200字小説・300字小説 フサくら坂 作者: 柿原 凛 掲載日:2012/06/13 細く湿っぽい廊下の先の小部屋。そんな雰囲気のカラオケボックスにぞろぞろと入り込んでいく。 その時。隣にいる大男がさっとマイクを握りしめた。のけぞるようにその顔を見やる。さっきまでヘラヘラしていたその風貌はもう残ってはいない。軽く息を吸い込んで解き放したその声を聴いた途端、私はすっきりと目覚めたような不思議な感覚を覚えた。しぶい低音ボイス。放射状に伸びていくビブラート。 静かな恋の始まりは、桜色だった。