第122話 降伏条件
孤立無援を悟った彼女は、静かに言った。
「……ゼストールに降伏する。」
「陛下!?」
参謀たちが立ち上がる。
「そんな!」
「私の身と王国全てを明け渡す。引き換えに、
王国民を北門から安全に国外離脱させる条件を提示する。」
王国守護騎士団団長が叫ぶ。
「あのゼストールが飲むわけが無い!
むざむざ殺されに行くようなものです!!!」
義勇軍の男が拳を握る。
「私達はまだ戦えます! 家族を守って死ねるなら本望だ!
一矢報いて道連れにしてやる!!」
他の兵士たちも。
「そうだ! 諦めねえ!」
「最後まで戦ってやるっ!!」
エリアスは嬉し涙を堪え、微笑む。
「ありがとう、皆さん。だからこそ、その命を家族と生き延びるために使ってほしいんです。」
参謀が納得しかねる。
「しかし、ゼストールの性格では……」
「ゼストールの目的は
数値主義の圧倒的勝利と王国支配。
数値社会を否定する中心人物の私が降伏すれば、
世界中に彼の正当性を肯定できる。
そして国民撤退は彼の『慈悲』をプロパガンダに使える。
傷病者も父上は逃げられなくても……スカイなら紛れ込める。」
周りが悟る。「陛下の……時間稼ぎ!」
「あなた達は残存兵力を護衛部隊に再編成。
国外へ逃げる国民を周辺諸国まで守り抜いて。」
団長が涙声で。「スカイ殿を……?」
「スカイには仲間がいる。才能がある。
落ち延びたら協力してゼストールを倒して。
彼なら、この狂った数値社会を終わらせられる。」
兵士の一人が震える声で。
「それなら、最後にスカイ様にお会いになるべきでは……!」
エリアスは首を横に振り、笑って一筋の涙を流す。
「今、スカイに会ったら、私、投げ出してしまう。
私一人のワガママに、みんなを、スカイを死なせたくない。
だって私……、スカイを世界で一番愛しているんだもの。」
その悲痛な言葉に、メイドや兵士から嗚咽が漏れる。
「ううっ…陛下……!」
「そこまでご覚悟を……」
エリアスは涙を拭い、声を張る。
「ゼストールと交渉します! 残りの時間は少ない、やれるだけのことをやりましょう!!!」
心の中で呟く。
(本当にごめんなさい、スカイ。
あなたの隣で私の本当の気持ち、伝えたかったな……。)
その様子にいたたまれなくなった若い兵士が
「こんなの……絶対間違ってる!!!」
そして兵士は走り出す。
(急がなければ! スカイ様に、伝えなければ!!!)
エリアスは王宮のバルコニーへ向かう。白旗を掲げて。




