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私の原点

「日本人の女だ、日本人の女が来たぞ!」

「ひぃぃー、嫌だ、俺はまだ死にたくない」

「日本人の女が来るなんて聞いていないぞ」

「おい、お前ら俺を残して先に逝け」

「俺が日本人の女を倒してしまっても構わんのだろう」


 騒がしいことだ。

 まさか私が来ただけでここまでなるとは。

 武者修行の相手を求めてこの地までやって来たが今回も大した相手は居なそうだ。


「投降するかどうか選べ三刹那待ってやる。投降するものは居ないようだな……ならば死ね」


「まったく待ってねえじゃグベッッッ」

「酷いよ、酷いじゃなクギャッッッ」

「我が生涯にいっぺフギャッッッ」

「ロビンソン歌っているのはスピッッッ」


「三刹那も待ってやったというのに判断が出来ないとは、やはりこの程度、ッ!」

 背後からの攻撃に対処する。

 意外だ、まだ本気でないとはいえ、今の拳は戦車を破壊するぐらいの威力があったはずなのだが……。


「残っていたか」

「クク、伊達に鍛えてはいませんからね、この程度の拳では倒れませんよ」

「そうか、私の拳を受けて立っている者は久しぶりだ、落胆させるなよ」


 細く、柔く見えるが実際は筋肉が(かた)く引き締まっている身体からだ

 隙だらけのように見せて、此方を誘い込む隙のない構え。

 つかみどころのない、蝶のような不規則なステップ。


 私の拳に耐えた男を観察していると、いつの間にか自分の口角が上がっていることにふと気づく。

 どうやら私は相当強者に飢えていたらしい。


「そちらこそ、落胆させないでくださいよ」


 そんな一言と共に男は縮地で間合いを詰めてきた。


「だが、甘い」

「なにぃ!スリジャヤワルダナプラコッテッッッ!」


 相手のスピードを活かすことで亜光速で拳を打ち込む時と同威力を出すことが出来るカウンター。

 これが私の一億四千二十三手ある秘技の一つ《超越する反撃(オーバーザカウンター)》だ。


「まさか、ここまで強いとは。なぜ、貴女はこんなにも強いのでしょうか」


 倒れ臥した男が訪ねてきた。

 気絶させ(たおし)きれていなかったようだ。

 私の《超越する反撃(オーバーザカウンター)》が甘かったのか、男が予想外に頑丈だったのか。

 しかし、それは気絶させきれていなかったというだけであって、男が戦闘続行可能かと言えば否と断言できるだろう。


 だから私は男にとどめをささず男の健闘を讃え感謝の念も込めて彼に話すことにした、私の武者修行の内容とその始まりを。


「昔、私はしがない銀行職員で、今では想像できないほどに戦いとは無縁の生活を送っていた。

 だが、ある日私の勤める銀行に銃を持った強盗達が現れた。

 もちろんその頃の私には何もできなかった。

 まあ、今ならばあの程度の連中は一瞬で制圧出来るだろうがな。

 すまない、話がそれたな、話を戻そう。

 その強盗達のうち一人が私達を威嚇するするために銃を撃った時に赤ん坊が泣き出したんだ。

 私はその時とても焦った、強盗たちが赤ん坊に刺激されて暴れまわるんじゃないかとね。

 だが焦る必要はなかった、なぜなら……」


 なぜなら、一人の少年が瞬く間に強盗たちを殴り飛ばしたからだ。


 その言葉を発したとき男は顔を驚愕一色に染めていた。


「信じられないのが当たり前だろう、私もその時は見ているものを信じられなかった。

 だが、それ(・・)を理解したとき私は歓喜に震えた。

 人間にはここまでの可能性が有るのかと。

 それから、私はただ銀行で働いくことよりも、あの少年の様な強さを求めることを渇望した。

 そして私は辞職し、武者修行に出た。

 武者修行では各地の猛者と戦った、首狩族の長、自らを百獣の王と呼ぶ男、五色の戦隊、金髪で逆立った髪を持つ男等。

 最初は弱かったから死にそうになる事もあったが今ではそれなりの強さを持てた」


 私が喋り終えると男は一つ質問をしてきた。


「今だったら貴女とその少年どちらの方が強いのでしょうか?」


「少年だよ、彼はこの前世界の壁を破っていたからな。私では精々10メートル分の距離の概念しか壊せない」

読んで下さりありがとうございました。

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