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第63話 孤独な王族
一方、王城の片隅で男が震えていた。
フィート・アルバレン。
次期国王選挙で落選した王族の一人。
目の前の机には、ゼストールからの命令書。
“エリアス陣営を監視し、動向を報告せよ。拒めば抹殺する。”
「……いつまで怯えれば解放されるんだ。」
思わず握る拳が白くなる。
エリアスの演説が頭を離れない。
――「あなたの隣の人が笑ってくれたら、それが価値」
「……こんな世界、まちがってる。」
その夜、フィートの周囲に黒い羽根が舞った。バネシュという夜鳥
――彼の“共有獣”。
「行け、真実の音を拾ってこい。」
やがて彼は、エリアスとスカイの密やかな会話を耳にすることになる。




