第139話 命を使った懸け
フィートが「…ご武運を」と呟き、
スカイの左肩の傷口近くに針を刺す。
モルヒネが注入され、スカイの体がわずかに震える。
「うっ……!」と低く呻き、
額に汗を浮かべて膝を折りかける。
外見は苦痛に顔を歪め、左肩を押さえて息を荒げるだけ。
周囲の王国兵・義勇軍がハラハラと顔を見合わせ
「スカイ様!?」「大丈夫か!?」
「今そんな体で……!」と心配の声が上がる。
モルヒネが無くなると、フィートは残ったアリナミンをスカイの右肩に指して注入した。
スカイは注入される痛みに耐える。
兵士の一人がフィートを訝しげに見つめる。
「フィート様、何を……? その薬は一体……?」
と疑問を口にし、フィートは内心焦りつつ
「信じてください。今はそれどころじゃありません!」
と制する。
スカイは目を閉じて、自分の体に起こる変化を感じていた。
(冷たい……モルヒネが血管を這うように広がっていくようだ。
左肩の焼けるような激痛が霧がかかったように消えていく……。
今度はアリナミンが血管を追うように熱い波となって体中を駆け巡るのがわかる。
心臓の鼓動が強くなってる気がする。
血流が勢いを増し、指先までジワジワと力が満ちてくる感覚……まるで眠っていた筋肉が目を覚ますようだ。
痛みは残ってるが……動ける。この体で、十分だ!)
スカイの瞳が静かに鋭さを増し、
ゆっくり立ち上がる。外見はまだ苦しげだが、
構えに迷いが消える。
スカイが体内変化を感じつつゆっくり立ち上がる中、
フィートが地面に落ちているエリアスの護身用の剣を見つけるとそれを拾い上げ、スカイに手渡す。
「スカイ殿、これを……エリアス陛下の剣です。
エリアス様の覚悟を、受け止めてください!」
スカイは剣を受け取り、柄を強く握り
「エリアスの剣か……ありがとう、フィート。
絶対に無駄にしない」
と低く頷く。
外見はまだ苦痛の汗を浮かべるが、目つきに決意の炎が宿る。
周囲の兵士が剣を握り直し
「スカイ様が剣を……!」「これで奴を!」
と息を吹き返す。
スカイ達はエリアスの方を向いた。




