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暁時  作者: 小山 椛
3/3

夜明け

まだ暗い時間に起きるのはいつものこと。


二度寝したりすると絶対起きられないけど、なぜか朝はぱっと目が覚める。



夜明け前の匂いがするからだろうか。




冬のほうが、空気がしんとして、凍るくらいに痛いけど、静かで、澄んでるから好き。



今のうちは、丘の上にあるから坂がきついけど、ひとつだけ良いことがある。




夜明けを誰にも邪魔されずに見れるということだ。







マフラーを巻いて、コートを着て、そっと家を出る。



時折新聞配達のバイクの音がする。



静かな道を黙々と歩く。




5分ほどすると、高台にある公園が見えた。


小さなブランコと、砂場と、ベンチと、大きな木が一本あるだけのちっちゃな公園。




いつもの指定席は、柵の近くのベンチ。




ここからは、町が一望できるのだ。





さくっさくっと足音がする。




「暁」




ちょっと怒ったような声が聞こえる。



「おはよう、夕弥」




「おはよう。・・・だめだろう、真っ暗なうちに一人で歩いたら」



いつもいってるじゃないか、とちょっとむくれた声がする。




女の子なんだから、危ないよと言って、朝の散歩に付き合いだしてくれた夕弥だけれど、ときどき一人でいたかったり、起こすがかわいそうになったりして、一人で家を出たりする。



そうすると、ちょっと焦ったように夕弥が走ってきて、ちょっと怒る。




くすぐったくって、・・・嬉しい。

ときどき、わざとしてしまうのは内緒だ。




「ごめんね。だって、昨日遅かったでしょ?」



素直に謝ると、しょうがないなって顔をした。



すとんと横に座る。


手があったかくなった。



「冷たい・・・・また手袋忘れたんだろう」



「マフラーはしてきたよ」





夕弥の手はおっきくて、あったかい。



だれかと手をつなぐなんていやだと思っていたけど、夕弥の手は好きだ。




「ホッカイロもいるし」




「・・・・僕?」




「そう」




言われた本人はいつも微妙な顔をするけど、人間ホッカイロって良いと思う。



だって、こんなにもあったかい。







「あ、日が昇る」





朝日が昇るのは一瞬だ。



空の色が変わっていくのはとてもゆっくりなのに、顔を出したらすいすいとのぼっていく。



グラデーションを今日もしっかりと堪能する。




一日が始まる。






「帰ろうか」



「うん」





手をつないだまま、帰り途を一緒に歩く。



手は、もうぽかぽかとしていた。






「暁、二度寝しないで宿題しとけよ」



夕弥のお兄さん顔がでるとちょっとぶっきらぼうになる。



「わかってるよ」




よしよし、と頭をなでた夕弥は朝ごはん前には、また起こしてねと笑った。







今日も一緒に歩いてくれたから、朝ごはんは夕弥の好きな甘い卵焼きを焼いてあげるとしよう。




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