第29話 市長の苦悩と数値化の歴史
ガラルドは難しい顔で机を叩いた。
「君の改革案は立派だが、上層部は“数値制度の維持”しか考えておらん。」
「街の人々は苦しんでいます!」
「分かっている! だが、これは千年以上前から続いているんだ。」
スカイは驚いた。
「千年!? そんなに前から?」
ガラルドは重い表情で答えた。
「千年以上前、とある一族が自分達の血にある体質があることがわかった。
それは、この世界で生まれた人間は、15歳を迎えた時に何故か誰一人例外なく数値化される。
そしてその一族は満月になると血が活性化し、その目で見た人間の数値が読み取れるのだ。
やがて、その数値はこの世界に良い影響を与えれば上昇し、逆に悪い影響をを与えれば下降していく。
それに気づいた一族は自らの血を高貴な者と充てがわせて、子孫を増やしていった。
故に今この世界の特権階級や貴族、王族等はその一族の血を引き継いでいるのだ。
この私もその一人だ。だから……私はその鎖に縛られている。」
スカイの胸に沸き上がる感情、それは怒りだけではなく、哀しみだった。
「なら、俺は……その鎖を切ります。」
「少年……軽々しく言うな。世界が敵になる。」
スカイは静かに笑った。
「なら、世界を変えてみせます。」




