第84話 証拠
「国王陛下。無礼を承知で申し上げます。
皆に見てほしいものがあります。」
スカイは背負っていた紙束を掲げた。
クラウディス王が興味を示し、手を軽く振る。
「見せてみよ。」
衛兵が紙束を運び、大臣の手を経て王の前に差し出す。
王は眉をひそめながらページをめくり、次第に険しい顔つきになっていった。
「ふむ……。これは確かか?」
「ええ、証拠の記録です。」
スカイが頷く。
王は紙束を大臣と王国守護騎士団の重鎮たちに渡し、声を潜める。
「ここに記された内容を、皆の前で読め。」
重臣が震える声で読み上げ始めた。
――ゼストール陣営が疫病を研究し、隣国と裏取引を行い、病原体を使って魔物を狂暴化させ、この国を混乱させた証拠。
――数値教と貴族連合がその計画に協力した証跡。読み上げが進むにつれ、玉座の間からざわめきが沸き起こった。
「な、なんという……」
「そんな馬鹿な!」
「これは亡国を企てたのと変わらん!!」
エリアスが小声でささやく。
「スカイ、魔物の件までいつの間に……?」
スカイはわずかに笑う。
「エリアスが出陣したあと、フィートと後の皆に情報収集を頼んでたんだ。証拠が揃ったのは、エリアスが凱旋した直後だった。」




