#6 「やけっぱちの出撃」
戦闘用に改修されたオートランに乗り込みながら、ユキヒロは周囲の状況を観察する。
自らの搭乗機の脇には同様の改造を施された2機のオートランが直立しており、そちらにも乗り手が搭乗している様子を確認することが出来た。
面識はない者同士であるため詳細は知らないが、片方は学生の出であるという噂は耳にしている。
何の不満があればその若さでこのような事態に首を突っ込めるのか疑問ではあったが、この場に居合わせている自分が言えたことでは無いと結論付け、この疑問を断ち切った。
結末まで責任を負う覚悟を伴ってさえいれば、選択は個人の自由でしかないのだ。
「身勝手は承知の上……なんて言えば自分が正当化されるなんて、都合の良い話はないよなぁ」
これから向かう目的地は、自分がかつて勤めていた企業によって管理されている資源鉱山である。
武装勢力である以上に、ただ生き残るためだけにでも資源は必要なのが宇宙という環境であり、ましてや反体制を掲げている組織であれば、常に資源不足に悩まされているのも当然の成り行きである。
要は補給の意味合いの強い略奪行為であり、大義名分を掲げて実行する割にはセコイ手段と言わざるを得ない。
結局は先立つものが無ければ生きていけないのだという現実を突き付けられているようで、望まぬまま道を踏み外し始めているユキヒロの心に鋭く突き刺さってくるのだ。
作業に従事した結果オートランを人並み以上に扱えるようになった自分自身のかつての勤勉さが、今この瞬間に自分の首を絞めているようで、何とも複雑な思いを抱いてしまうのである。
それでも生に執着してしまうのは、道を踏み外した原因は世の中の理不尽であると信じているからだ。
自暴自棄であることは承知の上で、それでもどうにか生き延びる未来を掴む為に、ユキヒロは機体を前へと進ませる。
出撃の時間であった。




