入学式
「チビのくせに調子こいてんじゃないわよ」
――――――――その一言が、私の心に釘を刺した。
ザワザワ…
時は四月の入学式、場所は市立荒川中学校。
私、能登 里子は、今日からこの学校に入学する。
私の所属クラスは、1-A。
1学年は全部で6クラス、A~Fクラスまである。
担任になったらしい、清田 吉伸先生が、この学校の校則を説明し始める。
四角いメガネをしてさっぱりとした短髪で、年は……40代後半ぐらいだろうか。
「~…昼食はお弁当を各自持参してください。これから新しい教科書を配りますね。一応中をパラパラっと確認してから、名前を記入してください」
そう先生は告げると、どんどん教科書を列の先頭に積み上げていった。
――――――――友達できるのかな
それが、不安だ。
私は超がつくほどの人見知りで、小学校のころから友達が少ない。思ったことをうまく言葉で表現できずに、周囲をイライラさせてしまうことが度々ある。暗くって、しかも身長が低い。勉強や運動もそんなにできるわけでもないし、何かクラスの中心的存在になったこともない。
私はこれといった何かがない、つまらなくって一緒にいるとテンション下がる、へたすればいじめられてもおかしくないのだ。
強いて何かできると言ったら、…バレーボールかな。
中学でも、バレー部に所属するつもりだ。
私は小学校の時に、近くのバレーボールチームに所属していた。
小学2年生のときに、親が「小さい時から体を動かしていた方がいいから」、と”日動バレーボールクラブ”というところへ入ったのだ。
入りたての頃は、全然うまくならなかった。
毎週 月・水・土の週に3回、練習があった。
コーチに教えてもらったとうりにやっても、なかなか上達しない。2,3年生チームでは万年補欠だった。
2年続けた4年生のころ、4,5年チームの5年生を追い抜き、レギュラーの座をとった。
背が低いのもあってか、レシーブを主に任され、リベロやバックの位置にたたされた。
その頃は楽しくて楽しくて、週に3回のバレーの日が待ち遠しくて仕方がなかった。
6年の最高学年になると、レギュラー争いが激しくなった。
ほかのクラブチームに移転する人もでてきて、大会ではその元同じチームだった子と戦うのが、怖かった。
中にはレギュラーメンバーの私たちの悪口を言ったり、いやがらせをしたりする人もいて……
―――この話はやめよう。
他に好きな事と言ったら…
一人いるのが好き。本が大好きで、好きなファンタジーのジャンルの物語なら、何時間読んでいてもあきない。ファンタジーは私にとってものすごく魅力的だ。私とは対照的な主人公が、異世界に紛れ込んで冒険したり、友達をつくったり、悪者をやっつけたり…。
アニメも好きだ。オタクが見るような萌え系アニメから、ガンダム等のロボット系アニメも大好きだ。
何を隠そう私は幼い美少女とグロい画像や動画が大大大好きだ。
13歳の中学1年生にして、ド変態なのである。
好きなアニメは『もえツイン』だ。
登場人物は小学生のふたご、「ふたは」と「つには」。二人とも超かわいくてたまらない!もえもえ!ツインテールを揺らしながら微笑む姿は天使に等しい。
ツインテールの少女が好きになったのも、この影響だ。
でもやっぱり1番好きなのは、「新世紀エヴァンゲリオン」だな。
私の好きなグロと美少女中学生が同時に観賞できる素晴らしい作品だから。
たまらんね、あれは。
私が好きな少女の年齢は、ちょうど今の自分、中学生だ。
中学生活の楽しみなこと9割は占めているといっても過言ではない。
はあぁぁあぁぁぁああぁぁ~~~~~これから3年間女子中学生たちとの生活がはじまるなんて…!!
楽しみいい~~~~!!!!!
ひゃっふうぅううぅぅっぅうぅうーーーーーーーーーーーーーー!!
(>_<)\(゜ロ\)(/ロ゜)/(゜∀゜)(≧∀≦)Σ(゜□゜)(@З@)
…いや別に男の子に興味がないってわけじゃないけど……
好きなアニメや漫画のイラストをまねてかくのも好き。やっている教材のお便りコーナーには必ず毎月投稿して、掲載されたときにはものすごくうれしい。
自分で考えたマンガをかいてみたり、イラストをかいたり…私の部屋にはそんなのがかいてあるノートでいっぱいだ。
そんなときが、私の至福のひととき。
ていうか今ので読者全員私のことドン引きしたでしょ絶対。
キモい、ロリコンオタク~とか言われても別にいい。同年代の女の子でこんなのが好きって子はいないなんて分かってる。
いくら一人が好きといっても、友達だって…少しは欲しい。
小学校のバレー仲間で、一番仲の良かった子とは違うクラスになっちゃったし…。
ばさばさっ
私の机から教科書が落ちる。
いけない、ボーっとしちゃってた…あんまり長い時間、考え事をしてしまうと、周りが見えなくなってしまう私の悪い癖だ。
「大丈夫?」
前の席の子がわざわざ立ち上がり、落とした教科書を拾ってくれる。
「あ、ありがとう…」
小さな蚊のなくような声で礼を告げ、きゅっ、とうつむいてしまう私。
激・人見知りのせいでまともに相手の顔を見れない。
下を向いたまま教科書を受け取る。
……気、悪くしたよね…
ちらり、と相手の顔を伺う。
――――すると相手の子は、まだ笑顔のまま私の方を見ていた。
その子は二重の瞳を三日月型にゆがませ、ピンク色の唇の端を頬とともに上へあげていた。
その態度にはびっくりしたが、思わず顔をまじまじと見てしまう。
キラキラと春の日差しに反射した瞳は、ずっと見ていると吸い込まれそうだ。その淵には、長いまつ毛が誇らしげに生えている。
ぷくっと可愛らしく膨らんだ唇は、潤いがありとてもやわらかそうだ。 唇とともにつりあげられた頬は、白く、ハリがありとてもきれいだ。
すっと鼻筋の通り大人びている顔に、耳にかけたショートヘアーはとてもよく似合っていた。
……美人だなぁ…
「どういたしまして」
優しく落ち着いているようで、でもよく通る声。
わざわざ立ち上がって拾ってくれたので、肢体も目にはいる。
すらりと伸びた背丈、白くて細い、カモシカのような手足。
引っ込むところは引っ込んでいて、出るところは出ている。あたかもモデルのようだ。
私の理想のスタイルだった。
私の理想どころか、全女子中学生のアコガレの容姿だろう。
…うらやましいなぁ
「うち、富永 桃子。よろしくね。名前、なんていうの?」
私がガン見していたのを、自分に興味を持ってくれたと感じ取ったのか、その子がハキハキと自己紹介してくれた。
私は顔を赤く染めながらも、
「のっ、能登里子です…」
と答えた。
富永桃子さんは、美しいその笑顔を崩さずにさらに問うた。
「里子ちゃんね。何小出身なの?」
「えっと、堀之内小学校…」
「ここの中学校って、堀之内と、東邦、久下坂、の3つの小学校からくる生徒が多いんだよね」
「う、うん」
「やっぱり。 うちは今年からここに引っ越してきたんだー。だから、友達もいないしさ…。里子ちゃんが後ろの席でよかったな」
「え、あ、そ、そんな…」
今の席順は、名簿順だ。
「里子ちゃんって、部活動何入るの?」
「あ…えっと、バレー部かな」
「え~!うそ、本当!?」
こんなおとなしそうでチビな人が、バレーをするのなんて意外なのだろう。
ちょっと悲しくなったが、桃子さんは次にこう続けた。
「あっ、別に嫌味で驚いたとかじゃなくて……うちも、バレー部に入ろうと思ってたんだよね~!」
驚いた。
「そ、そうなの…!?」
「うん!うちって背高いとか周りに言われるしさ~、バレーって楽しそうじゃん! ―――里子ちゃんは?なんでバレー部に入ろうと思ったの?」
「あ、あのね、私、小学校からバレーしてて…」
「え、じゃあ経験者なんだ~!すごいね、里子ちゃん!」
「いや、そんな…」
そうなんだ。
桃子さんもバレー部に…。よかった、同じクラスにバレー部希望の子がいて…
教科書やテキストに名前を書き、お母さんに買ってもらった新品のスクールバックに入れる。
それで今日の学校は終わり、下校となる。
「じゃあみんな。明日からは授業や仮入部も始まるからな!本格的に中学校生活が始まるぞ~!
がんばっていこうな。じゃあ、さようなら」
「「「さよーならー」」」
はあ。
明日から始まるのか―・・・。
玄関で靴を履きかえていると、桃子さんが後ろから話しかけてくる。
「じゃあね!また明日」
……また、明日…
その一言で、なんだかやる気と希望がみなぎってきた。
中学生活、萌え萌えしてやる!
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