#3 「武装勢力」
武装勢力であることに違いは無かったが、真っ当に働いている者の視点から見たその姿は、不平不満を周囲にぶつけている荒くれ者にしか見えなかった。
その、騒動を起こす者の数が多ければこれに対処するための環境も自然と整備されていき、自警団の体裁で召集されたオートラン乗りたちによって、これらは鎮圧されていた。
しかし、専守防衛を基本とする組織が後手に回るのは当然であり、事が起こったその時点で無関係のものが居合わせた場合は、当然ながらその身を守ってくれる者は誰も居ない。
ジロウが今追い込まれている状況は正にそれであり、ましてやその場に居合わせていることを理解した上で敵が接近してきている状況は、最悪に分類されるべき状態であった。
ただ、その脳裏に浮かんでいるのは生き残る為の方法でも、状況に居合わせた己の不運への言い訳でも無い。
本来作業機械であるオートランをそこまで乗り回す技術を持っているのなら、本来の用途である資源の採掘や回収に尽力しろという、至極真っ当な指摘であった。
口に出さなかったのは偏に、真空の宇宙空間で声を荒げたところで相手に伝わる道理がないからである。
勿論、思いの通りに相手が動いた場合はジロウが作業に従事できる枠を脅かされる可能性もあったが、まずは燃料にしろ材料にしろ、根本を成すものが無ければ共倒れするしかないという割と切羽詰まった状況を考えれば、些細なことだと思う以外に無い。
それを理解すらしていないのではないかと言う懸念こそが、ジロウの眉を吊り上げる要因となっていた。
「どんな捻くれた理屈を持ち出せば、自分を正当化出来るんだか……やってることは単なる営業妨害だぞ、お前ら」
不毛の大地を掛け、手にした槍を振り回しながら突撃してくる戦闘用オートランの姿を冷めた視線で眺めながら、呆れた様子で呟くジロウ。
建前が何であれ、その姿を性根の腐った強盗以外の何と思えば良いのか分からないと言うのが本音だ。
故に、身に降りかかる火の粉を振るわなければならなくなった状況に対して、彼は心底面倒臭そうな様子で表情を歪めるしかなかったのである。