出すと、マデリーンさんも手を出した。そのまま哨戒機の中に招き入れる。


 魔女相手に、まるで貴族の御婦人を馬車に乗せる時の様な仕草をした私を、周りの兵士達は呆然と眺めている。私は彼らに向かって敬礼、哨戒機に乗りこんだ。


「なによ!横の座席はガラ空きじゃないじゃないの!」


 助手席に座るロレンソ先輩に向かって


 ああ、そうだった。ロレンソ先輩が乗っていたんだった。しかも降下部隊を載せるために、後席は全て取り外してある。しまったな。


「いいよいいよ、マデリーンさんが隣で。わたしは後ろで立ってるから。」


 申し訳なさそうに、ロレンソ先輩は後ろにまわる。結局、マデリーンさんが横に座った。


 さて、駆逐艦6707号艦に帰還する。格納庫に入り、機体を調べたロレンソ先輩は声を上げる。


「な、なんじゃこら!?」


 何事かと、私とマデリーンさんはロレンソ先輩のところへ駆け寄る。


 哨戒機を見た。哨戒機の継ぎ目部分にところどころ、矢が刺さっている。そういえば、無数の矢を放たれたため、何本かが哨戒機に残ってしまった。


「ああ~っ……厄介だなぁ……これ。全部抜き取るのは、ちょっと骨だなぁ。」

「まあ、あれだけ矢を撃たれたんですもの。これくらいで済んで、よかったくらいよ。」


 マデリーンさんやロレンソ先輩の声が耳に痛い。マデリーンさんを守るためにやったこととはいえ、ちょっとやりすぎた。


「すいません、ロレンソ先輩。」

「いいよいいよ、ちゃんと直しておくよ。もしサリアンナが同じ目に遭っていたら、私だって同じことをしただろうしね。」


 そういって作業に取り掛かるロレンソ先輩。この人のこういう優しいところに、きっとサリアンナさんは惹かれたのだろう。私はそう思う。


 マデリーンさんの無茶もあったが、結果的にはあの公爵殿との接触は上手くいった。和解に向けて大きな前進には違いない。だが、まだ公爵殿が助かったわけではない。交渉は難航するだろう。


 ただ、我々がこの星にもたらす新しい時代に、あの方は必要だ。きっと、無下にはされまい。私はそう感じていた。

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