愛される苦労人
宇「ただいまー。」
「お、お邪魔します。」
こんな奴の家とはいえ、他人の家に来るのはやっぱり緊張する。
宇「あ、親はいないから安心して。」
「あ、うん。」
…?安心?
「いや、安心ってなに?!何もしないからね!?」
の「お兄ちゃんは私のものなんだから!
お兄ちゃん、やっぱり私と一緒に帰ろう?こんな家長居しちゃダメだよ!」
確かに…。ここに長くいるのはマズいかも…?
宇「そんなー、人聞きの悪いこと言わないでよ。俺だって、普通の人だよ?」
「…いままでの行動を振り返ってみてくれないかな。」
の「ただの変態です。」
どこで覚えたのかな、のの。小学4年生が使う言葉じゃないですよー。
宇「君だけには言われたくないな。君だって同じようなものだよ。」
「…と、ところでさ!夜ご飯ってどうするの?」
宇「ああ、俺がなんか適当に作るよ。何がいい?」
「なんでも。」
の「あなたが料理ー?本当にできるのー?」
宇「ああできるとも。希望を言ってみてよ。作ってあげるから。」
の「じゃあ、オムライスで。」
オムライスはののの一番好きな食べ物だ。俺が一番作っているものでもある。
宇「ふーん、じゃあ少し待ってて。」
~20分後~
宇「出来たよー。」
お、美味しそう。俺のよりも。
の「…いただきます。」
「いただきます。」
(´~`)モグモグ
「「…美味しい。」」
「意外と普通に上手い。」
宇「意外とってなにさ。失礼だなー。」
の「…悔しいけど、美味しい。」
宇「ふっ、だろ?これでちょっとh「でも、お兄ちゃんのほうがおいしい。」…は?」
の「お兄ちゃんのオムライスは卵がもっとトロトロしてて、好き。」
宇「そりゃあ、啓太だからな。食べたら、遅くならないうちに、帰ってね。」
「あ、俺も一回荷物取りに帰らなきゃ。」
宇「えー、俺の使えばいいじゃん。」
「それはなんか嫌ば予感するから、遠慮しておくわ。」
洋服は宇宙のだし大丈夫だとは思うけど、生活用品って結構あるから…ね。
宇「ひどいなー、なんもないのにー…。でも、帰るなら俺もついてっていいよね?」
「え?」
の「何を言ってるんですか。あなたは大人しくこの家で待ってろ、です。」
宇「ひどいなー。」
そうは言いながらも、結局家まで付いてきてしまった。
「家の中には入らないで、ここで待ってて。」
宇「わかってるよー。…でも、10分経っても帰って来なかったら、、。」
「わかったわかった。すぐに戻ってくるよ。」
~10分後~
「…ハア、ハア…。お、お待たせ…。」
宇「よかった、あと少しでも遅かったら突撃でもしようかと思ったよ。(真顔)」
「…怖い(ボソッ」
…本当に警察にでも、相談したほうがいいのかな。流石にそこまではしたくないんだけど…。
・・・
宇「ただいまー」
「…お邪魔します。」
宇「…?二回も言う必要はないんじゃない?」
「まあ、なんとなくだよ…!」
宇「ふーん、まあいいや。風呂湧いてると思うから、先に入ってきてー。」
「う、うん。わかった。」
絶対何かしてくると思ったのに、なんか意外…。
ああ、でも何をするにも風呂入んないとまずいのか…?
まあとりあえず、今はありがたく入るとするか。
・・・
~宇宙side~
「 ー ̄) ニヤッ」
(啓太がいない今、部屋の片づけをしておかないと。)
もうご察しの方もいると思うが、俺の部屋は持ち主である俺から見ても、ひどい、ひどい。
この一言に尽きる。
心の準備はいいか?開けるよ。
……。
うん、ひどい☆(ゝω・)vキャピ
壁一面に幼いころから、中学生くらいにかけての啓太の写真が貼ってある。
隠し撮りしたものがほとんどで、正式な写真は全体の1割にも満たない。
啓太がこの部屋で寝るのに、さすがにこのままにはしておけないので、写真を一枚ずつ丁寧に剥がしていった。もちろん、枚数を数えるのを忘れずに…。
「はぁ…。疲れた…。」
結局写真は400枚ほどあった。貼るときは何も感じなかったが、剥がすときの苦痛といったら、、。
疲れるし、心は痛いわ、で大変だった。
(さてと、今啓太はどんな感じかな?)
俺は開きっぱなしだったパソコンを起動させた。すぐに立ち上がり俺は迷わずあるアプリを開く。
画面いっぱいに風呂場と思われる映像が映し出された。そこには当然啓太もいた。
(あ、もうすぐ上がるか。ちぇっ、生で見れなかった。)
(まあいいや。録画はしてあるし、あとは俺が入るときにカメラだけ回収しておこう。)
十分立派な犯罪だということには触れないでくれ。
~啓太side~
「宇宙ー。上がったよー。」
宇「はーい、今行くー。」
二階からだろうか。やけに楽しそうな宇宙の声にわずかに身震いする。
宇「お、大丈夫だった?俺の部屋片づけておいたから、そこで待ってて。
すぐ入ってくるから。」
「お、おう。そんなに急がなくてもいいと思うけど…。」
宇「いいの、いいの♪」
そう言って、宇宙は脱衣所へと消えていった。
(さてと、特にやることもないし、宇宙の部屋に行ってるか。)
階段を上ると電気がついてる部屋が一つだけあり、そこが宇宙の部屋だった。
「…おじゃまします。」
なんとなく、勝手に人の部屋に入るのは気が引けて、一応挨拶してから入った。
宇宙の部屋は意外にもきれいで必要最低限しか物が置かれていなかった。
それこそ、あいつのことだから探せば何か出てきそうな気もしたが、俺の第六感が危険を告げていたので、手を出せなかった。
一通り部屋を見回し、やることもなくなったので、床に座りスマホをいじっていた。
(やばい、眠い。)
そんなとき、急に眠気が襲ってきた。
(寝たらまずい。寝たらまずい。)
しかし、俺の思考とは逆に意識が遠くなっていく。
(あ、もう無理…。)
・・・
「たっだいまー。…って、寝てるじゃん。もう、警戒心ないなー。」
そう言って、啓太に近づいていく。
「自分に惚れてる人間と二人きりの空間で、こんな無防備に寝るなよ。
襲われてもしらないからな。」
そういいつつ、宇宙にその気がないのか穏やかな表情をしたままである。
「…ったく、俺は寝込みを襲う趣味はないからいいけどさー。」
頬を膨らませながら、啓太を持ち上げベッドに寝かせる。
「…でもさ、このくらいなら許してくれるよな?」
〈…チュ〉
そう言って頬にやさしくキスした。
……
静かになった部屋に、ののが一人呆然と立っていた。
「……。」
(お兄ちゃんなら私を選んでくれると思った。)
そんな本人には届かないであろう思いを抱えながら。
何時間たっただろうか。いや、実際は数分だったかもしれない。
しかし、ののには兄のいない空間など存在する意味がないに等しかった。
「…帰ろう。早くお兄ちゃんを補充しなくちゃ。」
そういうとののは部屋に戻った。
「…ただいま、お兄ちゃん♪」
開いた扉から見えるののの部屋はある意味狂気的だった。
壁一面に啓太の写真が貼ってあったのだ。
それも、張りきれていないのかところどころ重なっているものもあった。
小さいころから最近のまでいろんなものがあった。
ののは部屋に入るなり、迷うことなくパソコンを開いた。
そこから音声データを選び、再生する。
「…ウフフ…」
「本当にかわいいなー、うちのお兄ちゃんは。」
その音声データには、ののがひそかに録っておいた啓太の“様々な音”が入っていた。
「…そうだよ。お兄ちゃんがのの以外を選ぶとかありえないし、あっちゃだめだ。
ちゃんと、ののだけのお兄ちゃんにしなくちゃ。ふふ、なら早速準備しなくちゃね…。」