テンション高すぎ?!部活オリエンテーション
「さあ、今年もやって来ました!部活オリエンテーション!!」
〈わーーー!!〉
「司会は私、生徒会長こと染川が務めてさせて頂きます!」
今日は部活オリエンテーションというのがある日で、部活をやっている奴らにはかなり重要な日なんだそうだ。そのため、体育館全体から広がってくる熱意は、慣れていないと恐怖を覚えるほどだ。
部活に入らない、という選択肢はないみたいだ。
俺はあれから、ののが心配でゲーム部には行けていない。
瀬戸は特になにもいってはこないがやっぱり少しは気になっているようで、少し気まずさを感じる。
「じゃあ最初はダンス部ー!!」
オリエンテーションは舞台上で行う部活と体育館内で個々に屋台のようにやるのとで二つあるらしい。
生徒たちが盛り上がっている中、俺はそんな気分にもなれず、体育館内をテキトーにぶらついていた。
各部活ごとに活動の紹介をしており、声をかけられることも多々あった。
しかし冷めきった心にはなにも響かず、ほんとにいろんな部活があるなー、なんてぼーとした意識の中考えていた。
「…か、…けなか、竹中ってば!」
だからか、同じ高入生ということで仲良くなった友達が話しかけているのも気づかなかった。
「大丈夫か―?w」
「大丈夫。ちょっと圧倒されてたw」
「あ、それな。でさでさ、竹中はどの部活入るか決めた?」
それを聞いたとき俺はなんて答えるべきかわからず、無言でうつむいてしまった。
「俺はさー、ラグビーか柔道で悩んでんだよねー。」
彼は楽観者らしく人の気持ちに少し鈍感だ。しかし、今回はそれに感謝した。
俺自身は、ゲーム部に入りたいし、それ以外の部活というと考える気にすらならない。
だけど、そのことを考える度に初日の時の‘のの’の顔を思い出してしまう。
「よし、ラグビー部に行って来よう!竹中じゃあなー!!」
「お、おう」
一人になってしまい、途端に居心地が悪くなる。
俺は見えない何かから逃げるように足早に屋上へと向かった。
・・・
屋上には誰もおらず、何とも言えない虚しさを感じた。
これというやることが当たり前ながらなく、屋上から見える景色を眺めていた。
しばらくして、三人組の生徒がやってきた。
中一だろうか、まだ幼さがある。
かなり大きい声で話しているため、こっちにまで声が聞こえる。
特にすることもないし、そろそろ戻ろうかと考えていたころだったので、失礼ながら聞き耳を立てさせてもらった。
「結構疲れたーw」
「ねーw先輩たちが真剣ずぎて笑ったんだけどwww」
「そうそう、新入生が一人は入らないと廃部になるんです。とか、言ってさw」
「まじ、しらねーよって感じだよねーww」
「www」
…今、なんていった?
新入生が一人は入らないと廃部になる??
「ゲーム部って、どうだったんだろ…。いやいや、俺には関係ない話だ。」
そう言い聞かせて、違うことを考えようとするが、一度気になってしまったことはそうそう忘れられず、頭から離れてくれなかった。
……
なんで、俺は走っているんだろう。
なんで、こんなにあせっているんだろう。
自分でもわからない、見えない何かに駆り立てられるように、俺の脚は確実に体育館へと向かっていた。
幸い、まだオリエンテーションは終わっておらず、体育館は人であふれかえっていた。
しかし、ゲーム部がいたはずのところにはすでになにもなく、
『用がおありの方は部室までお越しください。』
という、張り紙だけが残されていた。
「…会長、遊戯部はどうしますか。」
そう、小さく囁く声が俺にははっきりと聞こえた。
「あれ、入部希望いなかったんだっけ?」
「はい。しかし、あの部はのんきですねー。飽きたから部室で活動してる、なんて。」
「まあ、あそこは、そういう部だから…。とりあえず、保留にしていてくれ。」
「…会長、生徒会の仕事に私情を持ち込まないでくださいね。」
生徒会長と誰かが話しているようだったが、途中から俺の耳には入ってこなかった。
気が付いたら俺は、部室棟に向かって歩いていた。(さっき走ったら、怒られてしまった。)
ここも、あの日以来来ていない。入った途端、俺の思いは強くなった。
〈コンコン〉
慎重に、そして若干の緊張感を持ってドアをたたく。
「はーい。」
春「あ、竹中君。…どうしたの?」
「…誘われてたのにずっと行けなくてごめん。わがままなのはわかってる。
だけど、入部させてもらえませんか。」
春「…!いいの?本当に?」
「うん。」
星「瀬戸?どうしt…竹中。」
春「あ、代表、違うの。竹中君、入部してくれるって…!」
睦「それほんと?」
「うん。」
一「やったな!これからよろしくな!」
みんな俺の突然の訪問に驚いていたが、それを聞くと、とても喜んでくれた。
将「…でも、なんで今?」
「…この部にはなくなってほしくなかったから。」
「「「…?」」」
それから、俺は後輩から聞いた話や、生徒会長たちの話していたことを伝えた。
自分の思いを他人にいうのが久しぶりだったので、少し恥ずかしかった。
でも、俺の話を聞いた後、みんなで顔を見合わせて笑っていた。
春「…笑笑。ごめんね。それ、この部には関係ない話なの。」
「…え?」
雪「竹中君が聞いてきた話はあくまで、活躍が見られない部活の話。一応、この部は最低でも、県トップの成績はもっているから…」
「じ、じゃあ、無駄な心配だったってこと…?」
星「いや、今回は免れても生徒会に目をつけられるのは同じだから。だって、そう話してたんだろ?」
それを、聞いた瞬間俺の中の何かが切れて、その場に座り込んでしまった。
一「わ、大丈夫?」
一が手を貸してくれて何とか立ち上がる。
春「ふふ、竹中君は優しいね。それじゃあ、改めて…」
「「「ようこそ、ゲーム部へ!!!」」」