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第一章 プロローグ

なんとなく昭和で推理モノをやってみたく、書いてみました。

さらに言うと、ラノベ要素も含むかもしれません。予めご了承ください。

         ありきたりな探偵のお話。


第一章

プロローグ

現代日本――――能力さえ社会に認められれば、就職ができる世の中。

わずか十六歳にして自身の探偵事務所を立ち上げた少年―――時田護は、護以外誰もいない事務所で、掃除をしていた。季節は、春。

「フム・・・さて。」

事務所の自身のデスクに座りなおす護。

「・・・暇だ。」

そう、暇である。この事務所に来る依頼といえば猫の捜索や、浮気現場の写真撮り。

後者のおかげで恨みを買うのも少なくない。そう言う人には、しっかりとした弁護士を紹介するなどのアフターケアもしている、割と良心的な事務所である。

生活費に関しては、過去に関わった事件の報酬で賄っている。

「さて・・・今日のニュースは・・・」

護は新聞を広げた。

時代は昭和四十年代後半。戦争が終わり、高度経済成長期を迎えた日本は、活気に満ちていた。

事務所には本棚が所狭しと並べられており、そこには教科書、雑学書、医学書、小説や、童話・・・中には学者が見れば卒倒するような貴重な文献もある。

これらは、護と、護の祖父が戦前から集めていたものだ。護の祖父は戦前から田舎の金持ちで、おかげでこの文献も消失せずに残っていたのだ。

世間では三種の神器と呼ばれる家電に対しては、護は興味がなく、事務所につながっている作業部屋には、解体され、すみずみまで観察されたテレビがある。

そんな変人とも呼べる護の事務所・・・時田探偵事務所は今日も閑古鳥が大合唱をしていた・・・はずだったのだが。


 コンコン・・・


木製のドアがノックされる。

「はーい、どうぞ。」

護は、新聞をたたみ、応対する。

「失礼。」

見ると、しっかりとした身なりの老紳士であった。片手には杖を持っている。

「・・・・!」

老紳士は、護の顔を見るなり、目を見開く。

「?・・・どうかいたしましたか?」

「いえ、あまりにもお若いので・・・・失礼ですが、ご年齢は?」

「今年で十六です。事務所を立ち上げたのは・・・十四の頃でした。」

護は、簡易キッチンでお湯を沸かす。

「・・・お茶にいたしますか?コーヒーや、紅茶もありますが。」

「ほう・・・では、紅茶で。」

「分かりました。」護は茶葉を用意する。

「・・・・珍しい、紅茶が日本で飲めるとは。」

「つい最近輸入自由化されたばかりですもんね。安心してください。闇ルートではありませんよ。」

そこまで言うと、護は豆の入った瓶を取り出し、肩をすくめ笑う。

「・・・ま、僕はコーヒー派ですけどね。」

「フフ・・・や、すまない。最近外国から帰ってきたばかりなものでね。お若いのにしっかりとしてらっしゃる。」

「いやぁ、照れますね・・・僕も、十三の時まで外国にいました。そこで、大学を出て、日本に帰ってきたんです。」

「十三歳!?・・・素晴らしい。」

老紳士は目を見開き護の学歴を素直に驚く。成程、確かにそれなら一人でこの事務所を回していけるだけの技量もあるだろう。

護はお湯を沸かし、適切な処理で紅茶とコーヒーを淹れる。

「どうぞ、つまらないものですが、お茶菓子もありますよ。」

護は老紳士の前に紅茶の入ったティーカップを置くと、自身の湯呑に入れたコーヒーを片手にメモとペンを取り出す。

「・・・さて、ご依頼内容はなんですか?」

「・・・ああ、では、取り敢えず私の自己紹介からか。私は、三瀬 玄矢。もうすでに退役したが、元軍人だ。」

三瀬と名乗った老紳士は、一枚の紹介状。そこには、

「・・・ああ、祖父からの伝でしたか。」

そこには護の祖父、時田源一郎の名前で彼の印鑑が押されていた。

護は紹介状を読む。

『護へ

この文を読んでいるということは、俺の知り合いがお前のところへ来ているところだと思う。

その文を持ってきた人物は、俺の友人で、お前の過去の事件を知り、お前の知恵を借りたいと言って紹介をした。

どうか、話を聞いてやってくれ。

よろしく頼む。                       源一郎』

「・・・確かに祖父の印鑑です。承りました。」

「・・・そうかい?!引き受けてくれるかい!?」

「ご依頼内容によって、になりますが。それなりにご贔屓はさせていただきます。」

護は紹介状をたたむと、応接用のテーブルの上に置き、コーヒーをすする。

「・・・・肝心の依頼内容なんだが・・・内容が内容なので、警察がなかなか取り合ってくれないのだよ。」

三瀬は、少々暗い顔つきで、話し始めた。



  三瀬は退役後、老後をひとり静かに過ごそうと、片田舎にある一軒屋を購入した。

不動産店の話によると、過去に曰くのある物件であるそうで、破格の値段で売ってくれるそうだ。

三瀬はそこまで話すと、その家の写真を見せてくれた。

西洋風の洋館だ。片田舎にあるとなれば不自然に思えるほどの広さ。

しかし、値段を聞いた瞬間に、護は片眉を上げた。この事務所よりも安い。

「・・・僕、こっちの方に住もうかなぁ・・・」

「ハハ、それもいいかもしれないね。だけど、話はここからなんだ・・・・その家、村では幽霊屋敷だって言って、誰も寄り付かないのだよ。私も、信じていないんだけどね。

でも、怪しい人間が住み着いていたりしていると困るから、君に捜査を依頼したいのだよ。」

「またまた~。」

「?」

「貴方、何か見たのでしょう?」

「・・・」

三瀬は黙り込む。

「貴方、さっき自分で言っていましたよね。『僕の知恵を借りたい』って。

紹介状にもそう書かれています。ですが、内容に関してだけ言えば、僕じゃなくたっていいはずだ。じゃあ、家に不審者がいた?いや、それは違う。だとしたら、警察がまともに取り合ってくれるはずです。じゃあ、貴方は何を見たのか?」

「・・・やはり、君に頼むべきだったな。」

「それはどうも。ちゃっかり試されてるってわかってましたから。」

「じゃあ、話そう、私が本当に捜査して欲しいのは・・・」

  三瀬は一泊おいて話した。


「悪霊退治だ。」


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