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暁時  作者: 小山 椛
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夕焼け

夕弥って名前は、夕焼けからとったんだって。


僕が生まれた時に、夕焼けがあんまり綺麗だったから、母さんが即効で決めたんだって言ってた。





ちょっと苦笑いしながら、単純な母親だろって夕弥が笑った時、



もう、恋に落ちることはきまってたんだと思った。






「暁、入るよ」



のっそりと夕弥が部屋に入ってくる。

あの頃はかわいかったのに・・・ずいぶんでっかくなっちゃって。




あ、でも指が長くていいなぁ。おっきな手。


たくさん、つつんでもおちなそう。




「・・・なに?」



ちょっと、困ったように笑う顔。

眉毛が下がって、頼りなさそうな、気弱な顔は昔と変わってない。



「夕弥って、へたれだよね」



「いきなりなにさ?」



こんなこと言っても怒られない。だって、夕弥だし。



「んー、なんとなく。で、辞書?」



「そう。国語。暁はもう終わったの?」



「終わってない」



「だよねぇ」



「朝やるからイイのー。夜は寝る時間なの」




ごろごろとベットの上で転がる。

抱き枕はおっきなウサギだ。

10歳の時の、誕生日プレゼント。

だいぶくたびれちゃったけど、さわり心地が最高で手放せない。



「なに?」



ごろごろうとうとしてきたら、夕弥の手が下りてきた。

ゆっくり頭をなでられる。



きもちいいなぁ・・・・猫の気分が今ならわかる気がする。



「いいよ、朝早いんだろ。もう、寝ときな」



静かな声が降ってくる。


ちょっと命令形。こんな時は夕弥はお兄さんっぽく言う。



夕弥は、1つ違いのイトコ。




ここは夕弥はのうち。私の母さんのお姉さん、つまり伯母さんのうち。



母さんがいなくなって引き取ってくれたのは、母さんが一番仲の良かった伯母さんだった。




夕弥とは5年ぶりの再会で、お互いにちょっとぎこちなかったけど、すぐに慣れた。



夕弥のおっきな手は、こぼれおちそうな私もちゃんと落っこちないように包んでくれたから。






だから、私は。



あの時の直感は正しかったんだって今も思う。


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