部活動に情熱を【前編】
日曜日、兵庫の天気はあいにくの雨。
亀沢北高のグランドはグチャグチャで、とても部活のできるような状態じゃなかった。
「っしゃ・・・・!」
片手でガッツポーズをとる。大志は野球部に所属している。
一週間前、大志はまつば杖を突いていた。
お医者さまが言うには、左足の骨にヒビが入ったらしい。たいした怪我だけど、大騒ぎするほどのもんじゃない。
「大志、お前、どうしたんや!!」
コウくんが吠える。188センチもある長身が、ああもアホをさらけ出す。
「ははっ・・・・足イカレタ」
目に無念の涙を浮かべ「全治一ヶ月だとよ」と大志。彼の身長は157センチ。わりと低め。
「怪我は部活に響くやろ、大会どないするねん」
コウくんも同じ部員の一人で「走れへんやんけ」と焦り始めた。
「やべぇ、監督の雷が落ちる〜」
野球部の柳川監督は中年のオッサンだ。かなり厳しいと有名で、自慢話が大好物・・・。
大志は頭を抱える。
「監督の寝てるあいだに、カミナリ様のコントの衣装着せてみねぇ?」
コウくんの提案に「のった」と大志。
「ブーかい」
軽い、突っ込み。わたしが突っ込まないと、ボケとボケでうまく話がまとまらない。と、いうか・・・永遠にボケ続けるだろう。あ〜もう、この二人は。後先、考えないで。
「そこまで、部活に思い入れがあんのね」
わたしはそう言って、また雑誌に目を向ける。自分が怪我をすると大騒ぎするくせに、他人事には関心を持たないタイプだ。
「いんや。休むための口実が出来て、ちょうどいい」
と、大志。コウくんは「お前、なんだ、そりゃ・・・」と笑う。
「う〜ん、この学校に野球部なんてあったかにゃ?」
さっきから、鏡で自分の顔をずっと見ていたモココがいった。本名、春名もも子。
満塁ホームランだ。二人は撃沈してしまった。
「ぷっ・・・イイ気味」
脱落した二人を見て、吹き出してしまった。わたしは思った事をすぐに口に出す。溜め込むと気持ちが悪い。ムカムカして居たたまれなくなってしまう。