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学生 トヨシマ・アザミの日常  作者: スマ甘
第1話
6/8

1-6

 ゴールデンウィークが明けてすぐに実機訓練が始まり、そして、クラス全員が教室ではなく、第3演習場近くの格納庫に集合していた。


 なぜなら、アザミとハルザに与えられたセクタが、この格納庫に搬入されているからだ。


「これが、プロジェクトZEODの機体だよ」


 ホソカワが格納庫のシャッターを開くと、サーフェイスグレーのセクタが2機、姿を晒した。


 そのセクタはズムウォルトよりスリムで、インディペンデンスより少し背が高い。

 頭部はロボットアニメの主人公機のように複雑なラインでデザインされ、カメラはゴーグル型でもバイザー型でもない二ツ目型だった。


「カッコイイ……」


 エリサが思わず呟く。


「ズムウォルトよりスリムだな。 頭もこっちがカッコイイし」


 トウマは2機の反対側で整備を受けているズムウォルトを見ながら言った。


「でも、フレームそのものはズムウォルトのものなのよ。 外装はウチのところで不要になった試作機のを流用した」


 突然、アザミ達の前にミカミが現れ、優しく笑った。


「ミカミさん。 来てたんですか?」

「機体の最終調整とか、命名とかしないといけないからね。 ZEOD-01とかじゃ呼びにくいし」


 ミカミの言葉に、アザミは納得する。


「わたしが決めていいんです?」

「もちろん。 アザミさんが乗る機体だもの」

「でも、予備機の名前は……」


 アザミは隣に立つハルザを見た。

 予備機はハルザが乗るから、ハルザが名前を付けるべき。

 アザミはそう考えている。


「アザミが名付けてくれ」

「わたしが決めていいの? 自慢じゃないけど、ネーミングセンス皆無だよ?」


 アザミが聞くと、ハルザは笑った。


「アザミに名付けてもらいたいんだ。 あの機体を、オレの一生の宝物にしたい」

「一生の……宝」


 よく無自覚でそんな台詞を言えますねあなたは。

 周囲の視線がアザミに集中し、アザミは恥ずかしくなって顔を伏せた。


「コイツの名前は……」


 アザミは、機体の名前を二つ考えていた。

 今の時代の人たちには、ほとんど馴染みのない名前だろう。


「左肩に01とナンバーされている方が【マルレ】。 右肩に02とナンバーされているのは【マルハ】。 これを2機の名前にするよ」

「マルレにマルハ? どういう意味だ?」


 名前をハルザは腕を組みながら考える。


「今はまだひ・み・つ。 時間があったら話すよ。 でも言いやすいし、覚えやすいと思うんだ。 ……ダメ?」

 

 アザミが聞くと、ハルザは優しくアザミの頭を撫でた。


「ありがとう」

「お礼を言われるほどじゃないよ」


 ただ単に、時代の流れに呑まれてこの名前が……四式肉薄攻撃艇や、震洋の名前が忘れ去られないようにしたかっただけ。

 そう思ってアザミはこの名前を付けたのだ。


「機体のカラーはどうする?」

「もう灰色ですけど、変えられるんです?」

「機体表面に塗布されたナノマシンを弄れば、機体色変えるくらい一瞬よ」


 端末を操作しながら、ミカミさんはマルレとマルハの機体色を次々と変えてみせた。


 アザミは、今までのセクタと、マルレの違いに驚いた。

 従来のセクタは、複合素材でできた装甲が優秀な分、塗装方式は自動車のものが採用され、色はみなUNブルーで統一されていたからだ。


「じゃあ、マルレは明るい緑でお願いします。 ハルザ、さすがに機体のカラーくらいは自分で決めてね?」

「わかってる。 オレのマルハはネイビーブルーにしてくれ」

「OK。 じゃあ、名前の登録と機体色の変更をやっておくわ。  2人は機体に搭乗して、初期設定を済ませておいて」


 アザミは後ろに居たホソカワを見る。


「高等部 3年のハルザはともかく、アザミはミカミさんの指示で動いてていいよ。 こっちは第1演習場に行かないと機体も無いからね」

「ありがとうございます」

「シミュレーターと実機じゃまた感覚が違うから、転んじゃダメだよ?」

「もう転びませんよ!」


 アザミの反応を見て全員が笑った。

 アザミは全員の反応を見て頬を膨らませる。


「とりあえず、わたしは作業が終わり次第合流しますね」

「焦って転んだりしないようにね」

「いい加減にしてください」


 呆れながらも、アザミは格納庫を立ち去るクラスメイトを見送った。



「コックピット内もシミュレーターと同じなのかな?」


 マルレのコックピットに乗り込み、シートに座ったアザミは呟いた。


 コックピット内はシミュレーターとほぼ同じだが、コックピットのほとんどがモニターになっていて、視界が非常に良い。

 ペダルのそばまでがモニターになっているので、足元からの奇襲にも対応できそうだ。


「シートの座り心地、シミュレーターと同じだな。 ほら、あのハイドロみたいに」


 ハルザが眠そうな声で呟いた。


「本当だ。 ミカミさんがあの時の会話を覚えていたのかもね」


 資料で見たが、ズムウォルトとインディペンデンスのシートに、ハイドロは搭載されていない。


 これは、ミカミさんなりの気遣いなのかも。

 アザミはシートの感触を確かめながら笑う。


「……パイロットスーツって、結構着心地いいんだね。 レーシングスーツみたいに薄いのに、12Gまで耐えられるの?」

「エテス由来の技術を使っているんだぞ? 性能は保証されてる」


 パイロットスーツは、Tシャツとショートパンツの上から着る構造になっていた。

 このスーツは地上専用仕様であり、宇宙空間や長時間行動は想定されていないので、非常に軽い。

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