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第75話 民を煽る声
「聞け! 民よ!」
広場の高台、ゼストールが軍旗を背に立っていた。
彼の声は魔法拡声により街中を震わせた。
「魔物どもは王の信仰を試すために現れた! これは神が選ばれし者を見極める裁きだ!」
群衆が息を呑む。
「裁き……?」
「じゃあ、俺たちはどうすれば……」
ゼストールは両腕を大きく広げた。
「恐れるな! このゼストール・バレスタインが、全軍を率いて奴らを滅ぼそう!
我が剣が王国を救う! そして誰が真の王か、その目で確かめるがいい!」
老人が涙を流して膝をつき、叫んだ。
「おお、救いの主よ!」
周囲の群衆たちが一斉に手を上げて叫ぶ。
「ゼストール様、ばんざい! この国に神の加護を!」
その光景を見て、スカイの顔が引きつる。
「……人の絶望を、舞台にしてる。」
エリアスが唇を噛んだ。
「まるで信仰を操る操り人形ね。」
スカイは舌打ちした。
「民の恐怖を“武勇”で支配するつもりだ。
負けられない。」
エリアスは拳を握りしめた。
「行きましょう、スカイ。私たちも動くわ。希望を取り戻すために!」




