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聖女の唄う鎮魂歌  作者: Allen
1章:始まりのエチュード
1/135

00:プロローグ












 《奈落の渦》――そう呼ばれる存在がある。



「はっ、ははははははははははははははははははははははッ!」



 一人の男が、哄笑を上げる。

手入れのされていない黒い髪は腰まで伸び、その奥に輝く漆黒の双眸は、破滅の狂気に歪んでいた。



「どうしたよ、塵屑共。わざわざ来てやったんだ、人間の一人や二人殺す事ぐらいは容易いんじゃなかったのかァ!?」



 黒いロングコートは裾や袖口が破れ、男の手首足首を若干覗かせている。

そんな彼の両手に握られていたのは、二種類の似ても似つかない武器だった。

右手に握られているものは、漆黒の片手剣。内側に沿った奇妙な形状のそれは、ファルクスと呼ばれる武器によく似ていた。

そんな古臭い武器を持っている右手に対し、左手に握られているのは銀色の拳銃。

魔力銃と呼ばれる、魔力をエネルギー化する技術を用いた最新の武器――否、兵器であった。

そして、それが向けられている先にいるのは――



『GiGiGiGiGiGiGi……』



 ――無数にひしめき合う、黒い魔物だった。

様々な形状のものが存在しているが、もっともよく目につくものは虫のような姿をしている。

黒く節くれ立った足は計十本、その関節の数はそれぞれ三つずつ存在している。

その足の先端は鋭い刃のような形状をしており、突かれれば人体などひとたまりもなく貫かれてしまうだろう。

何しろ、その虫の体高は人間の顔の高さほどもあるのだから。

足の生えている胴体は流線型であり、非常に硬い甲殻を纏っている。細い足に対してひどくアンバランスな形状であるが、その体がバランスを崩すような事はなかった。

胴体の先端についている口は、正面にいるエモノに喰らいつこうと、ガチガチとその牙を鳴らしていた。


 見渡す限りを埋め尽くす、漆黒の波。

黒い魔物の群れ――三十年前に現れた、この世を覆い尽くす災厄。

崩落した地面に広がる漆黒の空間より現れるそれらを、人は《奈落の渦》と呼んでいた。

一体どれほどの数がいるのか。それは、それらの正面に立つ男にも、数える事などできなかった。



「景気いいじゃねぇか。お代わりは十分ありますってか?」



 呟く男の周囲には、既に無数の死骸が転がっていた。

それは、この黒い魔物たちのものでもあり、そして人間のものでもある。

《奈落の渦》を抑える戦場の最前線、突如として湧き上がった無数の魔物達により、既に戦線は崩壊してしまっていたのだ。

味方は全滅したか、あるいは既に撤退しているか。どちらにしろ、この場に味方がいない事に変わりはない。

けれど男にとって、それは至極どうでもいい事であった。


 現れている《渦》の魔物は、《兵士ミーレス》と呼ばれる最下級のもの。

訓練した人間が三人がかりでようやく一体倒せるというレベルの存在だ。

人間が一人いた所で、戦局が覆るはずもない。

けれど――男は、どこまでも楽しげに笑いながら、その左手を上げていた。

銀色の拳銃が、鈍く光を反射する。



「ならこっちも……腹いっぱい食わせてやるよッ!」



 刹那、無数に連なる轟音が周囲に響き渡った。

魔力の弾ける光と共に、銀色の軌跡を刹那に描いて無数の弾丸が宙を駆ける。

男の手に握られた銃は、マシンピストルと呼ばれる分類に属するものだったのだ。

けれどそこから放たれる弾丸は、それに用いられるような小さな魔力弾シェルではない。

一撃で《渦》の魔物を屠るために用いられる、マグナム用の大口径の弾丸だった。

その強烈な反動を左腕の力だけで抑え込みながら、男は横薙ぎに銃を振るう。

ただそれだけで、向かってくる魔物たちは次々に砕け散り、その地面に身を散らせた。


 ――しかし、数は一向に減らない。



「相変わらず無っ駄に多いなァ、おい」



 いくら一発の弾丸で一体の敵を倒す事が出来たとしても、総数が違いすぎる。

圧倒的な物量で押し潰す――《奈落の渦》とは、そういう魔物なのだから。

故に男がどれだけ優れていたとしても、一人でその軍勢に太刀打ちできるはずがない。

だというのに、彼にはそれらを恐れる様子も、そしてその場から引く様子も一切存在していなかった。

それどころか、その口元に愉快そうな笑みを浮かべ、徐々に近づいてくる魔物達を見つめている。



「さて、それなら――」



 そしてあろうことか、男は銃撃を止めてその左腕を下ろしてしまった。

それと共に、今まで弾丸によって抑えられてきた軍勢が、その抵抗から逃れて一気に男の元へと殺到してゆく。

対し、男が構えたのは右手の剣だった。

それは、普通に考えれば正気の沙汰ではない選択だろう。《渦》の魔物は、単体でも十分強力な存在だ。

普通の剣など通用しないし、無数の群れを相手に剣一本で出来る事など存在しない。

あっという間に押しつぶされ、喰らい尽くされるのが精々と言った所だろう。

にもかかわらず、男は笑みと共に、まっすぐと魔物を見つめて声を上げる。



「――楽しませて貰うとしようか!」



 一匹、突出してきた黒い魔物。それに対し、男は正面から剣を叩きつけていた。

弱い弾丸なら弾き返してしまう《兵士ミーレス》の強固な外殻――それを、男の刃はいとも簡単に両断していた。

真っ二つに分かれて死滅した魔物を背に、男は駆ける。無数の黒に埋め尽くされた荒野へ向けて。



「はははっ、はははははははははははッ!!」



 その剣戟と銃撃と哄笑は、大地を踏みしめる無数の音にかき消されていったのだった。











 * * * * *











 《神霊契約》――そう呼ばれる力がある。



「よう坊主、今日も精が出るじゃねぇか」

「あ、どうも。おはようございます」



 雑多に建物が立ち並び、その間を慌ただしく人が行き交う街角。

その一角に、小さな空地が存在していた。

ぽっかりと空いた穴のようなその場所からは、遥か高みに存在する神殿を望む事ができる。

城塞か、あるいは尖塔か。その美しき白亜の建物は、変わらず周囲を見下ろしている。


 そんな小さな空地で、一人の少年が木剣を振るっていた。

年若く、十代に達したばかり程度の赤毛の少年。

そんな彼の年相応の幼い容貌は、近づいてきた男性を認めて笑みの形に変化する。



「剣を見てりゃ分かるが、すっかり上手くなったじゃねぇか」

「僕なんてまだまだですよ。でも、その言葉は素直に受け取っておきます」



 謙遜しながらも、少年にはそれなりの自負が存在していた。

それは本来、長い時間己を磨き上げてようやく得られる自覚。

しかし、少年のそれは、子供の背伸びと断ずるにはあまりにも完成され過ぎていた。

年を二倍にしてようやく得られるはずの自信をあっさりと身に着けている少年に、男性は若干の苦笑を浮かべる。



「さすが、才能って奴かね……お前さんは神霊とも契約してる訳だし」

「……はい」

「何だ、相変わらずそれは好きじゃねぇのか?」



 男性の言葉に、少年は僅かに逡巡した後、こくりと頷いた。

少年は、僅かながらに顔を伏せつつ、自分の掌を見下ろす。

《神霊契約》――それは少年に力を与えているのと同時、少年に苦難を強いているものだったから。



「僕も、この力に感謝していない訳じゃないんです。おかげで戦う事が出来る……そうすれば、きっと」

「まあ、お前さんにはお前さんなりの目的があるんだろうが、仮にも神様から頂いたモンだろう? そんな言い方して大丈夫なのか?」



 その言葉に、少年は小さく苦笑を零す。

一つは、目の前の男性に対して。そしてもう一つは、自分に力を授けた存在に対して。



「彼は、そんな事をあんまり気にする人じゃないんです」

「へぇ、上位契約者様ともなると、神様とも結構親密なのか……っと、悪いな。別に皮肉るつもりじゃない」

「いえ、分かってます」



 《神霊契約》とは、神霊と呼ばれる存在と、人間が結ぶ契約を指す。

契約を結んだ人間は、神霊に対して己の魔力を奉げる事で、その力の一部を借り受ける事が出来るのだ。

神霊も様々なものが存在しているが、その最上位に存在するものたちは上位神霊と呼ばれている。

そして、この少年が契約を結んでいるのは――



「火と鍛冶の上位神霊、ヴァルカンねぇ……この国じゃ、ジュピター様が最も知られてるだろうが、やっぱスゲェ力なんだろ?」

「はい、それは確かに。男の僕が契約を結べたのは、殆ど奇跡だと思います」

「何で上位神霊ってのは女と契約する事を好むんだろうな?」

「さあ、それは僕にも……直接聞いた事は無いですし」



 契約にはそれ相応の資質が必要であり、特に強い力を持つ神霊と契約するには、女性のほうが適正が高いという認識がされている。

しかしどちらにしろ、強力な神霊と契約できるものはごく僅かであり、弱い神霊が相手だったとしても、適正が無ければ契約する事は叶わない。

それこそが、少年がこの力を嫌う理由であった。



「ヴァルカンも……この仕組みの歪さは、そしてそれによって生み出されてしまった格差は好ましくないみたいでした」

「成程な……お前もお前で、肩身の狭い思いをしてる訳か」

「お互い様ですよ。僕は、自分の境遇を不幸だとは思わない。こうして契約できたのは、幸運だと思ってます」



 けれど、と。小さな呟きが宙に溶ける。

見上げた視線の先、聳え立つ白亜の尖塔。そこを睨み据えるようにしながら、少年は小さく声を上げた。

深く暗い、憎悪のような感情を滲ませながら。



「僕は、契約者が強権を振るって、非契約者を追い立てるような真似をしているのが許せない……ただ、それだけです」

「……ま、この辺の連中は、お前が俺たちの為に頑張ってくれてるのを知ってるよ。お前が契約者だからって、僻むような真似はしねぇ」

「ありがとうございます。皆が見守ってくれてるから、僕も頑張れる」



 男の言葉に微笑み、少年は纏う憎しみを霧散させた。

とたんに現れる年相応の表情に、男は僅かながらに安堵の息を吐く。

改めて、この少年は多くのものを背負っているのだと言う事を実感したのだ。

世界は歪だという彼の契約神霊の言葉に、男性は胸中で同意する。

何故こんな少年が、そこまでの物を背負わねばならないのか――そんな事を、考えながら。



「おう、頑張ってくれよ。師匠にいい所見せてくれ」



 この少年の闇を払える人間が現れる事を祈り、彼に剣を教えた男は、静かに白亜の神殿を見上げていた。











 * * * * *











 《下層》――そう呼ばれる場所がある。



「はぁ、はぁ……ん、ふぅ……ふふっ、あはは」



 ぴちゃぴちゃと、粘つく水音が薄暗い路地に響き渡る。

そこには、一人の少女の姿が存在していた。

ウェーブのかかった長い銀色の髪を全身にまとわり付かせ、上気した表情で地面に座り込みながら、手に持ったものを舐め回していた。

陶酔した表情の奥には確かな劣情が存在しており、その美しい外見も相まって、その場に男がいればさぞ魅了された事だっただろう。

だが、この場に男はいない――今は、もう。



「ああ……いい、中々いいですね、あなたは……ふふっ、素敵です。苦労した甲斐がありました」



 左手は己の下着の中に潜り込ませ、そして右手にはある物を掴んでそれに舌を這わせながら――少女は、血溜まりの中に座って自分の世界に入り込んでいた。

辺りに散らばるのはバラバラに切断された人間の死体。

細切れと言うほどにその身体は綺麗に、鮮やかに切断されている。

少女は切り落とした腕の断面を舐め取りながら、満足げな表情で自分を慰めていたのだ。

その異様な光景は――いっそ、倒錯的な美しさすら感じるほどのものであった。


 ――と、そこに一つの足音が響く。



「これはまた……随分と治安が悪い場所ですね」

「――――っ!?」



 瞬間、ぎゃり、と――金属が擦れるような音と共に、銀髪の少女の姿が血だまりの中から消え失せる。

否、彼女は瞬時に飛び起き、その声の響いた方へと駆け出していたのだ。

彼女の手に握られているのは、肉厚な大型のナイフ。血錆に塗れたその刀身は、先ほど人間を解体していた武器である事を窺わせる。

少女の顔に浮かんでいるのは、驚愕と歓喜。ここまで接近に気付けなかった事と、新たな獲物を発見できた事。

僅かな月明かりの中に浮かび上がる新たな獲物は――長い金色の髪を揺らす、一人の少女だった。

その美しさに少女は息を飲みながらも、瞬時にナイフの刃を少女の首へと叩きつける――



「――これは驚きましたね」

「な――」



 ――だが、その刃は澄んだ音と共に受け止められていた。

その光景に、何よりも刃を放った少女が驚愕する。ただ受け止められただけならば、決して驚きはしなかっただろう。

すぐさま次なる攻撃へと転じ、目の前の獲物を解体しにかかった筈だ。

ならば何故、彼女は驚愕に動きを止めてしまったのか――単純だ。

何故ならその獲物は、手の甲で刃を受け止めていたのだから。



「誰に学んだ訳でもなく、その身のこなし。私と同じ才だけでなく、戦いの才にも恵まれているのですね」

「っ、く――」



 その以上を認識し、少女はすぐさま身を翻そうとする。

ただの一撃、それだけで敵わない・・・・と理解してしまったのだ。

しかし、その刃は伸ばされた左手によって掴み取られ――次の瞬間、その小さな手によって握り潰されていた。

少女は再び驚愕に目を見開き、その刹那――



「少し大人しくなさい」

「ぁ、ぐぅっ!?」



 一体どのような力で武器を破壊されたのかを認識する暇も無く、地面へと叩きつけられていた。

痛みに喘ぎながら、それでも相手から目を離さぬようにと見上げた姿――それに、少女は動きを止める。

右には銀、左には蒼。二色の、あまりにも美しい瞳。

その美しさに、少女は見蕩れてしまっていたのだ。例え相手が、自分の事を一撃で葬り去れるような力の持ち主であったとしても。

水晶の様な輝きを持つ彼女の全てを、美しいと感じてしまっていたのだ。



「下層が嫌いという訳ではありませんが、ここまで治安が悪い場所はあまり好みませんね……けれど、あなたのような拾い物が出来るなら、それも悪くない」

「ひろい、もの……?」

「ええ。非契約者、神霊の力を得られなかった者が押し込められる場所……例えそうだとしても、あなたのような魂の輝きを持つ者は必ずいます。私は、あなたのような人間を探していたのですよ」



 鈴を鳴らすようなその声音に、少女は震える。

本能が告げる、決して勝てない相手。あまりにも巨大すぎて、危機感すら感じ取れないほどの差。

それを理解しながら、少女は歓喜を覚えていたのだ。

褒められたからではない、必要とされたからでもない。

――ただ、その美しさに魅入られていたから。



「私と共に来なさい、殺人鬼の少女よ。そうすればあなたに、望む景色を見せてあげましょう」

「望む、景色……」



 ああ、それならば、と。

血と泥に塗れ、それでも銀の髪の奥に紫の双眸を輝かせながら、少女はその手をゆっくりと伸ばす。

まるで、天に向かって手を伸ばすかのように。



「私は、もっと……綺麗なものが、見たいです」



 それが、銀と蒼の輝きに魅せられた少女の言葉。

その伸ばされた手を――美しき少女は、金の髪を揺らしながら、血に汚れる事を気にも留めずに握っていた。



「ええ、魅せましょう。いつの日か、至高なる黄金の輝きを」



 そうして金と銀の二人の少女は、見放された者の集う下層と呼ばれる場所で、一つの契約を交わしたのだった。











 * * * * *











 《正印教会》――そう呼ばれる組織がある。



「――面を上げよ」



 広間に、幼いながらも威厳のある声が響く。

その言葉に、跪いていた一人の少女が視線を上げた。

色素の薄いプラチナブロンドの長髪を右の側頭部で括り、その蒼い瞳は天を仰ぐかのように、その声の主の方へと向けられている。

そんな彼女のいる場所から遥か上段――そこには、一人の幼い少女の姿があった。

けれど、そんな少女から放たれる気配は、この広間を隙間無く埋め尽くすほどに強大なものだった。



「誇れ、ロズィーアの娘よ。お主はその高潔なる魂と強大なる魔力によって儂の加護を勝ち取った」

「ありがたき幸せにございます、ジュピター様」



 跪く少女は、彼女に対してそう返す。

ジュピター――神霊の頂点に座主とされる、最強の天空神。

そこに座している幼い少女は、その神の分身そのものであった。

ジュピターは、再び頭を垂れようとする少女に対し、くつくつと笑みを零して声を上げる。



「よい、我が契約者よ。お主が道を違えぬ限り、儂はお主に力を貸そう。それは、お主自身が努力の末に勝ち取った権利じゃ」

「は……その言葉を胸に刻み、必ずや《奈落の渦》を駆逐して見せましょう」

「うむ、期待しておるぞ、我が契約者よ。これよりお主は、我が称号たる『ケラウノス』を名乗るが良い」

「っ……はい!」



 僅かながらに、少女の声が震える。

それは歓喜であり、そしてこれから始まる戦いの日々へ向けての武者震いでもあった。

ケラウノス――数少ないジュピターの契約者の中で、最高の力を持つものに与えられる称号。

それはつまり、この正印教会と呼ばれる組織において、最高位の力を持つ事の証明にも等しい。


 ウェーハスハールと呼ばれる世界に存在する、巨大な宗教国家であるファルティオン。

そこは、あらゆる神霊を神と崇める宗教、正印教の中心地であった。

神霊との契約が個人の力を示すこの世において、最も神に愛された国であるファルティオンは、最強の国であるといっても過言ではなかった。

しかし、それだけの力を持っていても、《奈落の渦》の侵攻を完全に退けるには至っていない。

それ故に、最高の能力を保証された『ケラウノス』は、人々にとって希望の旗印であるのと同時に、羨望の的というべき存在だった。

周囲からの嫉妬の視線すらも心地よいものとして受け止めながら、それでも己の力を過信する事無く、少女は自らの誓いを再確認する。



(けれど――)



 ちらりと、少女は一瞬だけ視線を動かす。

自らが崇め、敬愛する神、ジュピターの斜め後ろ。そこに、一人の人物が佇んでいたのだ。

まるでジュピターを護衛するかのように立っているその少女は、目を閉じ、だらりと腕を下ろしたまま悠然と立っている。

『ケラウノス』は最高位の称号、最高の聖女の証。けれど――それは決して、最強・・の名ではなかった。



(いつか必ず、貴方からその称号を奪い取ってみせる)



 最強の聖女と名高い少女。

ジュピターを護る最後の楯。彼女がいつから存在していたのか、それは定かではない。

けれどその力は、いかなる《渦》の魔物であろうと、一撃の下に葬ってきたという。

そんな彼女に対し、直接挑むということではないが――



(多くの敵を倒す、多くの《渦》を潰す……そして、私の事を認めさせてあげるわ!)



 そんな彼女の視線に気付いているのかいないのか、最強の聖女は目を閉じたまま黙しており――そんな二人の様子に、ジュピターはどこか楽しげに笑みを浮かべていた。





















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