第128話 神の裁き
各地の数値教テロは激しさを増していた。
「高き数値は神の力なり!」
「数値を高める行為は神への正しき道!」
「数値は我らの道標だ!」
数値教信者は麻薬中毒者のように教義を叫び、人々を、国を痛め続ける。
各地で、数値教テロが頂点に達していた。
砂漠のオアシス封鎖、港湾占拠、森の虐殺、山岳鉱山支配――。
突然、敵陣から白旗が上がる。
「見ろ! 敵の白旗だ!」
「やったぞ、数値教の神が微笑んだ!」
「我らの勝利だ!」
数値教信者が歓喜に沸く中、拡声魔法が轟く。
「数値教に告ぐ! こちらはお前たちへの"攻撃"を停止する。
ただその条件として、ある問いに答えろ。」
信者たちはゲラゲラ笑う。
「ハハハ、低数値者め。とうとう知能まで低くなったか?」
「降伏の条件がただの問いに答えるだけだと? 笑わせるな!」
声が続く。
「こちらが、お主らに答えてほしい問い。それは――
海の上で漂流者二人、一枚の板しか浮かばない。高数値貴族か、低数値民衆か。神は何を選ぶ?」
一瞬の沈黙。信者たちが首を捻る。
「何だ、この問いは……?」
「高数値を優先するのが神の意志だ!」
教祖代理が叫ぶ。
「待て! 多数の低数値も神の民だぞ!」
別の信者が反論。
「神よ……答えを!」
信者たちの顔に、動揺が広がる。
額に汗、手が震え、目が血走る。
「高数値を救えば……多数が死ぬ……
神は不公正か!?」
「低数値を優先すれば……神聖な高数値が沈む……神の秩序が崩れる!」
一人の信者が頭を抱え、地面に崩れ落ちる。
「う、うわぁぁ……頭が……割れるぅぅ!」
「辞めてくれっ! こんな矛盾、考えたくない! 神よ、なぜぇぇ!」
別の信者が髪を掻き毟り、転げ回る。
「我々が信じたものは……何だったんだ……!? 神の公正など……嘘か……!」
涙と鼻水を垂らし、絶叫する者。
顔を地面に叩きつけ、悶絶する者。
阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる。
「バカなっ!? ま、まさか、こんなことがっ!」
教祖代理が膝から崩れ、泡を吹く。
混乱の隙を敵は見逃さなかった。
「今だ! 奴らを捕らえろ!」
「オオォォォ!」
数値教信者が這いながら叫ぶ。
「辞めろ! お前達『降伏』したんじゃ……!」
敵は無表情に答える。
「我々は『攻撃を停止』すると言った。
お前達を『捕らえて』も問題あるまい。
何より問いに答えられなかった。諦めろ。」
信者たちは項垂れ、嗚咽を漏らす。
「や……られた……。神よ……なぜ……。」
こうして各地で数値教テロが次々鎮圧された。
砂漠、港、森、山岳――全てがカルネアデスの板によって、自らの教義で自滅した。




