第一話 「仕分け」
「……あら、今日は遅かったわね」
「掃除当番だったからね」
「そう。……まぁ、良いわ。早く作業に入ってくれるかしら」
「はいはい。――っとその前に、君は何をしているのかな?」
「え? 見て分からないのかしら? 本を読んでいるのだけれど」
「……」
「おかしいわね。私の知っている限り、貴方の視力は日常生活に支障が出るレベルでは無かったはずなのだけれど……もしかして、視力を『無かったこと』にでもされたのかしら?」
「いや僕の目は、しっかりと見えているよ」
「なんだ。ご機嫌じゃない。私の心配を返してほしいわ」
「うん。心配をかけたのなら謝るけれど、僕が言いたいのはさ。君がなんで、作業もせずに本を読んでいるのか、っていうことなんだよ。今、君の目の前には新しく入ってきて、仕分けを待っている本が大量に置いてあるんだけど」
「ちょっと、静かにしてくれる? 今やっと第三部が終わる所だから」
「おい、こら。仕事しろ、図書委員」
「それにしても、ガソリンを高速で打ち出してくるなんて、本当にこの作品は先が読めないわ」
「……まさかエジプトにも辿り着いて無いとは思わなかったな」
「――あ」
「そんな被害者みたいな顔をしないでくれよ。なんだか酷いことをした気分になる」
「いや、十分に酷いわよ。読みかけの本を取り上げるなんて。未来編の人造人間ですら躊躇うような行為だわ」
「流石にそれは無いだろう」
「荒れ果てた荒野の中で、数少ない種籾を奪われた気分だわ」
「……僕だって、君が図書委員の仕事をした後でなら、どれだけ読もうとも構わないんだけどね」
「まぁ、いいわ。アレが最後の敵だとしたら、私の中で一部や二部ほどの盛り上がりは無かったから」
「……仕事が終わったら、必ず続きを読んでくれ。そうでないと、僕は君の人生から一つの潤いを奪うことになってしまう」
「貴方がそこまで言うのは珍しいわね。それじゃあ、期待を込めて続きを読むわ」
「うん。仕事の後でね。……さて、じゃあどこから手をつけようか」
「今回も大量に入ってきてるわね」
「ここの図書館は生徒の希望で蔵書を増やしていくからね。……まぁ、高校生の希望なんて殆どが漫画かラノベなんだけど」
「私としてはどちらも好きだから有難い話だわ。……それじゃあ、私がライトノベルを担当するから、貴方はそっちの漫画を担当して頂戴」
「わかった。一応、担当を決めた理由を聞いても良いかい?」
「私、漫画だと絶対に途中で読んじゃうもの。ライトノベルなら我慢できる可能性が高いわ」
「おお。君が意外に仕事をするつもりで嬉しいよ。……でも、ラノベの方も可能性なのか」
「ええ。戯言だけどね」
「また古い作品を……そこは堪えてくれよ」
「人は、名作があったら手に取ってしまうものよ。それはもう自動的とも言えるわ。さながら、『世界の敵』を探して浮かび上がる不気味な泡のように」
「確かに君はなかなか笑わないけれど」
「分かったら、私の邪魔はしないことね。バカ犬」
「勘違いしてるみたいだから言っておくけど、僕は君の使い魔じゃないからね? ……どうも心配になってきたな。君が漫画を担当するかい?」
「貴方がどうしてもと言うのなら、やぶさかではないわ」
「多分、誤用だと信じたいけど――やぶさかの意味って、割とノリノリだからね? 漫画を読んだりしないでくれよ?」
「まぁまぁ、任せて頂戴。確かに、私はさっきまで漫画を読んでいて、時間を獲られたわ」
「……」
「でも、同じ失敗はしないわ。獲られたら獲り還す奪還屋とは私の――」
「君はやっぱり、ラノベをやってくれ。僕が漫画をやるから」
「……酷いわね。一回、期待させておいて奪うなんて」
「君がやぶさかでは無かったからだよ。まだ、ラノベの方が良さそうだ」
「女心を弄ぶなんて、これがぐう畜という奴かしら」
「結構粘るね。……そもそも、元々は君がラノベをやるって言ってたじゃないか」
「それはそうだけど、やっぱり本音は漫画を読みたいのよ」
「うん。読みたいって言った時点で、もう駄目だよね」
「ふぅ。やっぱり随分と遅くなっちゃったね」
「そうね。それでも仕分け作業は終わって無いのだけれど」
「……君が先に作業を初めていてくれれば、もう少し進んだと思うんだけどね」
「それは嫌よ。私だけ作業するなんて、不公平だわ」
「掃除当番で遅れるくらいは、誤差だと思ってくれよ。……まぁ、流石に今日は帰ろう。暗いし駅までは送っていくよ」
「あら、ありがとう。……やっぱり、遅れた方が良いじゃない」
「ん? 何か言ったかい?」
「おお――よ。聞き逃してしまうとは情けない」
「漫画、ラノベと続いて、ゲームかい? ここまでくると感心するよ」
「仕分け中は漫画とラノベばかりが目に入るのだもの。ネタが偏るのは仕方無いわ」
「……僕は別に、今までゲームネタが聞け無かったことに対して、嫌味を言った訳じゃ無いんだけどね。ほら、帰るよ」
「ええ、それじゃあ戸締りしていきましょうか。ちょっと、窓を閉めてきて頂戴」
「はいはい――って君は何をしてるのかな?」
「決まっているじゃない」
「――本を読んでいるのよ」
お読み頂きありがとうございますーっ!!
需要があるのかは分かりませんが、パロネタを書くのが好きなので、気づけば勢いのまま書き上げていました。
少しでも、笑って頂けたなら幸いです。
続きは来週、更新します!!
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「異世界転移したけど、お金が全てってはっきりわかんだね」
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お読み頂き、本当にありがとうございました。




