招かざる、訪問者
―――みんな、俺について来い!(琴倉大志)
電話が切られてから三〇分、あれから何の連絡もない。
(余計な事に巻き込まれなくてよかった・・・)
ほっとしていた時、庭の方から鳴き声が聞こえた。
―――――きゃん、きゃん
まるで、犬のような・・・
動物も苦手だけと、犬は特に嫌い。
わたしは顔を青ざめながら部屋に一つしかない、大きな窓を開けた。
『清華のバカヤロ―――!』
私をボウトクする叫び。眉間にシワを寄せて「オィ、叫ぶなっ」と一言。
「つか、あんた、今なんつった?」
低い怒りがヒシヒシと伝わってくる。
「ぬおぉぉ、清華がキレた〜」
あからさまに面白がっている大志。まさにガキ。
「ぶっ飛ばす!!」
普段は相手にしないわたしも、この時ばかりは怒り狂っていた。大志の胸ぐらを掴んで今にも殴りかかる勢い。
「まぁまぁ、ジャレてる場合と違うでぇ」
と、コウくん。手にはずぶ濡れの犬が抱えられていた。
そのとき初めて雨が降っている事に気付いた。
その犬、キョウ吉(京三郎)は捨て犬だった。
「ったく、飼えないなら拾って来んなよ。フツウ」
大志がどう頼もうが、答えはNoだった。それどころか、完全に打ちのめされた。
「うぅ・・・ど正論を」
うなだれる大志。
・・・・・・・。
沈黙。
「ああっ!もしかしてコウくんが電話したの・・・」
わたしは最初にあった電話を思い出した。
「そうそぅ、それが言いたかった」
コウくんはタオルでキョウ吉の濡れた体を拭いてやった。
「こいつ、怪我しててさ・・・なんか清華に電話しよって事になった」
突然、大志がラジオを聴きたいと言い出した。
『J-WAVE 81.3FM』という番組。
BUMP FO CHICKENの『天体観測』が流れていた。
「あ」
話題は清華の一言で音楽の話に転換した。
「この曲、好き・・・」
何気ない、一言。ただ、このノリが心地いい。
コウくんや大志と一緒に居るような、当たり前のような、そんな感覚。
「へぇ〜。清華、音楽に興味あるんや」
コウくんは「意外」と付け加えた。
「んー、別に。タルそう」
苦笑。そのころのわたし達は、まだ音楽の魅力に気付かずにいた。
「なんじゃ、そら」
コウくんが笑う。大志もケラケラと笑った。
そんなわけで、キョウ吉はわたしの番犬となった。
わたしの犬嫌いはどうなったかと言うと、それはまた別の話。
なんか、自分らしくない小説になってしまいました。が・・・次からアホVSバカで行きたいと思います。