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聖女の唄う鎮魂歌  作者: Allen
最終章:聖女の唄うレクイエム
135/135

総括

エピローグと同時投稿です。












 お疲れ様でした。

毎度おなじみ、作者のAllenと申します。

いつも通り名前は全角です。


 今作『聖女の唄う鎮魂歌』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

もしも読まずにこの『総括』だけを読んでいる方がいましたら、ネタバレに注意してください。

今回は試験的に二作同時連載と言う形を取っていましたが、何とか完結まで書ききることができました。

ここまでの応援、まことにありがとうございます。



 今回も総括では、今作に関するちょっとした話をして終わりにしようと思います。

ラインナップはいつも通り。


・ストーリーに関するコメント

・キャラクターに関するコメント

・次回作の話


 恒例の話ですね。では、ストーリーに関して話をしていきましょう。






















・ストーリーに関して


 コンセプトは『死生観』、『超越者同士の対立』、『人間から見た超越者』。

滅びに瀕した世界で、奇妙な決まりごとに縛り付けられながら生きる人々と、その枠を外れて己の願いのままに生きる超越者の対比。

今回は、これまでの作品とは違い、最終決戦以外でも超越者同士の戦いを描いていました。

より超越者という存在にスポットを当てた作品となっています。


 これまでの作品を読んでくださっている方は理解していると思いますが、この世界は《白銀の魔王》と《黄金の女神》が管理する世界の一つ。

ただし、管理権はジュピターたちに渡されており、彼らは直接の干渉はしていません。

こういった正と負のバランスが崩れた世界では比較的超越者が生まれやすく、そういった存在の中でも世界と同化した存在が上位神霊と呼ばれ、人類の側に立って戦っていました。

超越者の数ではこれまでの作品でも随一だったかと。


 今回の元ネタとなっているのはギリシャ神話。

ジュピターはゼウス、ヴァルカンはヘファイストスなどなど。名前も殆ど別名みたいな所から取っているので、知っている方はすぐに分かったかもしれません。

なお、この世界にも同種の神話があります。むしろ、かつてのジュピターたちをモデルにした話であると言ってもいいかもしれません。

カインがタナトスだの死神だの言われていたのはその辺が元になっています。


 今回は、主人公が最初から《回帰リグレッシオン》可能、力の成長度合いも既に《超越ユーヴァーメンシュ》に片足引っ掛けているというような状態でした。

記憶さえ戻ればいつでも超越者になれるという、成長要素の殆ど存在しない主人公です。

その分だけ、より長く超越者という存在の生態に触れることが出来たかと思いますが。


 願いを掲げ、自分自身を昇華させようと戦い続けるカイン。

 祈りを捧げ、寄り添ってくれる他者を求め続けるリーゼファラス。

 呪いを抱き、自分自身のために他者を犠牲にしようとするアルベール。


 今回登場した超越者たちは、三者三様の願いを持っています。

印象的だったのは、カインとリーゼファラスの在り方の違いだったでしょうか。

己自身を核とするカインはどこまでも一人で歩み、成長することが出来ます。

それに対し他者を核とするリーゼファラスは、己自身では成長できない代わりに、誰かを護るためか誰かと共に戦うためであれば大きく成長を遂げることが出来ます。

昔の作品で言うならば、前者が煉で後者が誠人でしょうか。

ただしこれに関しては、別段どちらが強いと言うわけでもなく、結局は願いの強度が強さに反映されます。

超越者がすべからく狂人であるのは、狂人となるだけの強い願いが無ければ超越者になりえないためですね。











・キャラクターに関して


・カイン


 今作主人公。黒衣の死神。タナトス。誰よりも真摯に、真剣に生きる殺戮者。

名前の由来は、『世界最初の殺人者』カインから。

恐らく全人類の中で最も真剣に“死”と言う事象と向き合い、そしてその尊さと美しさに魅せられた存在。

しかし彼は《安寧の聖女》ネルと出会うことで、“死”という事象の異なる側面を知り、そして真の意味で“死”そのものと向き合うようになりました。


 カイン自身の願望はあくまでも己自身が死を迎えること。

けれど、“死”を尊ぶが故に、己の胸の中で死した己の親しき人間であるネルの遺言を違えることが出来ず、その果てに矛盾を抱えたまま心が擦り切れるまで戦いを続けることになりました。

その矛盾ゆえに願望と能力の間で矛盾が発生していましたが、記憶を取り戻してからは純粋に“死”という事象と向き合うことが出来るようになりました。


 カインの願いは『死神となること』。

それは即ち、自分自身が“死”という事象そのものになること、この世の全ての“死”を支配できる存在となることです。

ネルによって死ぬことを禁じられたカインにとってはそれ以外の選択肢など無く、己の願いをひたすらに貫いて戦い抜きました。

あまりにも己の道に真剣すぎて、アルベールにも救いを与えることになりましたが。


 パーティ内では、トラブルメーカー兼兄貴分として目立っていました。

後半およびエピローグでのウルカはカインに大きく影響を受けており、不敵な笑みも彼に引き継がれています。

かなりの問題児ではありましたが、強敵の前でも一切己を崩さぬその強い在り方から、信頼されていた面も強かったでしょう。






・リーゼファラス


 今作ヒロイン。最強の聖女。アテナ。女神を信奉し、己の理解者を求め続けた少女。

名前は、『リーゼ』という愛称をつけようと決めていたので、そこにパラス=アテナの『パラス』をもじった語をつけました。

物語の開始時点では世界と同化していない超越者であり、超越者としての狂気を示すような存在。

そして後半に入ってからは、己を理解し傍にいてくれる存在を求める者として描きました。


 リーゼファラスは己の願望を完全に理解しきってはいませんでしたが、その在り方自体は昔から変わりませんでした。

リーゼファラスが最初に超越に至ったとき、掲げていた願いは『女神を護る楯となること』。

しかし、実際のところ、これは『己を理解してくれる誰かを護る楯となること』であり、本質の部分では変わらないながらもリーゼファラスの理解とは異なっていました。


 リーゼファラスの願いは、その潔癖症からも表れるように“尊きものが美しくあり続けられる”という点が核となっています。

触れたものを水晶へと変える力は、リーゼファラスにとって護るべきものが僅かでも穢れていることが許せないから。

誰かを護ろうという意思が現れているために、その力の大半は防御に割り振られています。

結果として、リーゼファラスの存在は『触れたものを水晶へと変える楯』となっていたと言えるでしょう。


 パーティ内では最後の砦としての役割。彼女がいるだけで安心感が違います。

あんまりヒロインらしからぬヒロインでしたが、最終的にはカインといいコンビになっていたかと。

もうちょっと派手にカインと戦っていても良かったかな、とも思います。






・ウルカ


 もう一人の主人公。上位神霊ヴァルカンの契約者。諦めない反骨の意思と、未熟故の柔軟さを持つ少年。

名前はヘファイストス、ヴァルカンと同一視される存在である『ウルカヌス』から。

上層嫌いの少年であり、自らが強くなること、そして両親を傷つけた上層の人間を見返すことを目的としていました。

その過程でミラと出会い、自らが戦おうと思った根本を再確認し、その上で戦う覚悟を決めました。


 ウルカの根本となったのは、苦労しながらも自分を育ててくれた家族を護ろうとする意思です。

上層への反抗心はその感情から派生しており、あくまでも両親に恥じぬ己であることを重要視しているため、直接的な敵対行動に出たことはありませんでした。

最終的にミラも護るべき対象として認識していましたが、少年らしい憧れの強い感情だったと思います。


 ウルカの振るう力は上位神霊ヴァルカンの力。

ヴァルカンの作り出した武器ならばどれでも扱うことが出来、好んで使っていたのは大型の双剣でした。

最終的に使えるようになった《神威転身》では、炎からありとあらゆる武器を作り出し、扱う能力を得ていました。

ちなみに、作り上げた左腕の義手は《神威転身》を発動していなくても動かすことが出来ます。


 パーティ内では未熟な少年としての立ち位置。

ウルカとミラは普通の人間から超越者を見るための視点という役割もあったため、主にカインを観察する視点として動かしていました。

憧れる対象としてはあまりよろしくない相手だとは思いますが。






・ミラ


 ウルカに対するヒロイン。上位神霊ジュピターの契約者。気高く誇り高い意思と、相手を思いやる優しさを同時に持つ少女。

名前の元ネタは特になし。『ケラウノス』という語を後ろにつけるのに語呂がいい名前を考えました。

誇り高く、己が力を持つ者であるという自覚を持ち、力無き者は護らなくてはならないというノブレス・オブリージュを体現したかのような人物。

若干ながら傲慢になっていた部分があったものの、ウルカの言葉と、自分よりも圧倒的に高い力を持つカインやリーゼファラスとの出会いで矯正されました。


 ミラが掲げているのは、力ある者としての義務感です。

武に長け、強き契約者であることを求められながら育てられたミラは、力があるが故に力無き者を護らねばならないと考えています。

そんな中で、力無き者の象徴である下層の出でありながら、己と同じく上位神霊の契約者であるウルカの姿は、より鮮烈に映ったことでしょう。


 ミラの振るう力は上位神霊ジュピターの力。

雷霆ケラウノス》の名の通り、空を多い尽くすほどの雷を操ることが出来ます。

《神威転身》を発動した場合には、己自身が雷と同化して戦闘を行うことが可能となっていました。

消耗に関しては常に力が発動し続けているため、ウルカの《神威転身》よりも高いものとなっています。


 パーティ内では知識を持つ者としての解説役がメインだったでしょうか。

また、ウルカと同じく一般的な感性を持つ人間としての視点と同時に、リーゼファラスを見つめる役割も負っていました。

彼女は欠片を持たぬが故にリーゼファラスの理解者とはなれませんでしたが、良き友であったと思います。






・アウル


 サブヒロイン。生粋の殺人鬼。人の断面に性的興奮を覚える精神病質。カインとリーゼファラスを繋ぐ絆。

元ネタは、アテナの従者であるといわれるフクロウオウルから。

人を害する刃であり、欠片を持つ者らしい狂気に身を浸した存在。

人間の断面を見たいという願望の強さゆえに、永遠に再生し続けるカインやリーゼファラスに強く惹かれていました。


 アウルの持つ願いは、『美しきものを目にしたい』というもの。

アウルにとっての『美しきもの』、或いは『綺麗なもの』というのは、言ってしまえば人間の『中身』です。

切り裂いた人体だけでなく、カインたちの超越ユーヴァーメンシュもまた、アウルにとって求めるものの一つでした。


 アウルの力である《分断ディヴィディエート》は、あらゆる流れと繋がりを断ち切る概念です。

流れや繋がりがある物は、アウルは一目で見分けることが出来ます。

そして見分けたものは、彼女の力で簡単に斬り裂くことが出来るわけです。

しかし彼女の場合、願望が三大欲求に結びついているため、超越ユーヴァーメンシュには至りませんでした。


 パーティ内では超越者側でも人間側でもない、中庸的な立ち位置にいました。

人間の感性を持っているわけではなく、けれどどこか親しみやすい。

パーティ内の繋がりをスムーズにすることが出来る、重要な役割だったと考えています。











・次回作の話


 次回作については、既に構想は完了しています。

プロットについても一章と二章程度は完成していて、書こうと思えばすぐに書き始められる状況です。

まあ、今回はこの一作に集中するつもりなので、まずはBBOを完結させるつもりですが。


 次回作のキーワードは『転生』、『現代魔法』、『クトゥルフ神話』。

最後辺りに妙なキーワードが混じってますが、これまでと同様に神話要素はエッセンス程度です。

魔法のある現代日本に転生した主人公があーだこーだ、といった感じの話になる予定です。

BBOの総括にはプロローグの一部程度でも乗せようかな、と思っているのでよければどうぞ。











 今作もそれなりに長くなりましたが、『聖女の唄う鎮魂歌』はこれにて完結です。

ここまでご愛読いただき、まことにありがとうございました。

よろしければ、BBOか、また次回作でお会いしましょう。


 ではでは。





















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