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第86話 エリアスの理念
エリアスは一歩進み、玉座の中央に立った。
白い光がステンドグラスから降り注ぐ。
「私たちは、誰かの数値に従って生きるわけではありません。」
エリアスの声が、玉座の間の空気を変えた。
「数値が低くても、知恵と力を重ねれば何倍にも強くなれる。それを証明したのが、今回の戦いです。
王族の血でも、神の加護でもない。今を生きる人々の“心”こそ、この世界の光です。」
その言葉を聞いて、兵の一人が嗚咽をこらえるように叫んだ。
「エリアス様……あの日、俺は数が低いって笑われた。でも、あんたの軍で戦って変われた!」
賤民の娘が涙を流しながら言う。
「私にも役目があった! ありがとう!」
「私は王になりたいわけじゃない。」
エリアスは宣言する。
「みんなの夢を“繋げる柱”になりたい。私の願いは、皆が夢を叶え、笑える国を作ること。そのための王族です。」
その場にいた全員が息を飲んだ。
玉座の間が神聖な光に包まれ、まるで新しい朝を告げる鐘が鳴ったようだった。




