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第137話 限界の女王と絆の咆哮



バキィッ!!


鈍い衝撃音が広場を切り裂く。

エリアスが地面に倒れ伏し、金色の髪が土埃にまみれる。


頰に赤黒い拳の跡が浮かび、唇から鮮血が滴る。


「ぐっ……!」




王国兵士たちの我慢が、ついに限界を超えた。


「陛下ぁぁあっ!!」

「ゼストール!!やりやがったな!!

「よくも陛下をっ!!」


守護騎士団の剣が一斉に抜かれ、

義勇軍の男たちが飛び出しそうになる。



弓兵の一人が震える手で矢をつがえ、

ゼストールの胸元を狙う。


「この野郎……ぶち抜いてやる……!」



広場が爆発寸前の緊張に包まれる。



ゼストール軍も剣を構え、にやりと笑う。


「来いよ、低数値ども!」

「神の裁きだぜ!」



だが、その時――「手を出すなっ!!!」



エリアスの叫びが、雷鳴のように轟く。

血まみれの顔を上げ、拡声魔法で全軍に響かせる。




「言ったはずよっ!!私が交渉を終えるまでは、

絶対に手を出すな!!!」




王国兵士たちが凍りつく。


「陛下っ……もう限界です!!」

「陛下が傷つく姿、もう見たくありませんっ!!」

「我々に特攻させてくださいっ!!」


悲痛な叫びが重なる。





エリアスは這うように体を起こし、強い声で制する。


「手出し無用!! これは……私の命令よっ!!」



兵士たちの顔が、悔しさで歪む。

拳を握りしめ、唇を噛み、涙を堪える。


苛立つゼストールが、唾を吐く。

「いい加減にしろっ!!!低数値の野良犬共!!!本当に躾がなってねえな!!

これ以上ワンワン吠えまくってみろ!!!」



倒れたエリアスの額に、

高性能狙撃銃の冷たい銃口をグリグリ押しつける。


「お前等のご主人様に、一生モノの風穴を開けてやるっ!!あのガキの様になぁっ!!!」




「…………っっ!!!」


エリアスの脳裏に、スカイが撃たれ倒れた悪夢が蘇る。血塗れの肩、苦悶の表情……。


「スカイっっ……!!」



悔しさ、悲しさ、辛さが心を蝕み、

感情が限界に達する。

涙が溢れそうになる。




王国兵士たちは銃口に封じられ、動けない。

心の中で叫ぶか、拳を白く握り締めるしかなかった。


「スカイ様の仇……!」

「耐えろ……陛下のために……!」



ゼストールはエリアスに顔を近づけ、嘲笑う。


「お前もお前だ、エリアス!!!

誰に向かってデカい口叩いてんだ!?」



銃口をグリグリ回転させ、額に赤い跡を刻む。


「グッ……!!!」


エリアスは歯を食いしばり、痛みに耐える。汗が額を伝う。




ゼストールは容赦なく続ける。


「俺様はお前の顔を立てて

『王国の入り口から出る』ことは

保証したんだ。


『王国の外』で低数値の有象無象共が

どうなろうと知るかっ!!! 

テメェはさっさと敗北を認めりゃいいんだっ!!!」




勢いよく、エリアスの腹を蹴り上げる。



「ガハっ……!!!」



息が詰まり、体が折れ曲がる。吐き気が込み上げる。



王国兵士たちの目から血の涙が溢れそう。


「陛下ぁぁ……!」

「この屈辱……!」

「殺させてくれ……!」


ゼストールはしゃがみ込み、

エリアスの金髪を乱暴に鷲掴み。

そして強引に顔を引き上げる。




「あぐっ……!」


苦悶の表情を浮かべるエリアス。

髪の毛が抜け落ちるほどの痛み。



「ハッ、興醒めだ。ここまでしても、

エリアス……お前のその目が気に入らねえ。

絶望の表情はするのに、何故か目が死んでねえ。

何がお前をそうさせるんだ?」




エリアスは苦しげに息を吐き、意地を張る。


「例え……死ぬことになっても、絶対に……あなたには、教えない……っ!」


心の中で叫ぶ。


(諦めない……っ!

スカイが受けた痛みはこんなもんじゃない!!

それ以上の痛みで私を守ってくれたっ!!

だったら、私も死んでもこの条件を貫く!!

それが、私の最後の意地よ!!)



ゼストールは舌打ちし、悪魔の笑みを浮かべる。

「そうか。ならさっさと終わらせよう。」




髪を掴んだまま立ち上がり、

エリアスを無理やり引きずり上げる。


「ぐっ……!」



「さぁ、エリアス!!宣言しろ!!

この俺様に向かってっ!!敗北宣言をっ!!!!

言ってみろぉぉっ!!!」



エリアスは涙を堪え、震える声で言い始める。


「わっ……たし……は、」




王国兵士たちが絶叫。



「陛下っ!! お辞めくださいっ!!」

「諦めてはダメだ!!」

「自分に打ち勝ってください!!」






「ゼス……トール……に、」



(もう……私には、何も守れないの……? 母様……っ!!)




「は……いぼ……く、」





ゼストールの笑みが頂点に。


「もうすぐだ、王の座が俺様のものにっ!!」




「し……ま……」




エリアスが最期を悟り、涙が頰を伝う。


(ごめんなさい……最期まで何も言えなくて、私を許して……スカイ……っ!!)


――その瞬間。







「エェリアアァァァアアスっっ!!!!!!」




王宮入り口から、魂を震わせる絶叫が轟く。






「っ!!」

「っ!?」




ゼストールの手が驚愕で離れ、

エリアスが地面に崩れ落ちる。




二人は王宮の方を振り返る。


「なっ、!? あれは……まさかっ!?」


ゼストールが目を剥く。



エリアスは涙に濡れた瞳で、


「あっ……ああっ……!!」


感極まり、息を飲む。





王宮入り口に現れたのは、

五百の王国守護騎士団。


先頭にフィートが立ち、

その隣にはフィートに支えられながら

エリアスを凝視するスカイの姿


――左肩を押さえ、血に染まった包帯が痛々

しいが、目は燃える炎のように輝いていた。




絶望の広場に、光が差し込み始めた瞬間だった。





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