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オートラン  作者: たくみ
カニハラ=ダイゴ編
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#4 「次代継承」

 しかし実際の所、ジロウが日頃から仕事に関する知識が技術に対して特に抵抗なく覚えていく姿というのは、やはり世代を意識する要素であると言えるだろう。

 かつての自分とて、先達から知識や技術を吸収して今の自分の基礎を築いたのだから。

 こうやって世代の差というものを自覚していくのだと思うと、ダイゴは複雑な思いを抱かずにはいられない。

 それでも、こうしたことを考えることが出来るほど長生きできたという事実そのものは、彼にとって喜ばしいものであった。

 人類と言う種そのものが誰か、或いは何かを積み重ねることによって今日まで存在してきたのだから、ダイゴ自身が実感として抱いた世代に関する思いも、過去の同じような立場の人間たちが味わってきたものに違いないのだ。

 ならば母星を捨て、資源衛星をいくつも使い潰してきた果てに辿り着いたであろうこのサテライト7に至ってもなお受け継がれてきたものに対して、自分もその一端を担っているのだと自覚できることは、誇っていい事実であるだろう。

 いつか資源の枯渇によって人類がこの大地を離れ、新天地へと赴くことがあったとしても、後に続く者たちがそうやって未来へ繋いでいってくれるのではないだろうか。

 それは世代間を越えて繋げられた、人類の日常の在り方に他ならない。

 その、未来に受け継いでいく役割を背負った若者であるジロウは、早速オートランに乗り込んで機体を起動させていた。

 ダイゴの胸の内など知る由も無く、日々を暮らしていく賃金を手に入れる為に前向きに行動するその姿。

 世の中への向き合い方という者は、人それぞれであることの証明である。


「安全点検終了……相変わらず完璧ですね、カニさん」


「その呼び方は止せって言ったろ。周りの奴らが面白がっちまうだろうが」


 作業前点検を終えたジロウに、ダイゴは憮然とした表情を浮かべた。

 言い易いであろうことは認めるしかないその愛称を、当人としてはどうしても気に入ることが出来なかったのである。

 しかし、露骨に表情を変えると面白がってしまうのも人間というもので、付き合いの長い者は定期的に口にしてからかうのだ。

 これもまた、何世代も前から受け継いできたものと言えるのだろうか。

 生まれてから何十年と繰り返してきた日常の一端で、ダイゴはまずジロウの呼び方を矯正すべく思案を開始した。

 そんな心の内など知る由も無く作業に赴くオートランの背中を見送りながら、真新しいものの見当たらない新しい一日が幕を開けたのである。

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