表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残暑見舞い申し上げます  作者: ゆうり
1/1

三十路の俺

残暑見舞い申し上げます


節電の夏ですが、体調を崩さないようほどほどに。モリモリ食べて働いて、お互い頑張りましょう。……


* * *


「宅配便でーす!」

開けていた玄関から、涼しい風とともに爽やかな青年の声が入り込んでくる


いつもなら無視をしているところだが、こんな暑さのなか働いている青年を無視するほどひどい人間ではない。

まあ、玄関が開いているから居留守を使えないというのも本音だったりするわけだが



寝癖がついているであろう髪を適当に整え部屋から4mもない玄関へと向かっていく


「ここにサインをお願いしますー」


「はいはいー」



荷物を持っていた男は俺よりも少し背が小さく、顔が童顔なのか見方によっては高校生にも見えた


「ありがとうございましたー!」


帽子を外しながらお辞儀をして帰っていく宅配便の子を見送りながらドアを閉める。


若いのに、よく頑張ってんなー


届いた荷物をみて、苦笑する。

どうやらこの前ネットで注文したマウスのようだった


あの青年を見たからか、なんとなく高校生時代のことを思い出してしまう



あの頃は、きっとなりたい職業にでも就いて、20代を過ぎたらそれなりに恋人もできて、30歳くらいには結婚していたり。

そんなのが当たり前だと思っていた


でも実際は…


ふとポストを見ると3日、4日ほどの手紙や新聞でごったがえしていた


「うわ…」


新聞、チラシを適当に引き抜き手紙とはがきだけを見ていく


コンタクト、車、歯の検診、サプリメント。

機械的なハガキの中から見つけた、1枚のかき氷がプリントされたハガキ


もしや…と思い裏返してみると

表には、「残暑見舞い申し上げます」


…宛先は去年と変わらず東京。春野深月という名前を見つけた。名字が変わっていないことにひとまず安堵していると


手元からポトリとハガキが落ちる

手紙とハガキの間に別のハガキが挟まっていたらしい。


「高校の同窓会…」


日付は9月5日。彼女もくるだろうか

いいや、同窓会のようなものは好きじゃなかったはずだ。


え、待て9月5日…?今日!?


おいおいまじかよ…なんだこのハイスピードな同窓会は…俺が4日くらいためていたからか?いや、それでもハイスピードだろう。



まあどうせ、行く気はないのだけれど

行ったところで笑われるだけだ



30代にもなって家でできる仕事だけを選び、婚約者どころか恋人さえいず、人と関わろうとさえもしない俺なんて




* * *



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ