知らないうちに幼なじみがとんでもない方向に成長してたんだけど
「久しぶり、高野」
「え?なに、二人って知り合い??」
目の前で腕を組み合うカップル。
なんでいるんだとか、なんでわざわざ声かけたとか、それはもう色々思うところはあるけれども。
……まず言わせて欲しい。
ど う し て そ う な っ た ! !
あ、どうも。高野ミユキです。友達にはユキって呼ばれてます。
最近友達の1人に彼氏ができました。
といってもそろそろ4ヶ月目らしいけど。あの子、彼氏ができたってバレてからめちゃくちゃノロケるんだよね。
それがもう甘いのなんの。いやぁもう糖度100%どころか飽和状態になるまで溶かした砂糖水に蜂蜜とバニラエッセンス数滴ぶちこんでコンデスミルクつきのいちごやらバナナやらをトッピングしたみたいな。
…うぇ。自分で言ってて気持ち悪くなってきた。
と、とにかくそれ普通にあり得ないだろって話をハイテンションで喋りまくるからあたしとその他友達とで心配してたのよ。
あの子、前に5つ上の社会人と付き合ってたった1ヶ月で彼氏宅の合鍵をもらうーーなんて前科があるし。(たしかだいぶ前に別れたけど、あの鍵どうなったんだろ。)
で、今度は同い年だけど働いてるっていう人。なんでも、お姉さんは大学まで行ったけど彼氏さんは家の事情で中卒で働いてるんだって。
まぁ、そこまではよかったんだけど。例のごとくめっちゃニヤニヤからかって楽しんでたんだけど。
ここらで、ちょっと問題が発生した。
彼氏さんの名前は…大川 佳樹。
実は、引っ越す前の幼なじみと同姓同名だったりする。
いや聞く限り違うと思うんだけど、ちょっとひっかかる。
だってデートで行ったっていうパン屋も、待ち合わせの子豚のでかい煙突があるショッピングモールもあれ絶対あの辺界隈じゃん。
でも、自他共に認めたあのサッカー好きよ?いくら彼女でも「はるかにゃん」で連絡先登録はしないでしょ。(あれは流石に目が点になった。)
あー、そいや穂波ちゃん(佳樹の姉)元気かな。今は女子大に通ってバイト三昧だって聞くけど。
……と、ぶっちゃけどーでもいいけど、いやぁな予感がぷんぷんするからあの辺はしばらく行かないとこーって決めたのに。
だから敢えて高校の近くの本屋にまで来たのに。
な ん で そ こ に い る ん だ よ ! ?
久しぶりの休日。そろそろ学校で読む用の本がないなーと思って外に出たのが悪かった。
安全圏だとたかをくくっていた店に、奴らは現れた。
勿論、二人が気がつくより先に見つけたさ。とっさに顔をそむけ、本に夢中ですって雰囲気つくりましたとも。内心気が気じゃない上に、見覚え有りまくる背中に動揺しまくりながらもね!
そしてさりげな~く遠ざかり、さりげな~く唯一の自動ドアに近づきミッション成功!!よくやったあたし!とか思ってたところで
「あれ?ユキちゃん??」
(・_・) (;・ω・) ((((;゜Д゜)))
バレたァーーーー!!!!
いろいろぐっちゃぐちゃだったあたしは名前を呼ばれ、振り向いてしまった。そのままスルーして出ていけば問題なかったはずなのに。なぜ足を止めたあたし!!
しかしこうなってしまえば喋らない訳にもいかない。
要はとっとと話をきって分かれればいい。それに、引っ越してもう6年は経つんだしあたしもだいぶ変わったっていわれるんだからあたしだと認識しないかもじゃん。いけるぞ。
よし。
「はるか!やっほー。約束しないで会うの初めてじゃない?」
自然を装って話しかけると、それはもう嬉しそうに喋る喋る。
……ちょっと。彼氏くん、めっちゃ不機嫌そうだけど。
「ねぇ。ひょっとして、後ろにいるのって彼氏さん??」
「そうなの!ごめんね よしくん。この人が彼氏のよしくん!よしくん、友達のユキちゃんだよ。」
「どうも。はるかがお世話になってます笑」
そうやって友達を茶化しつつあんたとは初対面ですアピールしてたら、あのバカ。
「なんで他人行儀なんだよ。俺だよ、俺。四階の佳樹。
久しぶり、高野。」
「え?なに、二人って知り合い??」
そこで、冒頭に戻る。
あたしが顔をひきつらせてるのに、このバカは昔話をペラペラペラペラ。
こらはるか。あんたも楽しそうにしない。
はぁ…。
しっかし変わったなー、こいつ。
昔はもっと真っ黒に焼けてて髪も普通に短髪だったのにねぇ。
今や茶髪だし、ネックレス派手だし…なんかチャラい。
あーあ、昔のサッカー少年らしさが消えてら。
「してさぁ……なぁ?高野。」
「…………………あのさぁ。あたし、まだ何も言ってないんだけど?」
「え?でもユキちゃん、初対面の人にはそこまでズバズバ言ってないよね。」
「あらはるかさん、それどーゆー意味かしら?」
「えー別に……?」
「なんだよ、そんな俺のこと嫌いになってたわけ。」
「そんなこと言ってないでしょ!もう。わかったわよ。あたしです、正解です!!」
「やっぱり知り合いなんだ!でも、ユキちゃん家遠いよね?」
「こいつ、小5で引っ越したからさぁ。それまでは同じマンションだったんだよ。」
「そーなの?ひどいよユキちゃん!知ってたなら教えてよぉ。」
めんどっ。
てか、話長い終わらない!あたし、とっととおいとましたいんだけど。
……………ふぅ、仕方ない。最終手段!!
「ね、そろそろお昼行きたいから…。
それに、デートの邪魔しちゃ悪いし?」
「えー邪魔じゃないよー!」
「そうだ。昼まだなら、一緒に食わねぇ?」
な ん で す と ! ?
冗談じゃない!なんでリア充共に囲まれながらお昼食べなきゃなの!?しかもかたやド天然、かたやチャラ男にジョブチェンジした知り合いたくなくなったやつなんだけど。ツッコミが追いつかない!
あっちょっと!腕ひっぱらないで!?こら、あんたは面白そうに見んな!!
もうやだこの頭の中お花畑共!!!
………………………こうして。
あたしはしばらくこのバカップル共に振り回される休日を過ごすハメになった。
な ん で こ う な っ て ん の よ ! !
(追)
なお、あたしのヘルプメールに応じなかった友人共と他の幼なじみ(特にあいつの変化を知ってて笑ったやつら)にはしばらく食事をたかったことを記しておく。
こんにちは。
この作品は知人から聞いたコイバナに色んな設定を加えて別の話をつくったものです。はい、1割位本当で7割以上はつくり物です笑
思い付いた勢いで書いたもので………我ながらなかなか変なものになったなぁと思います。
「うわぁ現実にはほとんどありえないわ、これ。」とか考えながらでしたが、書いててすごく楽しかったです(^w^)
読んでくださり、ありがとうございました!